[R18]2度目の人生でスローライフ?ハーレムだっていいじゃないか

白猫 おたこ

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第六章 新しい同居人はJK⁉︎

第113話: 【現実の激震】社長の呼び出しと、同棲の行方

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 健太郎の家に引っ越し、一つ屋根の下での生活が始まってから一ヶ月が過ぎた。
 ゲームの中での過酷なサバイバルと建築の日々があるからこそ、現実世界で交わす「おはよう」や「おかえり」という言葉、そして結衣が作る朝食の香りは、何物にも代えがたい幸福となっていた。

 だが、平穏な日常に激震が走る。
結衣が会社に提出した「住所変更届」。事務処理の過程で、それがついに社長――結衣を実の娘のように慈しむ、あの豪快な男の目に留まったのだ。

「……お嬢、ちょっとツラ貸せ」

 社長室に呼び出された結衣は、デスクに置かれた一枚の書類を見て、心臓が跳ね上がるのを感じた。

「お嬢よ……これは、どういうことかな? アレだよな? 三神の、健太郎の野郎の住所だよな、これ?」

 社長の眉間に深い皺が刻まれる。その眼光は、大事な宝物を盗まれた父親そのものだった。

「……っ」

 結衣は顔を真っ赤に染め、指先を弄びながら深く俯いた。その反応こそが、何よりの正解だと物語っている。

「あいつ……! あの朴念仁め! まさか俺の目の届かねえところで、うちのお嬢を……! どんな手を使って誑かしやがった!?」

 社長の怒号に近い溜息が部屋に響く。だが、結衣は顔を上げると、潤んだ瞳で必死に訴えた。

「あの……! 違います、社長! その……私から、私の方から声を掛けたんです! 私が、彼と一緒に居たいって……お願いしたんです!」

「なぬっ!!?」

 社長は椅子から転げ落ちんばかりに仰天した。あの大和撫子のような結衣が、自ら健太郎に迫ったという事実は、彼にとって天変地異に等しい衝撃だった。

「お、お嬢が……自分からだと……? あの、鉄の塊みたいな男に……?」

 しばしの沈黙。そして社長は、震える手でデスクの上のスマートフォンをひったくった。

「おのれ三神……! どっちにしろ許せん! これは電話だ! 直電だ! おい、三神ィ!! 出やがれ!!」

 社長の指が、健太郎の番号を激しく叩く。
 その頃、自宅で作業道具の整備をしていた健太郎は、背筋に走った言いようのない悪寒に、思わず手を止めるのだった。

「三神! 今すぐ行くからな! 焼きを入れ直してやる!!」

 健太郎のスマートフォンが、これまでにないほど激しいバイブレーションを響かせた。
 画面に表示されたのは「進藤社長」の四文字。
 健太郎は僅かに眉を寄せ、持っていたバックをそっと置いた。

「……んっ? 電話か? あいつか……」

 嫌な予感というよりは、むしろ「来るべき時が来た」という妙な納得感があった。
 結衣が住所変更を提出したことは聞いている。それが社長の目に触れれば、こうなることは火を見るよりも明らかだった。
 健太郎は一つ深く息を吐き、静かに通話ボタンを押した。

「……ついにバレたか。……なんだ? 進藤。納品の話か?」

 健太郎の、あえて淡々とした、いつも通りの「職人の声」。それが火に油を注ぐ結果になることを、彼は半分わかってやっていた。

『三神ィィィ!! テメェ、白々しい真似しやがって! 納品だぁ!? お前が今すぐ納品しなきゃならねえのは、俺の目の前にいる「お嬢」の安全保証だろうが!!』

 電話越しでも鼓膜が震えるほどの怒号。健太郎は思わずスマートフォンを耳から数センチ遠ざけた。

『住所だ! 住所を見ろ! なんでお嬢の引越し先がテメェの自宅になってんだ!? テメェ、うちの看板娘をなんだと思っていやがる!!』

 背後で「社長、やめてくださいっ!」「私から言ったんですってば!」という、結衣の必死で、どこか可愛らしい声が微かに聞こえてくる。

 健太郎は、僅かに口角を上げた。その表情は、の中で「アイリス」にだけ見せる、不器用ながらも深い愛情を湛えた男の顔だった。

社長の怒号が響く電話越しに、健太郎は覚悟を決める。
 逃げも隠れもしない。それが健太郎の流儀だった。

「……三神。電話じゃ話せねえ。今からそっちに行く。直接、お前に話をつける!
逃げんじゃねえぞ! 首を洗って待ってろ!』

 ブツッ! という凄まじい音と共に電話が切れる。

 健太郎は、作業机に向かっていた。
手にしているのは、銀樹の端材ではなく、現実世界の厳選された牛革。
 一点ものの革製ハンドバッグの仕上げ工程だ。コバを丁寧に磨き上げるその指先には、ダイブギアの中で培われた『慈愛の加工』にも似た繊細な魔力が、無意識に宿っているかのようだった。
 電話が切れてから数十分。
表の通りで、急ブレーキの音と、乱暴に車のドアが閉まる音が響いた。

「三神ィィ!! 居やがるんだろ!! 出てきやがれ、この泥棒猫……いや、泥棒熊がァ!!」

 怒号と共に、工房の扉が蹴破らんばかりの勢いで開け放たれた。
 そこに立っていたのは、顔を真っ赤に上気させた進藤社長と、その後ろで今にも泣き出しそうな、それでいて必死に社長の服を掴んで止めようとしている結衣だった。

「健太郎さん! ごめんなさい、私……!」

「お嬢、離せ! 今日という今日は、こいつの化けの皮を剥いでやる!」

 社長はズカズカと、健太郎の聖域である作業場へと土足同然に踏み込んでくる。
 だが、健太郎は視線を手元のバッグから外さない。コバを磨く一定のリズムを崩すことなく、静かに口を開いた。

「……進藤。騒がしいぞ。職人の作業場に土足で入るな。バックの納期なら、まだ一週間あるはずだ」

「納期の話じゃねえ!! このハンドバッグ野郎!! お前、俺の目の届かねえところで、お嬢と何をしてやがる!! 同棲だと!? 住所変更届に堂々と自分の住所を書かせやがって!!」

 社長の拳が健太郎の作業デスクを叩こうとした、その寸前。
 健太郎はバッグをそっと置き、社長を真っ向から見据えた。
その瞳には、Infinite Realm(インフィニット・レルム)の中で数多の魔物と対峙してきた男の、底知れない「重圧」が宿っていた。

「……結衣がここに居たいと言った。俺も、彼女に居てほしいと思った。それだけだ」

「『それだけだ』だとぉ!?」

「進藤。お前にとって彼女が大事なのは知っている。だが、俺にとっても……結衣はもう、欠かせない半身だ。文句があるなら、俺が仕事で示してやる。このバッグを見ろ。これが、今の俺が彼女に持たせるために作っている『誠意』だ」

 健太郎が差し出したハンドバッグ。
 一分の隙もない縫製、そして触れずとも伝わる、使う者への深い慈愛が込められたその作品に、社長は一瞬、息を呑んで言葉を失った。

「……あ、あいつ……」

 結衣は背後で、健太郎の言葉に胸がいっぱいになり、ついに涙をこぼした。

【職人の意地】剥き出しの本音と、一途な想い

 社長は、健太郎が差し出したハンドバッグを忌々しそうに、だが職人としての目は逸らせずに見つめていた。一分の隙もないその仕上がりは、健太郎がどれほどの想いを込めて作業机に向かっていたかを雄弁に物語っていたからだ。

「……こんな革切れ一つで、俺が納得すると思うなよ、三神!」

 社長の怒号が再び響く。
だが、健太郎はゆっくりと立ち上がり、社長の目を真っ向から見据えた。その視線には、一切の迷いも、誤魔化しもない。

「進藤。……俺は真剣だ」

 重みのある声だった。結衣が、そして背後で固唾を呑んでいた社長が、その熱量に気圧される。

「見ての通り、俺は無骨で、愛想もなきゃ気の利いたことも言えねえ。……こんな俺に、これほど尽くしてくれる女性なんて、この先もう二度と現れない。それは俺が一番よくわかってる」

「健太郎さん……」

 結衣の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。ダイブギアの中の過酷な世界でも、この現実の静かな日々でも、健太郎は常に彼女の献身を正面から受け止めていたのだ。

「だからこそ、俺の持てる技術のすべてを、彼女を守るため、彼女を喜ばせるために使うと決めた。……この家も、このバッグも、そのための第一歩だ。お前が認めようと認めまいと、俺は彼女の手を離すつもりはない」
「テメェ……!」

 社長は拳を震わせ、今にも健太郎の胸ぐらを掴みかからんばかりだった。だが、健太郎の目は「職人が命懸けで納品する作品」を語る時のそれと同じ、純粋で強固な意志を宿していた。
 親心ゆえの怒りと、職人として認めてしまっている敬意。二つの感情が社長の中で激しく衝突する。

「……フン。相変わらず可愛げのねえ野郎だ」

 社長は、差し出されたバッグのハンドルを乱暴に、だが壊さないようにそっと握った。

「お嬢。……こいつが泣かせるような真似をしたら、いつでも俺に言え。その時は、この会社ごと叩き潰してでも連れ戻してやるからな」

「……はい! ありがとうございます、社長!」

 結衣は泣き笑いの表情で、深く頭を下げた。
 嵐のような社長の訪問は、健太郎の剥き出しの本音によって、ようやく一時的な休戦へと向かった。
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