儚げな君の写真を撮りたい

冰彗

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第二話

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『もう、居ないよ』

 目線を逸らしてそう言った八月一日は、どこか悲哀を纏った儚さがあった。

「そ、っか…」

 悪いこと聞いちゃったな、謝らないと。

 そう思い『悪かった、出過ぎたことを聞いて』と言おうとすると八月一日は鞄から財布を取り出して飲み物代をテーブルの上に置くと立ち上がり。

「ごめん、帰る」

 一言そう言うと八月一日は長い髪をなびかせてカフェから出て行ってしまった。

「あ、八月一日…!」

 声を掛けた時には時すでに遅く、八月一日は帰ってしまった。

 本当に、悪いことを聞いてしまった。

 そう思い一人で反省会をしているとテーブルに青色の大学ノートが置いていかれているのが視界に入った。

 ノートを手に取り、パラパラとページをめくっていると最後のページに万年筆か何かで書かれたような文章があった。

 別の紙で書かれたそれはテープで上の辺りだけ貼られていて少しボロボロだった。

 八月一日のものだから勝手に見るのはいけないことだと分かっているのだが読みたくなってしまった。

『あなたに忘れ去られることが死ぬほど怖い』『君の言葉はいつも優しく残酷だ』『祈るような目で見られることが何より苦痛だった』

 小説の一文だと見て取れる文章を見ていると紙の裏側にも何か書かれていることに気付いた。そっと紙を裏返して見ると一言『さみしいよ』と平仮名で書かれていた。

 一言だけ書かれたその言葉を見て、何故か俺まで寂しい気持ちになってきてしまった。

 顔を上げて隣を見ると八月一日が立っていた。息を切らして立っているその姿を見て思わずドキッとした。

 首筋から鎖骨へと流れる汗、全速力で走って戻ってきたのか頬を少し赤く染めているその表情は見る人が見れば欲情しているようにも見える。

 ゴクリと生唾を飲み込んでいると八月一日は右手を差し出して一言「ノート、返して」と言ってきた。

「あ、嗚呼。悪い」

 俺は謝罪の言葉を述べ八月一日にノートを返す。八月一日は何も言わずにまたカフェを出て行ってしまった。

 最後のページを見たことを問い詰められなくて良かったと俺は心底思った。
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