儚げな君の写真を撮りたい

冰彗

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第一話

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 あの後、流石に大学内で目立つのが嫌だったらしい八月一日は俺の手を引いて大学の近くにあるカフェに入った。

 こいつ、見た目通りというか、手が冷たいな。

 八月一日の外見が俺が思い描く日本の妖怪〝雪女〟に似ていたので心の中で八月一日を雪女と呼んでいるのはナイショの話だ。

 閑話休題。

 カフェに入り、お互い飲み物を注文し終えいざ本題へ。

「君、えっと……」

「あ、俺? 俺は月島星那。呼び方は適当で良いよ」

「じゃあ月島君で。月島君は、写真を撮るのが好きなの?」

「まぁ趣味の範囲からは抜けないけどな。これでも何度か賞を貰ったことあるよ」

「ふーん…」

「八月一日は? 小説で大賞とか取ったことあんの?」

「……ない。出したこともないし」

「そっか」

 そこで会話が途切れ、二人の間に沈黙が流れる。

 いかん、話題が無くなってしまった。

 そんなことを思っていると店員さんが注文していた飲み物を持ってきてくれた。俺はブラックコーヒー、八月一日はキャラメルラテ。

「八月一日って甘いものが好きなのか?」

「…なんで?」

「いや、キャラメルラテって如何にも甘そうだから」

「……」

 えっ、ここで黙る? せめて返答してくれ。

 そんなことを思いながらコーヒーを一口飲むと八月一日はゆっくりと口を開いた。

「好きだよ、甘いもの」

「そ、そっか」

 そしてまた沈黙が流れる。

 意思疎通出来ている、よな? 多分……。

 ちんたらとそんなことを考えていると八月一日は突然鞄の中から青色の大学ノートと筆記用具を取り出してまだ使っていない真っ白なページを開くと黒ボールペンを取り出して何かを書き始めた。

「八月一日、何書いてんの?」

「……」

 また黙る。

 深い溜息を吐き、テーブルに肘をついて八月一日の顔をまじまじと見ることにした。

 しかし綺麗な顔立ちをしているもんだ。あれだな、宝石みたいだな。

 そんなことを考えていると無意識に八月一日の頬へと手が向かっていたことに、八月一日の頬に触れた瞬間気付いた。

 八月一日はかなり驚いたような表情を浮かべて俺を見てきた。

「お前、やっぱり体温低い方?」

 初めて触れた頬は、寒空に晒された肌のように冷たかった。

「低い方ではある、かな」

「そっか。さっきから何書いてんの?」

 八月一日の頬から手を離し、ノートを指差して問い掛けると八月一日は両腕でページを隠すようにして。

「良い文章思い付いたから書き留めてた」

 と俺の目を見て静かに、けれどもハッキリと答えた。

「ふーん。そういやさ、聞いてもいい?」

「何を?」

 八月一日がまたノートへ目線を落とし、書き始めたのを見て俺は問い掛ける。

「いつから書いてんの? 誰かの影響?」

 そう問い掛けた途端、八月一日は手の動きを止めて俺の方をじっと見つめてきた。

 何も考えていないような虚無の表情。けれども見上げてくる瞳が澄んでいて、何故か責められているように感じがして少し驚いた。

「聞いちゃ駄目だった?」

「……んーん、大丈夫。書き始めたのは中三からだよ」

「へぇ、七年前か。書き始めたのは誰かの影響?」

「……幼馴染」

「幼馴染居るんだな。同い年? もしかして同じ大学か?」

 そう問い掛けたが最後、八月一日は目線を逸らして小さな声でこう言った。『もう、居ないよ』と。
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