儚げな君の写真を撮りたい

冰彗

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第九話 〜立夏side〜

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立夏side

 カシスオレンジというカクテルを数口飲んでからの記憶はほとんどない。気が付くと月島君は僕の隣でテーブルに突っ伏してぶつぶつと何かを呟いていた。

「月島君? 大丈夫?」

「あ、八月一日。やーっと起きたのかよ」

「ごめんね、寝ちゃってた」

「別に大丈夫だけどよ」

 月島君は素っ気ない態度でそう言うと起き上がりお酒を喉の鳴らしながら飲んでいた。よくよく見るとうなじ付近が赤くなっていることに気付いた。

「月島君、もうお酒やめておこう?」

「なんでだよ」

「顔には出てないけど、結構酔ってるでしょ。うなじ、赤いよ」

「う~……? なんか身体熱くなってきた」

「それ酔ってる証拠だよ。お会計しよっか」

 僕はそう言うと店員さんを呼んでお勘定した。お店の外になんとか月島君に肩をかして出た。

「月島君、家どこ……?」

「あっちー!」

「あっちって、どっち?」

「あっちはあっちだよ」

「えっと……」

 身長が低い僕は月島君を支えるのがやっとで歩くのは少し難しかった。これ送っていけるかな。

 考え込んでいると月島君が静かになったことに気付いた。

「月島君? 大丈夫? 吐きそう?」

 そう問い掛けると月島君は何故か泣きそうな表情を浮かべて僕を見てきた。その表情が、最後に会った伊澄に似ているような気がした。

「おれ、ほずみのいえいきたい」

「僕の家?」

 突然そんなことを言われ思わず聞き返してしまった。確かに僕の家は近いけれど。

 そんなことを考えていると月島君はぼーっとしたまま虚空を見つめていた。

 仕方ない、今回だけ。

 そう思い僕は月島君を支えながらゆっくりと自宅へ向かった。
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