儚げな君の写真を撮りたい

冰彗

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第八話

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 居酒屋に入ってから一時間後、八月一日はお酒をまだ一杯しか飲んでいないにも関わらず顔を真っ赤にして俺に寄り掛かって眠っていた。

 本当に、心の底から個室で良かった。

 そんなことを思いながらお酒をちびちびと飲んでいると八月一日が小さく声を出した。

「八月一日? 起きたのか?」

「んー……まだ、ねてる」

 瞼を開けずにそう言うと八月一日は俺の腕に額に擦り寄ってきた。

 八月一日はお酒飲むと甘えん坊になるんだな。

 そう思い、にやけそうになる顔をなんとか無表情で止めてお酒を飲んでいるとそういえばとあることを思い出した。

 さっき、八月一日は『いずみみたいに』と言っていた。いずみとは、一体誰だ?

 首を傾げて考え込んでいると八月一日は小さな声で「いずみ…」と呟くように言った。

 また、いずみが出てきた。

 心がもやもやする。真っ白なキャンパスが黒い絵の具で汚されていくような感覚。

 どうしてお前は、目の前にいる俺じゃなくて、もう居ない幼馴染に縋り付く?

 心がドロドロに溶けていく感覚に俺は思わず頭を抱えてしまった。
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