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第一章
『後日談』
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後日、姉さんと斐都に説明した。
「あの時助けた子、やっぱり三日月さんだったのね」
「ママ、このひととつがいになるの?」
「うん、そうだよ。嫌?」
「ううん。このひとなら、だいじょーぶ」
斐都はそう言うと三日月さんに近付き、「ママをお願いね」と言った。三日月さんは「分かりました」と丁寧な口調で返事をした。
「んで、二人とも初夜は済ませたの?」
姉さんはにこやかにそう言い放った。
「エッ」
「『エッ』じゃないでしょう? 番にはなったの?」
姉さん、お願いだから斐都の前でそういう話しないで……。
「まだです。心広さんの次のヒートに番になろうねって話していて」
「そうなのね。じゃあその間、斐都は預かるわ」
「ありがとうございます、お義姉さん」
なんだろう、三日月さんと姉さんだけで話が終わっちゃった。
そんなことを思いながらヒートを迎えることになった。
○○○
「本当に、いいんですか?」
「いいってば! 今日になってから何回聞くのさ!」
「心広さんが嫌がること、したくないので」
場所は僕の家の寝室、ベッドの上。僕と三日月さんは向かい合ってそんな会話を繰り広げていた。この会話、今日に入って実に十五回目である。流石に聞き過ぎでしょう……。
そんなことを思っていると三日月さんは僕を優しく抱き締めてきた。
「あの、心広さん。一つお願いがあります」
「? なんですか?」
「下の名前で呼んでいただけませんか?」
「悠音、さん?」
三日月さんの下の名前で呼ぶと余程嬉しかったのか僕を強く抱き締めてきた。
「嬉しいです、これからも、そう呼んで下さい」
「はい」
その会話が終わると同時に悠音さんは僕にキスしてきた。
幼い子どもがするような触れ合うキ¥だけのキスから舌を絡めるような深いキスになっていく。
「んッ……ふ」
口の隙間から吐息が漏れてゆく。こういう時、鼻で息をすると聞くけれど、そう簡単にはいかないもんだぁ。
「……あ、苦しかったですか?」
「っ……ごめん、なさい。キス、したことなくて」
「ないんですか!? じゃあ、俺が最初?」
「悠音さんが最初で最後の人ですよ」
僕はふにゃりと笑みを浮かべると悠音さんんの頬に触れるだけのキスをした。
「心広さん、ご褒美ありがとうございます」
「これ、ご褒美なの?」
「俺からしたらご褒美ですっっ!」
「……それはよかった」
あ、敬語外れた、と自分で思った。警戒心なくなったみたいだ。
「心広さん。今度、斐都くんと三人で出掛けましょうか。斐都くんが行きたい所に」
悠音さんはそう言うと僕を抱き締めてきた。
「いいですね、それ」
斐都の行きたい所。たくさんあるだろうな、遊園地も、水族館も、行かせてあげたい。
――その瞬間、身体が重くなって言うことが効かなくなった。
「あッ……」
「あ、甘い匂いしてきた」
悠音さんはそう言うと僕のうなじの匂いを嗅いできた。
「甘くて、良い匂い」
そう言って悠音さんは僕のうなじを舐めてきた。
その日は、自分でも幸せな日であったと記憶している。
○○○
ヒートを終えた数日後、僕、斐都、悠音さんは遊園地にやってきていた。
「ママ! かんらんしゃのりたい!」
「待って、走ったら転んじゃうよ」
「斐都くん、肩車してあげようか?」
「ほんと? やってやって!」
斐都は悠音さんの言葉を聞くと嬉しそうに微笑み悠音さんに肩車を強請った。
悠音さんは斐都を肩車して観覧車の方へ向かった。
その光景を見ながら僕は悠音さんが噛んだうなじを指先でそっと撫でた。
――僕、番が出来たんだ。
そのことを実感した。実感したのと同時に、幸せを感じた。
「あの時助けた子、やっぱり三日月さんだったのね」
「ママ、このひととつがいになるの?」
「うん、そうだよ。嫌?」
「ううん。このひとなら、だいじょーぶ」
斐都はそう言うと三日月さんに近付き、「ママをお願いね」と言った。三日月さんは「分かりました」と丁寧な口調で返事をした。
「んで、二人とも初夜は済ませたの?」
姉さんはにこやかにそう言い放った。
「エッ」
「『エッ』じゃないでしょう? 番にはなったの?」
姉さん、お願いだから斐都の前でそういう話しないで……。
「まだです。心広さんの次のヒートに番になろうねって話していて」
「そうなのね。じゃあその間、斐都は預かるわ」
「ありがとうございます、お義姉さん」
なんだろう、三日月さんと姉さんだけで話が終わっちゃった。
そんなことを思いながらヒートを迎えることになった。
○○○
「本当に、いいんですか?」
「いいってば! 今日になってから何回聞くのさ!」
「心広さんが嫌がること、したくないので」
場所は僕の家の寝室、ベッドの上。僕と三日月さんは向かい合ってそんな会話を繰り広げていた。この会話、今日に入って実に十五回目である。流石に聞き過ぎでしょう……。
そんなことを思っていると三日月さんは僕を優しく抱き締めてきた。
「あの、心広さん。一つお願いがあります」
「? なんですか?」
「下の名前で呼んでいただけませんか?」
「悠音、さん?」
三日月さんの下の名前で呼ぶと余程嬉しかったのか僕を強く抱き締めてきた。
「嬉しいです、これからも、そう呼んで下さい」
「はい」
その会話が終わると同時に悠音さんは僕にキスしてきた。
幼い子どもがするような触れ合うキ¥だけのキスから舌を絡めるような深いキスになっていく。
「んッ……ふ」
口の隙間から吐息が漏れてゆく。こういう時、鼻で息をすると聞くけれど、そう簡単にはいかないもんだぁ。
「……あ、苦しかったですか?」
「っ……ごめん、なさい。キス、したことなくて」
「ないんですか!? じゃあ、俺が最初?」
「悠音さんが最初で最後の人ですよ」
僕はふにゃりと笑みを浮かべると悠音さんんの頬に触れるだけのキスをした。
「心広さん、ご褒美ありがとうございます」
「これ、ご褒美なの?」
「俺からしたらご褒美ですっっ!」
「……それはよかった」
あ、敬語外れた、と自分で思った。警戒心なくなったみたいだ。
「心広さん。今度、斐都くんと三人で出掛けましょうか。斐都くんが行きたい所に」
悠音さんはそう言うと僕を抱き締めてきた。
「いいですね、それ」
斐都の行きたい所。たくさんあるだろうな、遊園地も、水族館も、行かせてあげたい。
――その瞬間、身体が重くなって言うことが効かなくなった。
「あッ……」
「あ、甘い匂いしてきた」
悠音さんはそう言うと僕のうなじの匂いを嗅いできた。
「甘くて、良い匂い」
そう言って悠音さんは僕のうなじを舐めてきた。
その日は、自分でも幸せな日であったと記憶している。
○○○
ヒートを終えた数日後、僕、斐都、悠音さんは遊園地にやってきていた。
「ママ! かんらんしゃのりたい!」
「待って、走ったら転んじゃうよ」
「斐都くん、肩車してあげようか?」
「ほんと? やってやって!」
斐都は悠音さんの言葉を聞くと嬉しそうに微笑み悠音さんに肩車を強請った。
悠音さんは斐都を肩車して観覧車の方へ向かった。
その光景を見ながら僕は悠音さんが噛んだうなじを指先でそっと撫でた。
――僕、番が出来たんだ。
そのことを実感した。実感したのと同時に、幸せを感じた。
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