Siamo felici con noi

冰彗

文字の大きさ
1 / 4

一話

しおりを挟む
 俺の名前は露草つゆくさゆかり、高校二年生だ。突然だけど俺には幼馴染が二人いる。一人は俺と同い年でもある藤川ふじかわみどり。機械に強くてよく修理を頼んだりしている。そしてもう一人の幼馴染、俺や翠より一つ年下で尚且つ俺の恋人でもある白椛しらかば真冬まふゆだ。

 俺たちは同じ高校に通っていて、学校に行く時はいつも一緒に登校している。

 ただ最近、翠と一緒に登校出来ていない。俺や真冬よりも早くに行くのだ。何故なのか一度電話で聞いた事があった。

『真冬と行ってやれよ。あいつ、ゆかりの事本当に大好きだからさ。俺がいたら邪魔だろ?』

 とあいつは真剣な声で言った。それを聞いて俺は何も言えなくなった。

 確かに真冬の家庭環境は良いとは言えない、寧ろ最悪なくらいだ。だからなのか真冬はよく俺や翠の家に遊びに来たり泊まりに来たりしていた。

 そんな事を考えながら真冬と登校していると真冬に「ゆかり」と声を掛けられた。

「……ん? どうかしたか?」

「どうかしたかはゆかりの方だよ。表情暗いけど、大丈夫? 何かあった?」

 何かあったかと言われれば確かにあったのだがそれを真冬に言うのは違う気がした。というか、言っちゃ駄目な気がした。

「んーん、なんでもない。そうだ、真冬。お前今日俺ん家に来るか? 今日親いないから」

「……えっ!?」

 俺がそう言うと真冬は顔を真っ赤にしたかと思ったら何故か俯いてしまった。

「ゆーちゃん、意味分かって言ってるの?」

 真冬は懐かしい渾名あだなで俺を呼んだ。

「意味?」

「えっと、その……」

 言い淀んでいる様子を見て俺はある結論に至った。

「嗚呼。セックスの話?」

「セッ……!?」

 俯いていた顔を上げた真冬の表情は〝驚愕〟や〝羞恥〟などを想わせた。

「ゆーちゃんそんなエッチな事言っちゃ駄目だよ!」

「なんでだよ。俺たち付き合い始めてそんなに経ってはないけど、見知った幼馴染だろ。真冬はその……シたくないのかよ…」

 我ながら朝っぱらから何を話しているのだろうと思う。けれど、今言わなければ真冬はずっと俺に手を出してくれないような気がした。

 己の頬を指先で掻きながら返答を待っていると真冬は未だに顔を真っ赤にしたまま、あーだのうーだの言っていた。

「兎に角! お前、今日俺ん家に来いよ。絶対だからな!」

 俺はとうとう痺れを切らしてしまい、それだけ言うと走って学校へ向かった。

 置いていかれた真冬をチラリと見たら、何故だかあいつは迷子になった幼い子どものような表情をしていた。そんなふうに見えただけかもしれないのだが……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

処理中です...