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一話
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俺の名前は露草ゆかり、高校二年生だ。突然だけど俺には幼馴染が二人いる。一人は俺と同い年でもある藤川翠。機械に強くてよく修理を頼んだりしている。そしてもう一人の幼馴染、俺や翠より一つ年下で尚且つ俺の恋人でもある白椛真冬だ。
俺たちは同じ高校に通っていて、学校に行く時はいつも一緒に登校している。
ただ最近、翠と一緒に登校出来ていない。俺や真冬よりも早くに行くのだ。何故なのか一度電話で聞いた事があった。
『真冬と行ってやれよ。あいつ、ゆかりの事本当に大好きだからさ。俺がいたら邪魔だろ?』
とあいつは真剣な声で言った。それを聞いて俺は何も言えなくなった。
確かに真冬の家庭環境は良いとは言えない、寧ろ最悪なくらいだ。だからなのか真冬はよく俺や翠の家に遊びに来たり泊まりに来たりしていた。
そんな事を考えながら真冬と登校していると真冬に「ゆかり」と声を掛けられた。
「……ん? どうかしたか?」
「どうかしたかはゆかりの方だよ。表情暗いけど、大丈夫? 何かあった?」
何かあったかと言われれば確かにあったのだがそれを真冬に言うのは違う気がした。というか、言っちゃ駄目な気がした。
「んーん、なんでもない。そうだ、真冬。お前今日俺ん家に来るか? 今日親いないから」
「……えっ!?」
俺がそう言うと真冬は顔を真っ赤にしたかと思ったら何故か俯いてしまった。
「ゆーちゃん、意味分かって言ってるの?」
真冬は懐かしい渾名で俺を呼んだ。
「意味?」
「えっと、その……」
言い淀んでいる様子を見て俺はある結論に至った。
「嗚呼。セックスの話?」
「セッ……!?」
俯いていた顔を上げた真冬の表情は〝驚愕〟や〝羞恥〟などを想わせた。
「ゆーちゃんそんなエッチな事言っちゃ駄目だよ!」
「なんでだよ。俺たち付き合い始めてそんなに経ってはないけど、見知った幼馴染だろ。真冬はその……シたくないのかよ…」
我ながら朝っぱらから何を話しているのだろうと思う。けれど、今言わなければ真冬はずっと俺に手を出してくれないような気がした。
己の頬を指先で掻きながら返答を待っていると真冬は未だに顔を真っ赤にしたまま、あーだのうーだの言っていた。
「兎に角! お前、今日俺ん家に来いよ。絶対だからな!」
俺はとうとう痺れを切らしてしまい、それだけ言うと走って学校へ向かった。
置いていかれた真冬をチラリと見たら、何故だかあいつは迷子になった幼い子どものような表情をしていた。そんなふうに見えただけかもしれないのだが……。
俺たちは同じ高校に通っていて、学校に行く時はいつも一緒に登校している。
ただ最近、翠と一緒に登校出来ていない。俺や真冬よりも早くに行くのだ。何故なのか一度電話で聞いた事があった。
『真冬と行ってやれよ。あいつ、ゆかりの事本当に大好きだからさ。俺がいたら邪魔だろ?』
とあいつは真剣な声で言った。それを聞いて俺は何も言えなくなった。
確かに真冬の家庭環境は良いとは言えない、寧ろ最悪なくらいだ。だからなのか真冬はよく俺や翠の家に遊びに来たり泊まりに来たりしていた。
そんな事を考えながら真冬と登校していると真冬に「ゆかり」と声を掛けられた。
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「んーん、なんでもない。そうだ、真冬。お前今日俺ん家に来るか? 今日親いないから」
「……えっ!?」
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「ゆーちゃん、意味分かって言ってるの?」
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「意味?」
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言い淀んでいる様子を見て俺はある結論に至った。
「嗚呼。セックスの話?」
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俯いていた顔を上げた真冬の表情は〝驚愕〟や〝羞恥〟などを想わせた。
「ゆーちゃんそんなエッチな事言っちゃ駄目だよ!」
「なんでだよ。俺たち付き合い始めてそんなに経ってはないけど、見知った幼馴染だろ。真冬はその……シたくないのかよ…」
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己の頬を指先で掻きながら返答を待っていると真冬は未だに顔を真っ赤にしたまま、あーだのうーだの言っていた。
「兎に角! お前、今日俺ん家に来いよ。絶対だからな!」
俺はとうとう痺れを切らしてしまい、それだけ言うと走って学校へ向かった。
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