初夜に「快楽の毒」を注がれた身代わり花嫁。〜冷徹な魔公爵は「もう二度と逃がさない」と私の首筋に所有の証を深く刻み込む〜

しょくぱん

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第一章 凍てつく呪いと、灼熱の初夜

第3話:刻印の疼きと、甘い監禁

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 首筋に刻まれた所有の証しるしは、一夜明けても熱を失うどころか、脈打つような拍動リズムを刻んでいた。鏡の前に立つエルシアが指先でそこをなぞれば、脳の奥まで痺れるような甘い刺激が走り、膝の力が抜けそうになる。

「……消えない。本当に、消えないんだわ……」

 白雪のような肌に、毒々しくも美しい深紅の痣。それはゼノスの執着を可視化したような刻印マーキングだった。ふわりと、背後から冷気を含んだ風が吹く。振り返る間もなく、大きな腕がエルシアの腰を抱きすくめ、背中から厚い胸板が押し付けられた。

「鏡など見る必要はない。お前の姿を映していいのは、俺の瞳だけだ」

 ゼノスの低い声が鼓膜を震わせる。彼はエルシアの髪をかき上げると、自ら刻んだ痣の上に、愛おしげに唇を落とした。

「ひ……あぁっ……」

 エルシアの口から、情けないほどに甘い声が零れる。ただの接吻くちづけではない。唇が触れた場所から、ゼノスの強大な魔力が強制的に体内に流し込まれる。それは身体中の血管を逆流するようなを伴い、エルシアの理性をトロトロに溶かしていった。

「あ、……っ、ゼノス、様……。朝から、このような……っ」 「黙れ。お前が俺の魔力をのが、この痣を通じて伝わってくるぞ」

 ゼノスの言葉通りだった。あれほど恐ろしかった彼の腐食ふしょくの魔力が、今は心地よい。それどころか、彼の魔力が途絶えると、体中の細胞が飢えたように渇望かつぼうを訴えるのだ。エルシアの透明むのうな魔力は、すでにゼノスのくろという毒に侵食され、彼なしでは形を保てないほどに変質つくりかえられていた。

 ゼノスはエルシアを抱き上げたまま、窓のない広大な寝室ベッドルームの中央にあるソファーに腰を下ろした。当然のように彼女を膝の上に座らせ、逃げられないように太ももを固く抱え込む。

「今日から、この部屋がお前の世界のすべてだ」 「え……? それは、どういう……」 「外の光は、お前の肌には刺激が強すぎる。俺が許すまで、ここから出ることは許さない。必要なものはすべて、俺の手で与えてやる」

 それは、あまりにも甘美な監禁かんきんの宣言だった。エルシアは驚きに目を見開くが、ゼノスの手首に自分の手が触れた瞬間、パチリと小さな魔力の火花が散り、脊髄を突き抜けるような快感が彼女の思考を奪う。

「あ、……はぁ、っ……」

 エルシアの瞳が潤み、視線が泳ぐ。そんな彼女の反応を愉しむように、ゼノスは指先で彼女の鎖骨さこつをなぞり、薄いシュミーズの襟元を緩めていった。

「お前はなどではない。誰の魔力も受け入れられなかった俺を、唯一満たしてくれる最高のうつわだ」

 ゼノスの手が、エルシアの肌を直接割り込むように這い上がる。大きな掌が彼女の柔らかい膨らみを包み込み、指先が微かな突起さきを弄る。

「や、……め、て……っ!」 「嘘をつくな。胸の鼓動がこんなに早くなっている。お前の体は、俺の指先が触れるのを待っているじゃないか」

 残酷な言葉とともに、ゼノスの舌がエルシアの耳たぶを蹂躙じゅうりんする。エルシアは抗おうとしたが、首筋の刻印が熱く疼き、全身を快楽の毒しびれが駆け巡った。

 実家では誰にも見向きもされず、冷たい地下室で独り、死ぬのを待っていた。けれど今は、この恐ろしくも美しい男に、息もできないほど激しく渇望もとめられている。その歪んだ充足感じゅうそくかんが、エルシアの心を少しずつ壊していく。

「もっと俺を求めろ、エルシア。お前のすべてを俺で満たし、俺以外の男には呼吸の仕方も思い出せないようにしてやる」

 ゼノスの唇が再び重なり、深い接吻くちづけの中でエルシアの意識は遠のいていく。彼女はまだ気づいていない。ゼノスが彼女を愛しているのではなく、彼女という聖域おあしすを永遠に独占するために、外の世界との繋がりを一つずつ丁寧に、確実に断絶っているということに。

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