初夜に「快楽の毒」を注がれた身代わり花嫁。〜冷徹な魔公爵は「もう二度と逃がさない」と私の首筋に所有の証を深く刻み込む〜

しょくぱん

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第一章 凍てつく呪いと、灼熱の初夜

第5話:不純な視線と、絶対の隔離

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 ゼノスが公務でわずかに席を外した、昼下がりのことだった。扉が厳重げんじゅうに閉ざされた寝室に、一人の若い男の使用人が運び込まれた食事を届けに現れた。普段は年配の侍女が担う役目だが、急病による代役だという。

「……失礼いたします、奥様。お食事をお持ちしました」

 エルシアは、ベッドの上で身を縮めた。ゼノスの魔力オーラが染み付いたガウンを羽織り、乱れた髪を整える余裕もない。首筋に鮮やかに浮かび上がる所有印マーキングは、隠しようもなく外気に晒されていた。

「あ、ありがとうございます……」

 久しぶりに自分以外の「人間」の声を聞いた気がして、エルシアは無意識にその青年を見上げた。青年は、エルシアの痛々しいほどに美しい姿に息を呑み、そして彼女の首にあるを凝視したまま、釘付けくぎづけになった。

「あ……あの、奥様。もし、お苦しいのでしたら、私に何かお手伝いできることは……」

 青年が同情を込めた瞳で、一歩、エルシアに近づく。その手がエルシアの肩に触れようとした、その瞬間だった。

 ――凍てつく咆哮ひめいを上げて、大気が爆ぜた。

「誰の許可を得て、その汚い手を近づけている」

 冷気を纏った漆黒の影が、影から這い出すように現れた。ゼノスだ。彼の瞳は虚無くろに沈み、全身から溢れ出す腐食ふしょくの魔力が、青年の足元の絨毯を一瞬で炭化させる。

「ゼ、ゼノス様……っ!」 「ひ、ひぃっ……! も、申し訳ございません! 私はただ……!」

 青年が恐怖に腰を抜かす。だが、ゼノスの怒りは収まらない。彼は青年の首を不可視の力りきで吊り上げると、その瞳をじっと見つめた。

「お前は、この女の中に何を視た? その不浄な視線で、俺のものに触れたか?」 「ぎ……、あ……っ」 「ゼノス様、おやめください! その方は、ただ……!」

 エルシアが必死に叫び、ゼノスの袖を掴む。その瞬間、ゼノスの矛先がエルシアに向けられた。彼は青年をゴミのように放り出すと、エルシアの細い顎を強引に掴み、自分の方を向かせた。

「エルシア。お前は今、あの男に助けを求めたのか? 俺の腕の中では、不満だというのか……!」 「ち、違います……っ! 私は、ただ……あ、ぁっ……!」

 ゼノスの指先が、彼女の首筋にある刻印しるしに強く押し当てられた。痣が真っ赤に発光し、エルシアの体内をが駆け巡る。先ほどまで感じていた恐怖が、一瞬で熱い疼きうずきへと書き換えられていく。

「はぁ、っ……、あ、……ぅん……っ」

 青年の前だというのに、エルシアの腰が砕け、甘い吐息が溢れ出す。ゼノスはそれを見せつけるように、彼女の耳たぶを蹂躙じゅうりんしながら低く笑った。

「見ていろ。お前が哀れんだこの女は、俺の魔力なしでは立っていることもできない淫らな獣けものだ」 「や……、言わないで……っ!」 「お前を映したこの男の瞳は、もう必要ないな。……外へ連れ出せ。二度と光を視られぬよう、地下牢らくえんへ放り込んでおけ」

 ゼノスの冷徹な命令一つで、青年は騎士たちに引きずられていった。部屋に残されたのは、荒い息を吐くエルシアと、狂気的な執着に瞳を燃やすゼノスだけだ。

 彼は扉に重い鍵をかけ、エルシアを寝台へと押し倒した。大きな身体がのしかかり、彼の重圧じゅうあつがエルシアの五感を支配する。

「お前は外の世界を見る必要はない。他人の声を聞く必要もない。……俺の指先が触れる熱だけを、その体に刻み込んでいろ」

 ゼノスの手がドレスの布地を強引ごういんに引き裂き、白磁の肌を露出させる。彼はエルシアの胸元に顔を埋め、まるで自分の刻印を上書きするように、新たな咬傷かみあとを残していく。

「あ、……っ、はぁ、……あ……っ!」

 エルシアの意識が、熱い密室の中に溶けていく。自分が誰なのか、外に何があったのか。そんなことはもう、どうでもよくなっていく。首筋の刻印が疼くたび、彼女の心は一歩ずつ、引き返せない深淵しんえんへと堕ちていった。

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