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第四章 契約満了の朝と、永遠の鎖
第22話:仕組まれた渇望と、永久の施錠
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雪原で血を吐き、這いつくばったあの瞬間、エルシアの中で「外の世界」への執着は微塵も残らず砕け散った。 ゼノスに抱き上げられ、再び城の深奥――あの窓のない寝室へと連れ戻されたとき、彼女が感じたのは、恐ろしいほどの安堵感だった。
「……はぁ、っ、……あ、……っ」
ベッドに横たえられたエルシアの体は、まだ外気による拒絶反応で細かく震えていた。ゼノスは彼女の濡れた髪を払い、その耳元で冷酷な事実を突きつける。
「理解したか。お前の肺は、俺の魔力が混じった空気でなければ呼吸できず、お前の心臓は、俺の呪いという拍動がなければ止まってしまう。……お前はもう、人間(・・)の理では生きていけない体なんだよ」
ゼノスはサイドテーブルに置かれていた、新たな装身具を手に取った。 それは、今まで付けていたものよりも重厚で、禍々しい彫刻が施された漆黒の首輪だった。
「ゼノス、様……。それは……?」 「お前が二度と、あのような無意味な苦痛を味わわずに済むための保険だ。これには、俺の魔力が常に一定量放出されるよう、俺の心臓の欠片が埋め込んである」
ゼノスはエルシアの細い首を片手で固定し、その首輪を嵌めた。 カチリ、と絶望的な重みの音が響く。その瞬間、首輪からエルシアの血管へ、暴力的なまでの密度の魔力が直接流れ込んだ。
「あ、……あ、ぁぁぁあああああっ!!」
エルシアの背筋が弓なりに反り、瞳が白濁する。 内側から「ゼノス」に満たされる、圧倒的な侵食。 同時に、彼女の足首に繋がれていた「金の鈴」が、ゼノスの魔力に反応して黒く染まり、その音色はより低く、脳の芯を震わせるような音へと変質した。
「これで、お前の五感はすべて俺と繋がった。お前が何を感じ、何を望んでいるか、俺には手に取るように分かる」
ゼノスは目隠しを再びエルシアの瞳に巻き付けた。今度の目隠しは、彼女の魔力と癒着し、本人の意思では決して外せないよう術式が組まれている。
「視覚は不要だ。お前はただ、俺の与える温もりと、魔力の疼きだけを感じていればいい。……外の景色など、お前の瞳を汚すだけだ」 「……はい、……ゼノス様……。何も、いりません……。あなたの、音と、匂い、だけ……ください……っ」
エルシアは自ら、首輪に繋がれた見えない鎖を手繰り寄せるように、ゼノスの胸板に頬を寄せた。 かつての「一年契約」という猶予は、彼女を絶望させ、自ら檻の奥へと逃げ込ませるための、ゼノスの壮大な茶番に過ぎなかった。
ゼノスは、震える彼女の腰を抱き寄せ、耳たぶに深く噛み付いた。 首輪の紋様が赤く光り、エルシアの全身の呪印が激しく脈打つ。
「いい子だ。お前のその渇望が、俺の呪いを鎮める唯一の供物だ」
外界から完全に断絶された、二人だけの密室。 エルシアは、自ら選んだ永遠の隷属の中で、溶けていく意識をゼノスに捧げ続けた。 もう、扉が開かれることは二度とない。
【作者より】面白いと思ったら、ぜひ「いいね」「感想」「エール」をお願いします!
「……はぁ、っ、……あ、……っ」
ベッドに横たえられたエルシアの体は、まだ外気による拒絶反応で細かく震えていた。ゼノスは彼女の濡れた髪を払い、その耳元で冷酷な事実を突きつける。
「理解したか。お前の肺は、俺の魔力が混じった空気でなければ呼吸できず、お前の心臓は、俺の呪いという拍動がなければ止まってしまう。……お前はもう、人間(・・)の理では生きていけない体なんだよ」
ゼノスはサイドテーブルに置かれていた、新たな装身具を手に取った。 それは、今まで付けていたものよりも重厚で、禍々しい彫刻が施された漆黒の首輪だった。
「ゼノス、様……。それは……?」 「お前が二度と、あのような無意味な苦痛を味わわずに済むための保険だ。これには、俺の魔力が常に一定量放出されるよう、俺の心臓の欠片が埋め込んである」
ゼノスはエルシアの細い首を片手で固定し、その首輪を嵌めた。 カチリ、と絶望的な重みの音が響く。その瞬間、首輪からエルシアの血管へ、暴力的なまでの密度の魔力が直接流れ込んだ。
「あ、……あ、ぁぁぁあああああっ!!」
エルシアの背筋が弓なりに反り、瞳が白濁する。 内側から「ゼノス」に満たされる、圧倒的な侵食。 同時に、彼女の足首に繋がれていた「金の鈴」が、ゼノスの魔力に反応して黒く染まり、その音色はより低く、脳の芯を震わせるような音へと変質した。
「これで、お前の五感はすべて俺と繋がった。お前が何を感じ、何を望んでいるか、俺には手に取るように分かる」
ゼノスは目隠しを再びエルシアの瞳に巻き付けた。今度の目隠しは、彼女の魔力と癒着し、本人の意思では決して外せないよう術式が組まれている。
「視覚は不要だ。お前はただ、俺の与える温もりと、魔力の疼きだけを感じていればいい。……外の景色など、お前の瞳を汚すだけだ」 「……はい、……ゼノス様……。何も、いりません……。あなたの、音と、匂い、だけ……ください……っ」
エルシアは自ら、首輪に繋がれた見えない鎖を手繰り寄せるように、ゼノスの胸板に頬を寄せた。 かつての「一年契約」という猶予は、彼女を絶望させ、自ら檻の奥へと逃げ込ませるための、ゼノスの壮大な茶番に過ぎなかった。
ゼノスは、震える彼女の腰を抱き寄せ、耳たぶに深く噛み付いた。 首輪の紋様が赤く光り、エルシアの全身の呪印が激しく脈打つ。
「いい子だ。お前のその渇望が、俺の呪いを鎮める唯一の供物だ」
外界から完全に断絶された、二人だけの密室。 エルシアは、自ら選んだ永遠の隷属の中で、溶けていく意識をゼノスに捧げ続けた。 もう、扉が開かれることは二度とない。
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