初夜に「快楽の毒」を注がれた身代わり花嫁。〜冷徹な魔公爵は「もう二度と逃がさない」と私の首筋に所有の証を深く刻み込む〜

しょくぱん

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第四章 契約満了の朝と、永遠の鎖

第24話:不浄の宿り、継がれる執着

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 窓のない寝室を支配する、重く甘い紫煙の香り。 エルシアの意識は、今日もゼノスから与えられる快楽しげきと、忘却の香によって、とろとろの蜜のように溶け崩れていた。 だが、ここ数日、彼女の身体にはこれまでにない「異変」が生じていた。

「……う、……ぅ、……っ」

胃の底からせり上がる、得体の知れない吐気はきけ。 それと同時に、身体の芯が、内側から燃え上がるような異常な熱を帯びている。 ゼノスと呪いを分かち合い、彼の魔力を命の糧とするようになって久しいが、この感覚は単なる「魔力飢餓」とは明らかに異なっていた。

「どうした、エルシア。顔色が悪いな。……俺の魔力が、まだ足りないか?」

ゼノスが、ベッドに横たわるエルシアの細い腰を引き寄せ、その腹部に大きな掌を当てた。 その瞬間。

「――っ!?」

ゼノスの瞳が、驚愕と、それに続く凄まじい狂喜きょうきに塗り潰された。 彼の掌の下で、エルシアの胎内にある「魔力の澱」が、ゼノスの拍動と完全に一致し、小さく、だが力強く脈打っていたのだ。

「……そうか。ついに、成ったか」

ゼノスの声が、歓喜で低く震える。 本来、魔王の呪いと聖女の光は反発し、命が宿ることなどあり得ない。 だが、一年という歳月をかけて、ゼノスがエルシアの心身を徹底的に壊し、彼の「毒」で染め上げ、共依存の極致へと引きずり込んだ結果――。 彼女の胎内は、魔王の種を育むための、世界で唯一の苗床まゆへと作り替えられていた。

「ゼノス、様……?私、……お腹が、……熱くて……っ」 「おめでとう、エルシア。お前の中に、俺たちの大罪あいの結晶が宿ったぞ」

ゼノスは、エルシアの首輪の鎖を短く握り込み、彼女を逃がさないように強く抱きしめた。 その言葉の意味を理解した瞬間、エルシアの全身に戦慄が走る。 自分の腹の中に、あの恐ろしい呪いを持つ魔王の子供が、自分を蝕みながら育っている。

「嫌……、あ、……ぁ、……っ!私、……壊れて、しまう……っ!」 「壊れはしない。お前の身体は、この子のために俺がすでに作り替えてある。……お前は、俺だけのもの(・・・・・・)では足りず、今度は内側から俺の血族けしんに喰らわれるのだ」

ゼノスの笑い声が、静かな部屋に響き渡る。 彼はエルシアの目隠しを外し、恐怖に怯える彼女の瞳を真正面から見つめた。 そこには、逃れられない運命を悟った絶望と、それでも主を求めてしまう隷属の悦びこうふくが混ざり合っていた。

「この子は、お前の『光』と俺の『呪い』を等しく継ぐだろう。……生まれてくるその日まで、一歩もこの部屋から出すわけにはいかないな。お前の五感も、栄養も、すべて俺の手からしか与えない」

ゼノスは、エルシアの腹部に優しく、だが逃さぬように唇を寄せた。 足首の金の鈴アンクレットが、新しい命の鼓動に呼応するように、チリン、チリンと、どこか不吉なリズムで鳴り続ける。

エルシアは、自らの腹部を愛おしげに撫でるゼノスの手の上に、自分の手を重ねた。 恐怖は、いつしか深い陶酔とうすいへと変わる。 一人の男に、過去も、現在も、そして自分の腹の中に宿る「未来」までもが支配される。 その究極の独占あいに、エルシアはただ涙を流し、彼を求めるように唇を開いた。

「……嬉しい、です……。私、……あなたの、子供を……、あなたの、ためだけに……産みます……っ」

それは、聖女が完全に「魔王の女」へと堕ちた、最後の一線だった。

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