身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん

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第二章 幸せな領地生活

第十九話 再臨の聖女と、地龍の咆哮

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 王宮の大広間だいこうまは、未だに異様な熱気に包まれていた。中心にいるのは、聖女せいじょとして称賛を浴びるミランダ。だが、その隣に立つアレクシスから放たれる殺気は、周囲の空気を物理的に凍りつかせていた。

「……ミランダ・バーンズ。貴様は、その珠に宿る力が自らのものだと断言したな?」

「も、もちろんですわ! 先ほどの輝きこそ、私がヴォルフェン領を救ってきた証拠……ひっ!?」

 アレクシスの大きな手が、ミランダが握りしめていた『魔力吸奪の珠まりょくきゅうだつのたま』を強引に奪い取った。

「閣下! 何をされるのですか! それは娘の――」

「黙れ、伯爵。……陛下、この珠には「」の力など一滴も宿っておりません。あるのは、他者の魔力を強制的に引き抜く『禁忌きんき』の刻印のみ」

 アレクシスが力を込めると、黒い炎のような魔力が珠を包み込む。パキィィィィィィィン!! という、耳障りな破壊音が響き渡った。

「あ、あああ! 私の……私の力がぁっ!」

 ミランダが悲鳴を上げると同時に、砕け散った珠から、眩いばかりの黄金の光が溢れ出した。その光は持ち主を求めて会場を駆け抜け――。

 ――ドォォォォォォォォン!!

 王宮の地下から、突き上げるような大きな衝撃が走った。広間の大扉が、外側から凄まじい風圧で吹き飛ばされる。

「……お待たせいたしました、アレクシス様」

 砂塵の中から現れたのは、奪われていた魔力を取り戻し、神々しいまでの光を纏ったレティシアだった。だが、人々が言葉を失ったのは、彼女の背後に控える巨大な影・・・・・のせいだった。

「ひ……っ、龍!? 伝説の『地龍ちりゅう』様ではないか!?」

 翡翠の鱗を輝かせ、王宮の主を自負するかのような威厳を放つ地龍。レティシアはその頭に優しく触れながら、冷徹な表情で実家の家族を見据えた。

「お姉様、お父様。……地下牢を『お掃除・・・』してきました。そこに溜まっていたのは、アレクシス様を長年苦しめていた、あなたたちの呪詛じゅその残骸です」

「な、何を馬鹿なことを! そんな証拠が――」

「証拠なら、ここにあります」

 レティシアが掲げたのは、地龍から授かった翡翠の鱗。彼女が指先で触れると、鱗からホログラムのように、地下牢の奥深くでバーンズ伯爵とミランダが呪いの儀式に耽る過去の映像が映し出された。

「……これは、……なんというおぞましい」

 国王が絶句し、会場中の貴族たちから悲鳴が上がる。映像の中のミランダは、レティシアを「呪いの肩代わり」として虐げ、アレクシスが弱っていくのを嘲笑いながら見ていたのだ。

「……ミランダ。貴様、俺の妻を道具にし、我が家系を呪い続けていたのか」

 アレクシスの黄金の瞳に、逃れられぬ死の宣告・・・・が宿る。

「ち、違うわ! 私は、私は選ばれた聖女で……!」

「――龍様、お願いします。王宮の『汚れ』を、すべて払い清めてください」

 レティシアの言葉に、地龍が天を仰いで咆哮した。――グォォォォォォォォォッ!!

 その衝撃波は、ミランダが纏っていた偽りの魔力を剥ぎ取り、彼女を無様に床へと叩きつけた。それだけではない。王宮全体に数百年蓄積されていた瘴気が、レティシアの光と地龍の風によって一気に霧散していく。

 光が収まった後、そこにいたのは。豪華なドレスがボロ布のように成り果て、泥だらけで這いつくばるミランダと伯爵夫妻の、無惨な姿だった。


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