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第三章 王都での栄光と、実家の末路
第二十一話 平民に落ちた天才(自称)と、公爵の独占欲
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王都の喧騒から切り離された、王宮に隣接する最高級の離宮。
そこは、国賓のみが立ち入りを許される贅を尽くした空間だった。
「……レティシア、あまり動くな。顔色がまだ優れない」
天蓋付きのふかふかなベッドに座る私を、アレクシス様が背後から包み込むように抱きしめる。
彼の大きな手が私の頬を優しく撫で、そのまま耳たぶに指先が触れた。
「アレクシス様……。私なら大丈夫です。地下牢も龍様が守ってくださっていましたし、少しだけお掃除をしただけですから」
「それがダメなんだ。君は自分を後回しにしすぎる」
アレクシス様の黄金の瞳には、かつてないほどの独占欲が渦巻いていた。
私が地下牢へ連行された時、彼はこの王宮を更地にする寸前だったという。その反動か、救出されてからの彼は、一秒たりとも私を離そうとしない。
「これからは、俺の許可なく一歩も外へ出るな。……いや、俺の目の届かない場所へは行かせない」
低い声で囁かれ、首筋に熱い吐息がかかる。
実家では「ゴミ」のように扱われていた私が、今は「宝物」のように扱われている。そのあまりの幸福に、胸が熱くなった。
一方、その頃。
王都の北端にある、悪臭漂う『死の掃き溜め』と呼ばれる広大なゴミ処理場では、三つの影が泥を啜っていた。
「……嫌。こんなの、私の人生じゃないわ!」
ミランダが、泥と油で真っ黒になった手を震わせて叫ぶ。
かつての豪華なドレスはボロ布となり、今や彼女が纏っているのは、罪人に与えられる粗末な麻袋の服だけだ。
「お、お父様……どうにかしてください。私、こんな汚い場所で一生暮らすなんて耐えられない!」
「黙れ、ミランダ! お前が『聖女』などと嘘をつくから、こんなことになったんだ!」
「なんですって!? お父様だって、公爵家を呪えって言ったじゃない!」
醜い罵り合いを続けるバーンズ元伯爵とミランダ。
彼らには今日から、王都中から集まる排泄物や腐った生ゴミを、素手で分別する「仕事」が与えられていた。
浄化の力など一滴も持たない彼らにとって、その臭気は肺を焼くような苦痛だ。
「おい、サボるな! 早くその肥溜めを片付けろ!」
監視の兵士が振るった鞭が、ミランダの細い背中で唸る。
かつてレティシアに押し付けていた「汚れ」と「蔑み」。それが今、何倍にもなって自分たちに跳ね返ってきているのだと、彼らはまだ気づいていなかった。
離宮のバルコニーから夜空を見上げ、私は静かに祈った。
もう二度と、アレクシス様を傷つける汚れが、この世界に蔓延りませんように。
「レティシア、何を考えている?」
「……いえ。少しだけ、空気が綺麗になった気がして」
アレクシス様は満足げに目を細めると、私の髪を掬い上げ、そこに誓うような深いキスを落とした。
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そこは、国賓のみが立ち入りを許される贅を尽くした空間だった。
「……レティシア、あまり動くな。顔色がまだ優れない」
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彼の大きな手が私の頬を優しく撫で、そのまま耳たぶに指先が触れた。
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「それがダメなんだ。君は自分を後回しにしすぎる」
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「これからは、俺の許可なく一歩も外へ出るな。……いや、俺の目の届かない場所へは行かせない」
低い声で囁かれ、首筋に熱い吐息がかかる。
実家では「ゴミ」のように扱われていた私が、今は「宝物」のように扱われている。そのあまりの幸福に、胸が熱くなった。
一方、その頃。
王都の北端にある、悪臭漂う『死の掃き溜め』と呼ばれる広大なゴミ処理場では、三つの影が泥を啜っていた。
「……嫌。こんなの、私の人生じゃないわ!」
ミランダが、泥と油で真っ黒になった手を震わせて叫ぶ。
かつての豪華なドレスはボロ布となり、今や彼女が纏っているのは、罪人に与えられる粗末な麻袋の服だけだ。
「お、お父様……どうにかしてください。私、こんな汚い場所で一生暮らすなんて耐えられない!」
「黙れ、ミランダ! お前が『聖女』などと嘘をつくから、こんなことになったんだ!」
「なんですって!? お父様だって、公爵家を呪えって言ったじゃない!」
醜い罵り合いを続けるバーンズ元伯爵とミランダ。
彼らには今日から、王都中から集まる排泄物や腐った生ゴミを、素手で分別する「仕事」が与えられていた。
浄化の力など一滴も持たない彼らにとって、その臭気は肺を焼くような苦痛だ。
「おい、サボるな! 早くその肥溜めを片付けろ!」
監視の兵士が振るった鞭が、ミランダの細い背中で唸る。
かつてレティシアに押し付けていた「汚れ」と「蔑み」。それが今、何倍にもなって自分たちに跳ね返ってきているのだと、彼らはまだ気づいていなかった。
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もう二度と、アレクシス様を傷つける汚れが、この世界に蔓延りませんように。
「レティシア、何を考えている?」
「……いえ。少しだけ、空気が綺麗になった気がして」
アレクシス様は満足げに目を細めると、私の髪を掬い上げ、そこに誓うような深いキスを落とした。
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