身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん

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第三章 王都での栄光と、実家の末路

第二十四話 国王からの贈り物

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王都全体を覆っていた不浄な霧が晴れ、空が抜けるような蒼さを取り戻してから三日。
王宮の正殿せいでんでは、一人の少女を称えるための歴史的な儀式が執り行われようとしていた。

並み居る高位貴族たちが左右に整列し、固唾を呑んで見守る中、深紅の絨毯の上をレティシアが歩んでいく。
纏っているのは、王家から贈られた最高級のシルクに、ヴォルフェン公爵家の家紋である銀狼の刺繍が施された特注のドレスだ。一歩歩くごとに、彼女自身から溢れる微かな浄化の光が、宝石のように空中で弾ける。

「レティシア・ヴォルフェン公爵夫人。前へ」

国王の厳かな声が響く。レティシアは玉座の前で、しなやかに跪いた。
そのすぐ後ろには、騎士服に身を包んだアレクシスが、まるで獲物を狙う猛獣のような鋭い視線で周囲を威圧しながら控えている。彼の片手は常に剣の柄に置かれ、誰一人生地を掠めることさえ許さないという執念が漂っていた。

「貴殿は、我が王宮に巣食う古の呪いを払い、地下牢に眠る守護神……地龍を目覚めさせた。さらには王都全土の瘴気を一掃し、民を病の恐怖から救い出した。その功績は、建国以来の奇跡と言っても過言ではない」

国王は、侍従が捧げ持つ黄金のトレイから、大粒の魔石が埋め込まれた勲章くんしょうを手に取った。

「よって、王の名において授与せん。レティシア・ヴォルフェン。貴殿を、我が国の最高位守護職――『国母の守護聖女こくぼのしゅごせいじょ』に任ずる」

その宣言がなされた瞬間、正殿内には割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。
かつて彼女を「無能」と呼び、泥を投げつけた者たちが、今はその栄光に縋ろうと必死に手を叩いている。レティシアは、その光景をどこか遠いことのように感じていた。

「もったいないお言葉にございます、陛下。私はただ、汚れている場所が放っておけなかっただけで……」

「ははは! 無欲なことだ。だが、その純粋さこそが真の力を生むのだろうな。……アレクシス公。貴殿も、これほどまでの宝を手に入れたこと、至上の喜びであろう」

国王の言葉に、アレクシスは眉一つ動かさず、静かに、けれど傲然と答えた。

「……喜びを通り越し、もはや私の命そのものにございます。陛下。……ですから、これ以上、彼女を公務で連れ回すのはお控えいただきたい。私の妻は、王宮の掃除婦ではありません」

「……っ、アレクシス様!」

レティシアが慌てて彼の裾を引くが、アレクシスは平然としている。
国王は苦笑し、「分かっている。彼女をこれ以上疲れさせれば、貴殿にこの国を滅ぼされかねないからな」と冗談めかして言ったが、その瞳は半分以上本気だった。

儀式が無事に終わり、離宮へと戻る馬車の中。
レティシアは胸に飾られた重厚な勲章を見つめながら、小さく息を吐いた。

「なんだ、その顔は。……疲れたか?」

アレクシスが、彼女の体を抱き寄せ、自分の膝の上に乗せる。狭い車内で密着する熱に、レティシアの頬が赤く染まった。

「少しだけ、緊張しました。……でも、アレクシス様がずっと後ろにいてくださったから」

「当たり前だ。……だが、あの『守護聖女しゅごせいじょ』という称号は厄介だな。ますます、君を狙う輩が増える」

アレクシスは、彼女の首筋に顔を埋め、深くその香りを吸い込んだ。
彼の独占欲は、称号を得るごとに加速しているようだった。

「……レティシア。明日はもう、領地へ帰るぞ。こんな不浄な人間が渦巻く場所には、もう一刻も君を置いておきたくない」

「はい。私も、ヴォルフェンのお家が恋しいです」

二人がそんな甘い会話を交わしていた、ちょうどその時。
王都のゴミ山……『死の掃き溜めしのあきだめ』の暗がりで、一人の女が狂ったように土を掘り返していた。

「……ああ、あった……これよ、これさえあれば……!」

ドロドロになった指先が掴んだのは、かつてバーンズ家が秘密裏に隣国から買い叩いた、禁忌の魔導書まどうしょの断片だった。
ミランダの瞳は、もはや正気の色を失い、復讐の炎だけで燃え盛っている。

「見てなさい、レティシア……。あんたが綺麗にしたこの世界を、私が今度こそ、二度と掃除できないほど汚してやるわ……!」

ミランダがその断片を自身の胸に押し当てた瞬間、彼女の周囲のゴミが腐敗を早め、黒い霧が立ち上り始めた。
それは、レティシアの知らないところで育ち始めた、新たな「」の芽だった。

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