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第四章:没落家族の再来と、真の幸福編
第三十八話 お掃除聖女は見逃さない
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「……あう、あ……っ!」
床に撒き散らされた自らの泥に滑り、ミランダは見苦しく這いつくばった。手から離れた毒の瓶が鏡のような床を滑り、アレクシスの足元でカチリと止まる。アレクシスはそれを一瞥することもなく、氷のような冷徹さで踏み砕いた。
「な、私の……私の最後の希望が……!」
「お姉様、それがあなたの『希望』だったのですか? 誰かを傷つけ、汚すことでしか得られない幸せなんて、すぐに腐って消えてしまうのに」
レティシアが静かに、だが凛とした足取りでミランダを見下ろす位置まで歩み寄る。ミランダが顔を上げると、そこにはかつて「無能」と蔑み、家から追い出したはずの妹が、神々しいまでの光を背負って立っていた。
「うるさい、うるさいわよ! あんたに何がわかるの!? 私がどれだけ惨めな思いをしたか……! 王都のゴミ溜めで、毎日、毎日……!」
「ええ、分かります。……今のあなたからは、王都の地下水路よりも、隣国の呪いの心臓よりも、もっとひどい『悪臭』がしていますから」
レティシアは悲しげに目を細め、黄金の箒をゆっくりと構えた。
「その臭いは、外からついた汚れではありません。自分以外のすべてを呪い、憎み、自分だけを正当化し続けた……あなたの『魂の腐敗』です。お姉様、随分と汚れていますね」
「なっ……! 貴様、私を誰だと思って……!」
「今のあなたは、ただの『放置された粗大ゴミ』です。……でも、私はお掃除聖女。どんなに頑固な汚れも、見逃すわけにはいきません」
レティシアが箒を一閃させる。
放たれたのは、これまでの広範囲を洗う光とは違う、対象の「本質」を貫くレーザーのような純白の輝きだった。
「やめて! 来ないで! 私の『怒り』を奪わないで!!」
「いいえ、洗わせていただきます。――聖女の休息・特製洗剤、心魂洗浄!!」
――カァァァァァァッ!!
ミランダの悲鳴をかき消すように、真っ白な光が彼女を包み込んだ。
それはミランダが大切に抱えてきた「他人への憎執」や「虚飾のプライド」を、容赦なく分解し、剥ぎ取っていく。ミランダの脳裏に、幼い頃にレティシアと笑い合ったはずの、汚れのない記憶が無理やり引きずり出される。
「あ、あぁぁ……嫌……私の……私の黒い心が……白く……溶けていく……っ!」
やがて光が収まった時、そこには放心状態で座り込むミランダの姿があった。
彼女の瞳からは濁りが消え、代わりに、自分がしでかしてきた数々の罪への「自覚」という名の絶望が溢れ出していた。
「……私は、なんて……なんて醜いことを……」
「お姉様。汚れが落ちた今のあなたなら、自分の足で歩けるはずです。……刑罰の場所へ、自分から向かってください」
レティシアは、もうミランダに手を差し伸べることはなかった。それは、一人の独立した人間として彼女を突き放す、最大級の「礼儀」だった。
「……終わったな、レティシア」
アレクシスがレティシアの肩を抱き寄せ、冷たく、だが確実な終焉をミランダに告げた。
城の衛兵たちが現れ、力なく項垂れるミランダを連行していく。その足跡は、もう床を汚すことはなかった。
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床に撒き散らされた自らの泥に滑り、ミランダは見苦しく這いつくばった。手から離れた毒の瓶が鏡のような床を滑り、アレクシスの足元でカチリと止まる。アレクシスはそれを一瞥することもなく、氷のような冷徹さで踏み砕いた。
「な、私の……私の最後の希望が……!」
「お姉様、それがあなたの『希望』だったのですか? 誰かを傷つけ、汚すことでしか得られない幸せなんて、すぐに腐って消えてしまうのに」
レティシアが静かに、だが凛とした足取りでミランダを見下ろす位置まで歩み寄る。ミランダが顔を上げると、そこにはかつて「無能」と蔑み、家から追い出したはずの妹が、神々しいまでの光を背負って立っていた。
「うるさい、うるさいわよ! あんたに何がわかるの!? 私がどれだけ惨めな思いをしたか……! 王都のゴミ溜めで、毎日、毎日……!」
「ええ、分かります。……今のあなたからは、王都の地下水路よりも、隣国の呪いの心臓よりも、もっとひどい『悪臭』がしていますから」
レティシアは悲しげに目を細め、黄金の箒をゆっくりと構えた。
「その臭いは、外からついた汚れではありません。自分以外のすべてを呪い、憎み、自分だけを正当化し続けた……あなたの『魂の腐敗』です。お姉様、随分と汚れていますね」
「なっ……! 貴様、私を誰だと思って……!」
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レティシアが箒を一閃させる。
放たれたのは、これまでの広範囲を洗う光とは違う、対象の「本質」を貫くレーザーのような純白の輝きだった。
「やめて! 来ないで! 私の『怒り』を奪わないで!!」
「いいえ、洗わせていただきます。――聖女の休息・特製洗剤、心魂洗浄!!」
――カァァァァァァッ!!
ミランダの悲鳴をかき消すように、真っ白な光が彼女を包み込んだ。
それはミランダが大切に抱えてきた「他人への憎執」や「虚飾のプライド」を、容赦なく分解し、剥ぎ取っていく。ミランダの脳裏に、幼い頃にレティシアと笑い合ったはずの、汚れのない記憶が無理やり引きずり出される。
「あ、あぁぁ……嫌……私の……私の黒い心が……白く……溶けていく……っ!」
やがて光が収まった時、そこには放心状態で座り込むミランダの姿があった。
彼女の瞳からは濁りが消え、代わりに、自分がしでかしてきた数々の罪への「自覚」という名の絶望が溢れ出していた。
「……私は、なんて……なんて醜いことを……」
「お姉様。汚れが落ちた今のあなたなら、自分の足で歩けるはずです。……刑罰の場所へ、自分から向かってください」
レティシアは、もうミランダに手を差し伸べることはなかった。それは、一人の独立した人間として彼女を突き放す、最大級の「礼儀」だった。
「……終わったな、レティシア」
アレクシスがレティシアの肩を抱き寄せ、冷たく、だが確実な終焉をミランダに告げた。
城の衛兵たちが現れ、力なく項垂れるミランダを連行していく。その足跡は、もう床を汚すことはなかった。
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