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世界情勢

第2部 混線する戦線と戦術の“目に見えない”部分――サイバー、ドローン、長期の摩耗

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世界の紛争の風景は、もはや「戦場=前線」という一元的な図式では説明がつかない。従来の砲弾と兵站に加えて、サイバー攻撃や遠隔操作のドローン、偽情報の拡散など、多層的な戦術が日々混じり合っている。年明けのニュースでも、都市部へのミサイルやドローン攻撃の報告、そしてサイバー攻撃の増加が目に付いた。ウクライナではロシアの攻撃が続き、民間施設が損害を受けたとの報道がある。

ここで注目したいのは「目に見える被害」と「見えない圧力」の差だ。砲撃や爆発は瞬時に分かる。だが、市民の生活をじわじわと蝕むのは、停電の頻発、物流の遅延、サプライチェーンの寸断、そして心理的な疲労である。これらの要素は単発の事件としては軽視されがちだが、積み重なると国家の回復力を削る。長期戦になればなるほど、物理的被害以外のコストが効いてくるのが現代の戦争だ。
加えてサイバー空間の戦いが、地政学の最前線になっている。例えば台湾では、インフラを狙った膨大なサイバー攻撃が確認されたという報告がある。病院や銀行、エネルギー関連に対する攻撃が増加しており、これが政策決定や経済に与える影響は無視できない。インフラ攻撃の目的は必ずしも「破壊」だけではなく、混乱を作り出し、判断を遅らせることにある。

ドローンや無人機の利用は、戦術のコスト構造も変えた。安価で大量に使える無人機は、さんざん使えば消耗するが、相手にとって防御コストを上げるには十分だ。長期的には、こうした「低コストで高効果」の兵器は紛争の敷居を下げる。敷居が下がれば局地的な衝突が増えるという単純な論理が成立し、結果として地域の緊張が平常化してしまう。
また、戦争の影響は経済と技術に直結してくる。サプライチェーン上の重要な箇所が攻撃や不安定化にさらされると、半導体やエネルギーの供給に波及する。特に台湾の半導体産業や中東のエネルギー輸出など、グローバルな依存関係が深い分野は脆弱性を抱えやすい。国家は軍事的な道具だけでなく、経済的な抑止や制裁、輸出管理などを使って相手を牽制するようになった。これが“総力戦”的な状態を作る。
一方、同盟国どうしの連携強化にも注目したい。戦術的・技術的に優位に立つために、情報共有や合同演習、武器の共同開発が活発化している。だがここでもジレンマがある。連携を深めるほど、ある国の行動が連鎖反応を呼び起こすリスクが高まる。つまり「強さの連鎖」が逆に予測不能な事態を招く可能性があるのだ。
最後に、市民生活に近いところの話をしておく。紛争の長期化は、外から見ると「ニュース枯れ」を生む。日々のニュースがルーティン化し、見慣れてしまう。だが当事者の生活は疲弊を増すばかりだ。インフラの断続的な損傷や、物価の上昇、労働力の流出といった現実は、徐々に社会の“耐久力”を削る。これは戦争の一側面だが、いずれ復興の費用として全体に跳ね返る。
ここで留保しておくべきは、テクノロジーが万能ではないという点だ。確かに監視や防御の精度は上がり、偵察や対策も高度化している。しかし技術は相手も使う。防御と攻撃の間のいたちごっこは続き、結果として「攻撃のコスト」は下がり、防御のコストは上がる。その非対称性が続く限り、紛争の性質は変わり続けるだろう。
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