死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん

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第25話:シオンの宣戦布告

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アデナウアー家が「宛先不明」の絶望に沈んでいた頃、ルナリア聖教国の王宮では、周辺諸国の使節を招いた盛大な晩餐会が催されていた。

そこには、王国の外交官の姿もあった。彼らの目的はただ一つ。隣国で莫大な富を築いたエルゼを「国家資産を持ち逃げした罪人」として引き渡し要求すること、あるいはその資産を王国へ還流させるよう圧力をかけることだ。

外交官が、壇上のシオンに向かって慇懃無礼に口を開いた。

「シオン殿下。我が国の元公爵令嬢エルゼ・フォン・アデナウアーについてですが、彼女には王宮機密の持ち出しおよび、不当な資産移転の疑いがかかっております。速やかに我が国へ身柄を——」

その言葉が終わる前に、会場の空気が氷結した。

シオンが、隣に座る私の手を優しく、しかし誇示するように取り、立ち上がったのだ。

「面白いことを言うな。我が国の経済を立て直し、多くの民に職を与えた『聖女』を、君たちの無能な身勝手で罪人扱いするか?」

「……ですが、彼女はアデナウアー家の——」

「アデナウアー? そんな家は、君たちの王が既に爵位を剥奪し、平民に落としたはずだ。今の彼女に、君たちの国に従う義理など一分(いちぶ)もない」

シオンの金色の瞳が、獲物を狙う猛禽類のような鋭さで外交官を射抜く。彼は私の腰を引き寄せ、広間に響き渡る声で宣言した。

「諸君、改めて紹介しよう。ここにいるエルゼは、もはや王国の一令嬢ではない。我がルナリア聖教国が誇る『ルナリア中央商会』の長であり、そして——私の最愛の婚約者、次期皇太子妃だ」

広間にどよめきが走る。
王国の外交官は、顔を青ざめさせ、言葉を失った。

「彼女に指一本でも触れようとする者は、我が国の騎士団、そして私自身が全力で叩き潰すと誓おう。……もし彼女の『家族』とやらが、今なお彼女の温情を当てにして汚らわしい手紙を送っているのなら、伝えておけ。次はその首を、不敬罪として国境に晒すことになるとな」

それは、実家と王国に対する事実上の宣戦布告だった。

「……シオン様」

私が彼を見上げると、彼は私だけにわかる、いたずらっぽくも熱い微笑みを返した。
前世では、誰にも守られず、冷たい断頭台に独り立たされた私。
今世では、大陸最強の男が、全世界を敵に回してでも私を守ると叫んでいる。

「聞いたか? 外交官殿。エルゼはもう、君たちが利用できる『便利な道具』ではない。彼女は、この国の太陽だ。……下がれ」

外交官は這々の体で退散していった。
このニュースは、瞬く間に王国へも伝わるだろう。
自分たちが「無能」と切り捨てた娘が、今や自分たちが一生かけても足元に及ばない、強大な国家の母になろうとしている。

その事実こそが、泥水を啜って生きる父や弟たちに、死よりも辛い屈辱を与えるはずだ。

「……ふふ、最高の気分ですわ、シオン様」

私は、彼の胸にそっと顔を埋めた。
復讐は、もう仕上げの段階に入っていた。













定期アナウンス↓

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