役立たずと捨てられた万能建築士、隣国で「聖域」を造って無双する。今さら復興のために戻れ? ご自分たちで瓦礫でも積んでいればよろしいのでは?

しょくぱん

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第三部:知略と闇の胎動

第三十話:崩落のシンフォニー、解体作業開始

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魔城の最深部、暗く冷たい監禁室。私の手首を縛る「吸魔石」の鎖は、絶え間なく私のマナを貪り、城の隅々へと送り届けている。

シグムンド様は、これで私が無力化され、城の維持装置として一生を終えると考えているのでしょう。……本当に、おめでたい方。建築士にとって、建物の構造内にマナを流し込める状況というのは、爆弾の導火線を握っているのと同じだというのに。

「……さあ、始めましょうか。職人の仕事を汚した、その罰則規定を執行いたします」

私は鎖に繋がれたまま、静かに目を閉じた。
私の意識は鎖を伝い、血管のように城内に張り巡らされた「生贄の管」を逆走していく。

見えました。
この城の「構造的急所」。

シグムンド様が無理やり拡張させた三階のバルコニーの支柱。
クロエ様の怨念を動力源にした、無理な増築による重心のズレ。
そして何より、人を礎にしたことで生じている、建材同士の「拒絶反応」。

「共振開始――周波数ヘルツ、破壊目標値へ固定」

私は、吸い取られるマナの波形を微細に調整した。
それは、石が持つ固有の振動数に、わずかな「不協和音」を混ぜる作業。

ズゥゥゥゥ……。

城の地下から、重低音が響き始める。
それは地鳴りではない。城を構成する数百万個の石材が、一斉に「自分たちはこの場所にいたくない」と泣き叫んでいる音だ。

---

その頃、玉座の間。シグムンド様はワイングラスを傾け、勝利の美酒に酔いしれていた。

「ははは! 見ろ、この安定感! アニエスのマナが流れ込んだ途端、城の脈動が力強くなったぞ。これでレアルタ帝国も、あの生意気な皇帝も、俺の足元にひれ伏すのだ!」

「……シグムンド……様……体が……熱い……」

壁に埋め込まれたクロエ様が、苦悶の声を上げる。彼女の肌を流れる魔力が、突如として制御不能なほどに暴走し始めていた。

「何を言っている、クロエ! お前は城の一部だ、もっと喜べ! ……ん? なんだ、この音は……?」

ピシッ。
乾いた音が響いた。
シグムンド様が手に持っていたグラスに、一筋の亀裂が入る。

ピシッ、ピシピシピシッ!

それは連鎖。
玉座の後ろの壁、天井の豪奢なレリーフ、そして足元の磨かれた床。
すべての建材に、まるで蜘蛛の巣のようなひび割れが、凄まじい速度で広がっていく。

「な、なんだ!? 何が起きている! アニエス! アニエスは何をしている!」

「――『定礎ロック』を外して差し上げただけですわ、シグムンド様」

地下から、私の声が城全体に反響した。

「建築とは、重力との対話です。命を喰らい、無理やり形を保っていたこの醜悪な塊に、私は『正しい重力の法則』を思い出させてあげたのです」

「やめろ……やめろぉ! 俺の城が! 俺の国がぁぁ!」

轟音。
ついに三階の外壁が耐えきれず、爆発するように外側へ弾け飛んだ。
支えを失った天井が、スローモーションのようにシグムンド様の上へと降り注ぐ。

私は監禁室の鎖を、マナの共振によって一瞬で粉砕し、立ち上がった。
崩れゆく城の断末魔をBGMに、私は軽やかな足取りで地上への階段を上り始める。

「さあ、お掃除の時間ですわ。……陛下、すぐにお戻りいたしますわね」

第三部、クライマックス。
かつての故郷が完全に更地へと還る、究極の「全自動解体」が今、始まった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!
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