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何人いるんでしょうか
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予報通りに降り始めた雨が、しとしとと街を濡らしている。
そんな音なんて聞こえないのに、「しとしと」なんて表現、誰が考えたんだろう。
細かな粒は周りの音さえ吸収しているようで、地面を叩きつけるうるさい雨と比べると随分優しい。
でも油断していると、傘からはみ出た鞄をびっしょり濡らしていて、結構やっかいな雨だったりする。
今日は木曜日。私はそんな雨の中、塾の帰り道を一人で歩いていた。
歩き方を表現するなら、トボトボかな。決して早くなく、元気がない歩き方。
はっきり言うと、家に帰りたくなかった。
帰ったらたぶん今日は……カオウが求めてくる。
月曜から木曜は勉強があるからしないっていうルールを設けてはいるけれど、タコ焼きパーティーをした土曜日に生理が来てからしてないから、そろそろ聞かれる気がする。
はあ、と深くため息をつく。
正直、生理が来てくれてほっとしていた。
あの気持ちのままそういうことをしたくない。
もうえっちしたくないって言ったらどうなるかな。
たぶん無理矢理してくるんだろうな。
こっちの世界でそれは犯罪だけど、カオウの世界にそんな法律あるんだろうか。あっても、王族は別とか?うーん。ありえる。
そうくよくよ悩んでいるうちに、ついに家に着いてしまった。
どうしよう。入りたくない……と考えながら傘を傾けて、異変に気づく。
車庫に車が入っていた。
兄の車。
「え!?帰ってる!?」
帰るときはいつも事前に連絡をくれるはずなのに、何も聞いていなかった。
どうしよう、同棲してるってバレる。
見つかる前に隠れてくれてるといいけど、人前で平気でキスする人が隠れるなんてしなさそう。
でもでも、家族にはさすがにヤバイって分別くらいはあるよねきっと。そう信じよう。
私は心臓をバクバクさせながら玄関を開けた。
そして愕然とする。
カオウの靴がドドンと置いてあるー!
兄の靴が隣に並んでるー!
いや、まだ彼氏が遊びに来ただけだと言いきることもできる。
落ち着け私!!
とりあえず、二人がどんな雰囲気なのか探るため、そーっと忍び足で近づいた。
中から話し声が聞こえる。
よく聞こえないけれど、口論はしていなさそう。
そっと聞き耳をたてた。
「…………で煮ると旨かったよな」
「そのまま焼く方が旨いよ」
ん? 料理の話?
すごく穏やかじゃない?
まさか兄とも仲良くなってる?
「久々に食べたいなゴルファ」
「今度持ってきてやるよ」
…………ゴルファ? ゴルファって何?
そういえば、レオもゴルファがどうとか言ってた気がする。
どうして兄がその単語知ってるの?
まさか。
嫌な考えが頭の中をぐるぐる回る。
「明日持ってこいよ」
「でも椿は向こうの料理食べたがらないし」
「じゃああいつ抜きで、トキツ誘って三人で食べようぜ」
「それならレオも誘おう」
「カオウがレオと友人になるとか、前世じゃ考えられなかったよな」
兄が前世って言った!
もう決定的!
兄も関係者だ!
驚きすぎて、鞄を落とした。
「椿? 帰ってきたのか?」
物音に気付いた兄の声がして、私が今さら隠れようかどうしようかわたわたしている間にドアが開く。
「た……ただいま」
観念して挨拶すると、兄は気まずそうにおかえりと返した。
「あー……。今の話、聞いてた?」
「うん。兄さんって何者?」
兄はしまったという顔をして、小さく息を吐く。
とりあえず入れと促されたので、渡してくれたタオルで濡れた鞄を拭いて二人が座っていたダイニングの机まで近寄る。
机上にはビール缶が二つ。
完全に二人でくつろいでやがった。
「夕飯済ませてるか?」
「あ、うん。コンビニで買って塾で食べた」
「じゃあビール飲むか?」
「そんなわけないでしょ」
温かいお茶を用意してくれたけれど、それは当たり前のようにカオウの隣に置かれた。
それってもう、私とカオウの関係知ってるってことよね。
なんだか気恥ずかしいなと思いながら、座る前にカオウをちらりと見ると、カオウはお酒が入って上機嫌なのかにこにこしていた。
このかわいい顔に騙されちゃいけないと目を逸らして座る。
「それで、兄さんは何者? カオウと知り合いだったの?」
「俺も前世はカオウの世界の住人だ。お前、本当にまだ思い出してないのか」
しれっと言われて目が点になった。
「ゆ……指輪のこと聞いたとき、知らないって言ってたじゃない」
「お前が思い出すの待ってたんだよ。すぐ思い出すと思ったんだけどな」
呆れた顔でそんなことを言われた。
「前世で兄さんは何だったの?」
「何の因果か、前世でもお前の兄だよ」
「えーと……。私って皇女だよね? ってことは……」
「皇子だ。しかも聞いて驚け、皇帝やってた」
「ぷっ。あはははは。皇帝? 兄さんが皇帝??やだー。すぐ滅びそう」
私がお腹を抱えて笑っていると、兄は「だから思い出す前に言いたくなかったんだよなあ」とつぶやいてビールを一口飲む。
「まあ、そういうことだから。カオウのことは知ってるし、こっちに来た理由も知ってる。お前が向こうの世界へ行きたいなら応援するぞ。王妃に……っ……なるんだろ」
仕返しとばかりに声を押し殺して笑われた。
笑われると腹立つな。
ともかく、異世界へ行く行かないの話はカオウの前でしたくないから話題を変えることにした。
「兄さんって時津さんとも知り合いなの?」
「ああ。大学で知り合った」
「他にもいるの?」
「今のところ俺が会ったことあるのは……」
無言で指折り数えていく。私が知ってるのは、玲央、時津さん、兄、私の四人だけど……。
「七人だな」
「な……七人!?そんなにいるの?」
「時津の奥さんもそうだよ」
「そうだったの!?」
「ああ。思い出せばなんとなくわかるようになるよ。本当に少しも夢とか見ないのか?」
正面からそう聞かれて、私は口ごもった。
少しは思い出している。カオウの恋人だってことは。
それに夢も見てる。今日だって、カオウと私は森で遊んでいた。
だけどそんなこと、カオウには言いたくない。
「何も見てないよ」
カオウの反応が怖くて、私はうつむいて答えた。
「ほんとに何も?」
と隣にいたカオウに肩を捕まれる。
うんと答えると、それまで楽しそうにしていたカオウの顔が明らかに悲しいものへ変化した。
「そっか。……風呂入ってくる」
声も落胆していて。やっぱり思い出して欲しいんだろうなと思い、ちくんと胸が痛む。
「おい、椿」
兄は椅子にもたれていた背を起こして、無意識にカオウの背中を目で追っていた私に顔を近づけた。
「……本当はお前、思い出してるだろ」
「な、何言ってるの?思い出してなんてないよ」
「お前嘘つくとき右肩が上がる癖あるぞ」
「えっ嘘!」
咄嗟に右肩を押さえると、兄は時代劇の悪代官さながらにものすごく悪い顔でにやりと笑った。
「ああ、嘘だ」
「騙したの!?」
「やっぱ思い出してるんだな」
「カオウの恋人だったってことはね。でもそれしか知らない」
「……セ……ティ……は」
「え?」
兄は私の反応を確かめるように何かを言った。でもそれはちゃんと耳に入ってこなかった。
「何か言った?」
「いや、いい」
訝しんで聞き返しても答えてくれない。
変な感じはしたけれど、兄はまた椅子にもたれてビールをあおった。
「それで、行くつもりなんだよな、向こうへ」
嫌な話題だなあと思いながら、両手でコップを包むように持って、お茶を飲む。
「それはまだ決めてない」
「はあ? 決めてないのに同棲してんのか。ふしだら娘め」
「彼女の家に入り浸ってる人に言われたくない」
「俺は社会人だし、親にも挨拶済みだからいいんだよ」
「え。何、結婚するつもりなの?」
「当たり前だろ」
やけにはっきり断言されて、思わずこっちが赤面する。
「まだ兄さん二十五だよね。早くない?」
「それだけ逃したくない相手なんだよ」
「うわ……キモい……」
「うるさい」
ちょっと頬を染める兄は本気で気持ち悪かった。
でも、昔から女の子にモテてた兄さんにそこまで言わせる彼女ってどんな人なんだろうと興味が湧く。
「もしかして前世も恋人だった?」
「それはない!」
ドン! っと拳を握りしめて机を叩く。
「な、なに? どうしたの?」
「なんでもない。お前には関係ないことだ」
「なにそれ、ここまで言っておいて」
「そのうち紹介してやるから」
それきり兄はこの話題には触れなくなった。隠されるとますます気になるけれど、怒らせると恐いから黙っておく。
だけど、誰でも前世と同じ人を選ぶわけではないってことか。
カオウだって、別の人を好きになっていた可能性もあったんだ。
そんな当たり前のことが、やけに印象に残った。
そんな音なんて聞こえないのに、「しとしと」なんて表現、誰が考えたんだろう。
細かな粒は周りの音さえ吸収しているようで、地面を叩きつけるうるさい雨と比べると随分優しい。
でも油断していると、傘からはみ出た鞄をびっしょり濡らしていて、結構やっかいな雨だったりする。
今日は木曜日。私はそんな雨の中、塾の帰り道を一人で歩いていた。
歩き方を表現するなら、トボトボかな。決して早くなく、元気がない歩き方。
はっきり言うと、家に帰りたくなかった。
帰ったらたぶん今日は……カオウが求めてくる。
月曜から木曜は勉強があるからしないっていうルールを設けてはいるけれど、タコ焼きパーティーをした土曜日に生理が来てからしてないから、そろそろ聞かれる気がする。
はあ、と深くため息をつく。
正直、生理が来てくれてほっとしていた。
あの気持ちのままそういうことをしたくない。
もうえっちしたくないって言ったらどうなるかな。
たぶん無理矢理してくるんだろうな。
こっちの世界でそれは犯罪だけど、カオウの世界にそんな法律あるんだろうか。あっても、王族は別とか?うーん。ありえる。
そうくよくよ悩んでいるうちに、ついに家に着いてしまった。
どうしよう。入りたくない……と考えながら傘を傾けて、異変に気づく。
車庫に車が入っていた。
兄の車。
「え!?帰ってる!?」
帰るときはいつも事前に連絡をくれるはずなのに、何も聞いていなかった。
どうしよう、同棲してるってバレる。
見つかる前に隠れてくれてるといいけど、人前で平気でキスする人が隠れるなんてしなさそう。
でもでも、家族にはさすがにヤバイって分別くらいはあるよねきっと。そう信じよう。
私は心臓をバクバクさせながら玄関を開けた。
そして愕然とする。
カオウの靴がドドンと置いてあるー!
兄の靴が隣に並んでるー!
いや、まだ彼氏が遊びに来ただけだと言いきることもできる。
落ち着け私!!
とりあえず、二人がどんな雰囲気なのか探るため、そーっと忍び足で近づいた。
中から話し声が聞こえる。
よく聞こえないけれど、口論はしていなさそう。
そっと聞き耳をたてた。
「…………で煮ると旨かったよな」
「そのまま焼く方が旨いよ」
ん? 料理の話?
すごく穏やかじゃない?
まさか兄とも仲良くなってる?
「久々に食べたいなゴルファ」
「今度持ってきてやるよ」
…………ゴルファ? ゴルファって何?
そういえば、レオもゴルファがどうとか言ってた気がする。
どうして兄がその単語知ってるの?
まさか。
嫌な考えが頭の中をぐるぐる回る。
「明日持ってこいよ」
「でも椿は向こうの料理食べたがらないし」
「じゃああいつ抜きで、トキツ誘って三人で食べようぜ」
「それならレオも誘おう」
「カオウがレオと友人になるとか、前世じゃ考えられなかったよな」
兄が前世って言った!
もう決定的!
兄も関係者だ!
驚きすぎて、鞄を落とした。
「椿? 帰ってきたのか?」
物音に気付いた兄の声がして、私が今さら隠れようかどうしようかわたわたしている間にドアが開く。
「た……ただいま」
観念して挨拶すると、兄は気まずそうにおかえりと返した。
「あー……。今の話、聞いてた?」
「うん。兄さんって何者?」
兄はしまったという顔をして、小さく息を吐く。
とりあえず入れと促されたので、渡してくれたタオルで濡れた鞄を拭いて二人が座っていたダイニングの机まで近寄る。
机上にはビール缶が二つ。
完全に二人でくつろいでやがった。
「夕飯済ませてるか?」
「あ、うん。コンビニで買って塾で食べた」
「じゃあビール飲むか?」
「そんなわけないでしょ」
温かいお茶を用意してくれたけれど、それは当たり前のようにカオウの隣に置かれた。
それってもう、私とカオウの関係知ってるってことよね。
なんだか気恥ずかしいなと思いながら、座る前にカオウをちらりと見ると、カオウはお酒が入って上機嫌なのかにこにこしていた。
このかわいい顔に騙されちゃいけないと目を逸らして座る。
「それで、兄さんは何者? カオウと知り合いだったの?」
「俺も前世はカオウの世界の住人だ。お前、本当にまだ思い出してないのか」
しれっと言われて目が点になった。
「ゆ……指輪のこと聞いたとき、知らないって言ってたじゃない」
「お前が思い出すの待ってたんだよ。すぐ思い出すと思ったんだけどな」
呆れた顔でそんなことを言われた。
「前世で兄さんは何だったの?」
「何の因果か、前世でもお前の兄だよ」
「えーと……。私って皇女だよね? ってことは……」
「皇子だ。しかも聞いて驚け、皇帝やってた」
「ぷっ。あはははは。皇帝? 兄さんが皇帝??やだー。すぐ滅びそう」
私がお腹を抱えて笑っていると、兄は「だから思い出す前に言いたくなかったんだよなあ」とつぶやいてビールを一口飲む。
「まあ、そういうことだから。カオウのことは知ってるし、こっちに来た理由も知ってる。お前が向こうの世界へ行きたいなら応援するぞ。王妃に……っ……なるんだろ」
仕返しとばかりに声を押し殺して笑われた。
笑われると腹立つな。
ともかく、異世界へ行く行かないの話はカオウの前でしたくないから話題を変えることにした。
「兄さんって時津さんとも知り合いなの?」
「ああ。大学で知り合った」
「他にもいるの?」
「今のところ俺が会ったことあるのは……」
無言で指折り数えていく。私が知ってるのは、玲央、時津さん、兄、私の四人だけど……。
「七人だな」
「な……七人!?そんなにいるの?」
「時津の奥さんもそうだよ」
「そうだったの!?」
「ああ。思い出せばなんとなくわかるようになるよ。本当に少しも夢とか見ないのか?」
正面からそう聞かれて、私は口ごもった。
少しは思い出している。カオウの恋人だってことは。
それに夢も見てる。今日だって、カオウと私は森で遊んでいた。
だけどそんなこと、カオウには言いたくない。
「何も見てないよ」
カオウの反応が怖くて、私はうつむいて答えた。
「ほんとに何も?」
と隣にいたカオウに肩を捕まれる。
うんと答えると、それまで楽しそうにしていたカオウの顔が明らかに悲しいものへ変化した。
「そっか。……風呂入ってくる」
声も落胆していて。やっぱり思い出して欲しいんだろうなと思い、ちくんと胸が痛む。
「おい、椿」
兄は椅子にもたれていた背を起こして、無意識にカオウの背中を目で追っていた私に顔を近づけた。
「……本当はお前、思い出してるだろ」
「な、何言ってるの?思い出してなんてないよ」
「お前嘘つくとき右肩が上がる癖あるぞ」
「えっ嘘!」
咄嗟に右肩を押さえると、兄は時代劇の悪代官さながらにものすごく悪い顔でにやりと笑った。
「ああ、嘘だ」
「騙したの!?」
「やっぱ思い出してるんだな」
「カオウの恋人だったってことはね。でもそれしか知らない」
「……セ……ティ……は」
「え?」
兄は私の反応を確かめるように何かを言った。でもそれはちゃんと耳に入ってこなかった。
「何か言った?」
「いや、いい」
訝しんで聞き返しても答えてくれない。
変な感じはしたけれど、兄はまた椅子にもたれてビールをあおった。
「それで、行くつもりなんだよな、向こうへ」
嫌な話題だなあと思いながら、両手でコップを包むように持って、お茶を飲む。
「それはまだ決めてない」
「はあ? 決めてないのに同棲してんのか。ふしだら娘め」
「彼女の家に入り浸ってる人に言われたくない」
「俺は社会人だし、親にも挨拶済みだからいいんだよ」
「え。何、結婚するつもりなの?」
「当たり前だろ」
やけにはっきり断言されて、思わずこっちが赤面する。
「まだ兄さん二十五だよね。早くない?」
「それだけ逃したくない相手なんだよ」
「うわ……キモい……」
「うるさい」
ちょっと頬を染める兄は本気で気持ち悪かった。
でも、昔から女の子にモテてた兄さんにそこまで言わせる彼女ってどんな人なんだろうと興味が湧く。
「もしかして前世も恋人だった?」
「それはない!」
ドン! っと拳を握りしめて机を叩く。
「な、なに? どうしたの?」
「なんでもない。お前には関係ないことだ」
「なにそれ、ここまで言っておいて」
「そのうち紹介してやるから」
それきり兄はこの話題には触れなくなった。隠されるとますます気になるけれど、怒らせると恐いから黙っておく。
だけど、誰でも前世と同じ人を選ぶわけではないってことか。
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そんな当たり前のことが、やけに印象に残った。
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第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
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