TRACKER

セラム

文字の大きさ
152 / 172
番外編②後編 - GOLEM / SHADOW編

番外編②-15 – 上司

しおりを挟む
「(ここは……D–3ビル地下4階の麻薬オークションが行われた会場か)」

 藤村はステージ中央に佇み、ヴィンヤード形式のコンサートホール360度を見渡す。すると会場の照明から成される影から突如、複数のSHADOWが形成されて藤村に話しかける。

「あの2人、置いてきて大丈夫?」
「あぁ?」

 藤村は大量のSHADOWを観察しながら答える。

「あの2人、確実にGOLEMに殺されるよ? 分かってたんだろう? "第六感シックス"使ってたみたいだし」

 藤村はSHADOWの言葉を聞いた瞬間に鼻で笑って脱力し、煙草とライターを取り出して煙草に火をつけ、口に咥える。煙草を数回、ふかした後に複数のSHADOWたちにその煙草を向けながらニッと笑って告げる。

「あいつらは負けねー。あんまり俺の部下をなめんなよ?」

––––ゴゴゴゴ……

 藤村とSHADOWは互いにサイクスの出力を上げる。

「良い上司のフリ?」

 SHADOWの小馬鹿にした質問に対して藤村は返答する。

「バーカ、良い上司なんだよ」
「はっ、面白い冗談」

 大量のSHADOWが藤村に向けて襲いかかる。

––––数秒後

「(一体……何が起こった…… ?)」

 SHADOWは藤村との問答を終えたその僅か数秒後、"深淵の入り口ブラック・フォレスト"によって創り出した自身の影による分身34体が消え去った。

「(この僅か一瞬で? 30体以上を創り出したんだぞ!?)」

––––ピッ

 その時、SHADOWの仮面の頬をサイクスのエネルギー弾が掠めてそこからパラパラと破片がこぼれ落ちる。その銃弾は仮面の中のSHADOWの頬に達しており、鋭い痛みがSHADOWに走り、そこから流れる血の感触が仮面の中のSHADOWの頬を伝う。
 
 SHADOWは銃弾が飛んできた方向、即ち藤村の方を見る。

「おいおい、真面目に撃ってたら今ので死んでたぞ? お前」

 余裕の表情で笑みを浮かべる藤村がSHADOWを挑発する。

「期待して本体は後回しにしてたのに、こんなんじゃあ期待外れも良いところだぞ?」

 藤村は1度言葉を切り、右手に持った"八方美人トランスフォーマー"の銃口を向けながら左手で咥えていた煙草を口元から外し、煙を吐いて再び話し始める。

「俺を楽しませてみろよ。不協の十二音さんよ。何も一方的に楽しむのがお前らの専売特許ってわけじゃないんだぜ?」

 藤村のサイクスと捉えきれなかった彼の動きにたじろぎながらもそれ以上に藤村のその余裕に満ちた態度に怒りを覚えたSHADOWはステージ以外の照明を消し去る。

「安心しろよ。他にもリソースを割いてた分、フルパワーじゃないんだよ」

––––"深淵の入り口ブラック・フォレスト"解除……!

 SHADOWは藤村に対して全力で臨むためにD–1ビル、D–2ビル、本部ビルなど、これまで"深淵の入り口ブラック・フォレスト"を発動していた場所を解除する。
 それと同時にD–2ビルに突如6階が出現し (それまで5階までしかD–2ビルには存在していなかった)、別空間へと飛ばしてかくまっていたDEEDの残党が出現する。(彼らは何が起こったのか理解できずに軽いパニックとなり、脱出のために階下へと向かう途中に花の"第六感シックス"に検知された)

「(藤村の超能力に関する情報収集? 冗談じゃない! 本気でやらなきゃこっちが殺される……!)」

 SHADOWが全力で藤村を殺しにかかろうと決めた瞬間である。

 藤村はそんなSHADOWに対しても自分のペースを崩さず、"八方美人トランスフォーマー"を1度ホルスターに収納し、スーツの左の内ポケットからシリンダータイプの携帯灰皿に煙草をしまう。

「やけに余裕だね」

 藤村は携帯灰皿を再び内ポケットにしまって新たな煙草に火をつけながら返答する。

「その辺に吸い殻を捨てんなってうるさいんだよ」
「現場で煙草吸ってるくせに何言ってんだか」

 藤村はライターの蓋をキンッと音を立てながら閉めた後に答える。

「こりゃ1本取られたね」

 藤村が言い終わらないうちにSHADOWは強力なサイクスを纏い、その周辺に影が渦巻く。

「さて、この煙草を俺が吸い終わるまでお前は耐えられるかな?」

 藤村はSHADOWを挑発するかのように言い放つ。

#####

「はい、こちら月島。花さんどうされましたか?」

 愛香は花からの着信を取って応答する。

「愛香、第三地区高等学校職員の身体刺激型超能力者は既にリスト化してあるのよね?」
「はい」

 愛香はPCから第3地区高等学校のデータを検索しながら自身の記憶の中からリストを浮かべる。

「その中で政府に届出をしていない者は?」
伊藤いとう かい内倉うちくら 祥一郎しょういちろうひがし 寿人ひさと窪田くぼた らん浮田うきた 涼子りょうこ門田かどた さくらの6人です」

 愛香は花の質問に対して即答する。

「OK。その6人の名前、私の端末にも送っておいて」

 その時、範囲を広げておいた"第六感シックス"がDEEDの残党を花の近くで検知した。

「(チッ、面倒ね)」

 花は愛香にGOLEMに対して"私とあなたの秘密シークレット・フェイス"が発動しなかったことからGOLEMは第三地区高等学校の職員である可能性が高いことを説明する。

「愛香、今挙げてくれた6人の現在の居所を至急確認して! 私は突然出現したDEEDの残党を片付けながら情報収集に取り掛かる」
「了解」

 愛香は電話を切った後に玲奈に経緯を説明する。

「学校機関は既に夏季休業に入っていて今日は土曜。職員の数は少ないわね」

 愛香は記憶の中から部活動の顧問を務める職員をピックアップする。更に瑞希が高校から配布されたデータの中から8月17日に活動している部活動を特定する。

「伊藤、浮田、門田、内倉の4人は部活動の顧問を務めていて、伊藤と浮田が務めるサッカー部と吹奏楽部は今日活動してる」

 その時、愛香と玲奈の背後から杉本が声をかける。

「月島さんさんは第三地区高校へ連絡して該当する2人が学校に来ているのかを確認。坂口さんは管理委員会にこの事を連絡して残り4人の登録IDへのアクセス許可申請をして下さい」
「了解です」

 玲奈は直ぐさま管理委員会に連絡を入れに行く。

「月島さん、内倉祥一郎は妹さんが籍を置いている1年1組の担任の方ですね?」
「はい、そうです」
「恐らく妹さんは内倉先生の緊急連絡先をお持ちですね? そのデータ、月島さんはお持ちですか?」
「はい。私のプライベート端末の方に」
「僕の端末に送信して下さい」

 愛香は直ぐに杉本の端末にデータを送信する。

「どうもありがとう。ここからそう遠くないですね。僕は内倉先生を尋ねましょう」

 杉本は愛香の不安そうな表情を察して告げる。

「月島さんは高校への連絡を優先して下さい」

 杉本はそう言うと部屋を後にした。

 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。 借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー カクヨムでも連載しております。

処理中です...