文字サイズ
小
中
大
特大
28 / 138
【第2章】
■第28話 : 種明かし②
優司がポケットから取り出したモノを見て、戸惑いを隠せない真鍋。
「な、何……?
セ、セロテープ……?」
「そう、今回の勝因はコイツにあるんだ。
閉店間際に、台の横の開閉する部分にコイツを貼り付けておけば、当日の朝に破れたり剥がれてたり、なくなってたりしたら台を開けた可能性が高いってことになるでしょ?」
「あっ……」
この瞬間、常に怪訝そうにしていた真鍋の顔から険が取れていった。
抱え続けていた謎が、一気に氷解したように。
「お前が朝、なかなか座る台を決めなかったのは、セロテープの有無を確認してたからか」
「そういうこと」
セロテープを手のひらにのせながら、優司が解説を続ける。
「これのおかげで、俺は大分余裕を持って勝負できたよ。
なにせ、設定変更台が丸分かりだからね。
そのためにわざわざ旧台コーナーを選んだんだ。
旧台コーナーは、ほとんどが6か1かって配分だからね。
台を開けた形跡があったってことは、6を1に変えたか、1を6に変えたかのどっちかってことになるでしょ?」
「……旧台コーナーの全台にテープを貼り付けたってのか?」
「ああ。このセロテープ判別が通用するかどうか、3日ほどかけて検証してたんだけど、その時はさすがに一部の台にしか仕掛けなかった。
でも昨日は、イチかバチか全台に貼らせてもらったよ。
少しでも偶然の要素を取り除きたかったからね。
このホールは極力人件費を削ってるホールだから、台が細工されてるかどうかのチェックも比較的甘いと思ったんだ」
「……」
奥歯を噛み締めながら、悔しそうに優司を睨みつける真鍋。
「なるほど……。
確かに、今日この場でその戦略を使いこなしたのはすげぇ。それは認める。
でもな、もし設定師のきまぐれで、台拭きやら試し打ちやらを始めたらどうするつもりだったんだ?
そうなったら台は無作為に開けられちまうわけだから、もう見抜く術はないだろ?
それだけじゃない。テープの粘着なんざ、何かの拍子で剥がれちまうことだってある」
真鍋は、湧き上がる疑問を立て続けにぶつけてきた。
だが、優司は涼しい顔で答える。
「誰も、100%完璧な戦略だったなんて言ってないよ。
当然、そういう不測の事態だってありえる。そんなことはわかってた。
でもあんたみたいに、こんな読みにくいホールでただバカ正直に台読みをかけたところで、6をツモる確率は3回に1回ってとこでしょ?
不測の事態を考慮しても、今回のテープ判別の方が遥かに成功する確率が高いと踏んだんだよ」
優司の反論を聞き、またもや黙りこくる真鍋。
付け入る隙が無く、口を閉じるしかない、といった様子だ。
優司が続ける。
「さっきは、偶然なんかじゃなく実力で6を取った、みたいなこと言ったけど、確かにある意味偶然かもね。
あのバイト募集の張り紙に気づいたのは運が良かったよ。それは認める」
あとは、俺が絶対に負けられない状況だった、ってのもあるね。
その執念が、土壇場でこんな手段を思い付く原動力になったんだと思う。
なにしろ、負けたら俺は終わりだったから
……まあとにかく、いろいろと俺に有利な要素があったことは確かだと思うよ」
少し考えこむような素振りを見せた後、かぶりを振ってから真鍋が言葉を発する。
「謙遜すんなよ。
これはお前の実力だ。
今回の勝負、完全に俺の負けだ。完敗だよ。
多分、もう一度勝負しても俺はお前に勝つことはできねぇと思う。
俺は、あんまし人のことを認めたりはしねぇんだけど、今回ばっかりは認めざるを得ないよな。
お前は大した奴だよ。
……いろいろと蔑むようなこと言って悪かったな」
前回の日高との勝負と同様の展開だった。
心底自分の負けを悟ると、真鍋は素直にその負けを受け入れた。
しかし、まさか真鍋までもがこうもあっさりと負けを認め、さらに自分を打ち負かした相手を褒め称えるとは予想していなかった優司。
これにはさすがに面食らった。
続けて真鍋が口を開く。
「結局、俺の目論見はまんまと失敗したんだな。
お前に勝てば、アイツとも元に戻れると思ったんだけどな……」
「それって……」
日高とのことを言おうとしている。
そう感じて、言葉をかけようとしたその時だった。
「あの……夏目君。もう話は終わったッスか……?」
不意に後ろから声をかけられた。
「な、何……?
セ、セロテープ……?」
「そう、今回の勝因はコイツにあるんだ。
閉店間際に、台の横の開閉する部分にコイツを貼り付けておけば、当日の朝に破れたり剥がれてたり、なくなってたりしたら台を開けた可能性が高いってことになるでしょ?」
「あっ……」
この瞬間、常に怪訝そうにしていた真鍋の顔から険が取れていった。
抱え続けていた謎が、一気に氷解したように。
「お前が朝、なかなか座る台を決めなかったのは、セロテープの有無を確認してたからか」
「そういうこと」
セロテープを手のひらにのせながら、優司が解説を続ける。
「これのおかげで、俺は大分余裕を持って勝負できたよ。
なにせ、設定変更台が丸分かりだからね。
そのためにわざわざ旧台コーナーを選んだんだ。
旧台コーナーは、ほとんどが6か1かって配分だからね。
台を開けた形跡があったってことは、6を1に変えたか、1を6に変えたかのどっちかってことになるでしょ?」
「……旧台コーナーの全台にテープを貼り付けたってのか?」
「ああ。このセロテープ判別が通用するかどうか、3日ほどかけて検証してたんだけど、その時はさすがに一部の台にしか仕掛けなかった。
でも昨日は、イチかバチか全台に貼らせてもらったよ。
少しでも偶然の要素を取り除きたかったからね。
このホールは極力人件費を削ってるホールだから、台が細工されてるかどうかのチェックも比較的甘いと思ったんだ」
「……」
奥歯を噛み締めながら、悔しそうに優司を睨みつける真鍋。
「なるほど……。
確かに、今日この場でその戦略を使いこなしたのはすげぇ。それは認める。
でもな、もし設定師のきまぐれで、台拭きやら試し打ちやらを始めたらどうするつもりだったんだ?
そうなったら台は無作為に開けられちまうわけだから、もう見抜く術はないだろ?
それだけじゃない。テープの粘着なんざ、何かの拍子で剥がれちまうことだってある」
真鍋は、湧き上がる疑問を立て続けにぶつけてきた。
だが、優司は涼しい顔で答える。
「誰も、100%完璧な戦略だったなんて言ってないよ。
当然、そういう不測の事態だってありえる。そんなことはわかってた。
でもあんたみたいに、こんな読みにくいホールでただバカ正直に台読みをかけたところで、6をツモる確率は3回に1回ってとこでしょ?
不測の事態を考慮しても、今回のテープ判別の方が遥かに成功する確率が高いと踏んだんだよ」
優司の反論を聞き、またもや黙りこくる真鍋。
付け入る隙が無く、口を閉じるしかない、といった様子だ。
優司が続ける。
「さっきは、偶然なんかじゃなく実力で6を取った、みたいなこと言ったけど、確かにある意味偶然かもね。
あのバイト募集の張り紙に気づいたのは運が良かったよ。それは認める」
あとは、俺が絶対に負けられない状況だった、ってのもあるね。
その執念が、土壇場でこんな手段を思い付く原動力になったんだと思う。
なにしろ、負けたら俺は終わりだったから
……まあとにかく、いろいろと俺に有利な要素があったことは確かだと思うよ」
少し考えこむような素振りを見せた後、かぶりを振ってから真鍋が言葉を発する。
「謙遜すんなよ。
これはお前の実力だ。
今回の勝負、完全に俺の負けだ。完敗だよ。
多分、もう一度勝負しても俺はお前に勝つことはできねぇと思う。
俺は、あんまし人のことを認めたりはしねぇんだけど、今回ばっかりは認めざるを得ないよな。
お前は大した奴だよ。
……いろいろと蔑むようなこと言って悪かったな」
前回の日高との勝負と同様の展開だった。
心底自分の負けを悟ると、真鍋は素直にその負けを受け入れた。
しかし、まさか真鍋までもがこうもあっさりと負けを認め、さらに自分を打ち負かした相手を褒め称えるとは予想していなかった優司。
これにはさすがに面食らった。
続けて真鍋が口を開く。
「結局、俺の目論見はまんまと失敗したんだな。
お前に勝てば、アイツとも元に戻れると思ったんだけどな……」
「それって……」
日高とのことを言おうとしている。
そう感じて、言葉をかけようとしたその時だった。
「あの……夏目君。もう話は終わったッスか……?」
不意に後ろから声をかけられた。
感想 6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!