ゴーストスロッター

クランキー

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【第2章】

■第28話 : 種明かし②

優司がポケットから取り出したモノを見て、戸惑いを隠せない真鍋。

「な、何……?
 セ、セロテープ……?」

「そう、今回の勝因はコイツにあるんだ。
 閉店間際に、台の横の開閉する部分にコイツを貼り付けておけば、当日の朝に破れたり剥がれてたり、なくなってたりしたら台を開けた可能性が高いってことになるでしょ?」

「あっ……」

この瞬間、常に怪訝そうにしていた真鍋の顔から険が取れていった。
抱え続けていた謎が、一気に氷解したように。

「お前が朝、なかなか座る台を決めなかったのは、セロテープの有無を確認してたからか」

「そういうこと」

セロテープを手のひらにのせながら、優司が解説を続ける。

「これのおかげで、俺は大分余裕を持って勝負できたよ。
 なにせ、設定変更台が丸分かりだからね。
 そのためにわざわざ旧台コーナーを選んだんだ。
 旧台コーナーは、ほとんどが6か1かって配分だからね。
 台を開けた形跡があったってことは、6を1に変えたか、1を6に変えたかのどっちかってことになるでしょ?」

「……旧台コーナーの全台にテープを貼り付けたってのか?」

「ああ。このセロテープ判別が通用するかどうか、3日ほどかけて検証してたんだけど、その時はさすがに一部の台にしか仕掛けなかった。
 でも昨日は、イチかバチか全台に貼らせてもらったよ。
 少しでも偶然の要素を取り除きたかったからね。
 このホールは極力人件費を削ってるホールだから、台が細工されてるかどうかのチェックも比較的甘いと思ったんだ」

「……」

奥歯を噛み締めながら、悔しそうに優司を睨みつける真鍋。

「なるほど……。
 確かに、今日この場でその戦略を使いこなしたのはすげぇ。それは認める。
 でもな、もし設定師のきまぐれで、台拭きやら試し打ちやらを始めたらどうするつもりだったんだ?
 そうなったら台は無作為に開けられちまうわけだから、もう見抜く術はないだろ?
 それだけじゃない。テープの粘着なんざ、何かの拍子で剥がれちまうことだってある」

真鍋は、湧き上がる疑問を立て続けにぶつけてきた。

だが、優司は涼しい顔で答える。

「誰も、100%完璧な戦略だったなんて言ってないよ。
 当然、そういう不測の事態だってありえる。そんなことはわかってた。
 でもあんたみたいに、こんな読みにくいホールでただバカ正直に台読みをかけたところで、6をツモる確率は3回に1回ってとこでしょ?
 不測の事態を考慮しても、今回のテープ判別の方が遥かに成功する確率が高いと踏んだんだよ」

優司の反論を聞き、またもや黙りこくる真鍋。
付け入る隙が無く、口を閉じるしかない、といった様子だ。

優司が続ける。

「さっきは、偶然なんかじゃなく実力で6を取った、みたいなこと言ったけど、確かにある意味偶然かもね。
 あのバイト募集の張り紙に気づいたのは運が良かったよ。それは認める」
 あとは、俺が絶対に負けられない状況だった、ってのもあるね。
 その執念が、土壇場でこんな手段を思い付く原動力になったんだと思う。
 なにしろ、負けたら俺は終わりだったから
 ……まあとにかく、いろいろと俺に有利な要素があったことは確かだと思うよ」

少し考えこむような素振りを見せた後、かぶりを振ってから真鍋が言葉を発する。

「謙遜すんなよ。
 これはお前の実力だ。
 今回の勝負、完全に俺の負けだ。完敗だよ。
 多分、もう一度勝負しても俺はお前に勝つことはできねぇと思う。
 俺は、あんまし人のことを認めたりはしねぇんだけど、今回ばっかりは認めざるを得ないよな。
 お前は大した奴だよ。
 ……いろいろと蔑むようなこと言って悪かったな」

前回の日高との勝負と同様の展開だった。

心底自分の負けを悟ると、真鍋は素直にその負けを受け入れた。

しかし、まさか真鍋までもがこうもあっさりと負けを認め、さらに自分を打ち負かした相手を褒め称えるとは予想していなかった優司。
これにはさすがに面食らった。

続けて真鍋が口を開く。

「結局、俺の目論見はまんまと失敗したんだな。
 お前に勝てば、アイツとも元に戻れると思ったんだけどな……」

「それって……」

日高とのことを言おうとしている。
そう感じて、言葉をかけようとしたその時だった。

「あの……夏目君。もう話は終わったッスか……?」

不意に後ろから声をかけられた。 
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