ゴーストスロッター

クランキー

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【第2章】

■第30話 : まあ、いいんだけどね【第2章 完】

「ピピピピピピッ」

午前8:30。
けたたましく鳴る目覚まし。
その音に反応してムクリと体を起こし、けだるそうに目覚ましを止める優司。

そこは、カプセルホテルの一室だった。

(そっか。昨日は久しぶりにカプセルに泊まったんだっけ。
 とりあえず、金の心配もなくなったし)

そう考えながら、枕元にある現金を手にとった。
総額約60万円。
もともとのタネ銭+真鍋との勝負での勝利金である。

(そうだ、早く日高に連絡入れないと。
 いろいろ報告もしないといけないしな)

本来なら、勝負終了後すぐにでも日高に連絡すべきだったが、真鍋と日高とのわだかまりを解消してやれなかったことが負い目となり、連絡できずにいた。

小島に、「明日は必ず日高に連絡を入れるから」と伝えて帰ってしまったのだ。

本当にあのまま真鍋を帰してしまってよかったのか?
説得する方法は、もっと他にあったんじゃないか?

そんな思いが頭を駆け巡り、罪悪感がどんどん膨らんでくる。

(はぁ、くそっ……
 でも、このまま悩み続けててもしょうがないか。
 とりあえず、日高に電話しに行こう……)

浮かない表情のまま、カプセルホテルのチェックアウトへと向かった。



◇◇◇◇◇◇



「もしもし、夏目か?」

勢いよく聞こえてくる日高の声。
優司は、公衆電話から日高の携帯に電話をかけていた。

「あ、ああ。よ、よくわかったね」

「あのなぁ、今どき公衆電話からかけてくんのはお前くらいだっつーの!
 ったく、連絡おせーよ!」

「わ、わるい……。ちょっと疲れててさ」

「まあいいや。
 とりあえず、今日の夜7時からいつもの店で飲みだから!
 お前も絶対来いよな! そこでいろいろ話聞くよ!」

「ああ、わかった。7時ね」

「おお! じゃあ待ってっから!」

「うん、それじゃあ」

そう言って電話を切る優司。

(はぁ……
 今の明るい声からして、真鍋のことをなんか期待されてたりするんかなぁ……)

妙な日高のハイテンションが気になった。



◇◇◇◇◇◇



約束の時間をちょっとオーバーした19:20。

優司は、憂鬱な面持ちでいつもの居酒屋へ向かっていた。
普段は楽しい気分で向かうはずの店なのに。

(日高は、俺のことをしっかりと考えてくれてた。
 でも、俺はそんな日高に何もしてやれなかったんだよな……)

申し訳ない気持ちでいっぱいになり、自分の不甲斐なさをつくづく痛感していた。

冴えない表情のまま約束の店へ到着する。
変な緊張感を持ちながら、日高たちを探した。

「おーい! ここ! ここ!」

前方から、聞きなれた声が聞こえてくる。
声のする方へ進むと、そこには4人の男がいるのが見えた。

日高にヒデに小島。

そして、もう一人……

「えッ?」

もう一人の男を見て、優司は素っ頓狂な声を上げた。

「よお! 遅かったな夏目」

「ま、ま、真鍋……だよね……?」

「あん? 確認するまでもないだろうよ。
 昨日の今日で、早速俺の顔を忘れちまったってのか?」

なんとそこにいたのは、昨日まで勝負していた相手、真鍋遼介だった。

まったくもって状況が飲み込めない優司。

そんな様子を見て、日高が口を開く。

「何固まってんだよ!
 とりあえず座れって!」

「い、いや、でもさ、なんで真鍋がここに……?」

この質問に、真鍋が上機嫌で勢いよく答える。

「なぁに細かいこと言ってんだよ!
 そんなことはどうでもいいじゃねぇか!
 まあ座れよ! 飲もうぜ!」

「……」

ここで、日高が口をはさむ。

「びっくりしただろ?
 でも、それは俺も同じだよ。
 昨日の深夜、いきなり遼介から電話がきてな。『細かいことは忘れて、また一緒に飲もうぜ!』なんて言ってきやがってよ。ったく、もっと早くそこに気づけってんだよな!」

嬉しくてたまらない、といった表情の日高。

日高の言葉をキョトンとしたまま聞いている優司を見て、真鍋が軽快に話しだす。

「まあ、そんな深く考えることじゃねぇよ。
 結局は、お前が最後に言った言葉が心に刺さってさ。
 『大人になるって面倒くせぇ、ガキになった方が楽だ』みたいな言葉がさ」

「あ、あれが……?」

「おう。
 まあ、お前の言う通りだよな。細かいこと気にしてても面倒くせぇよ!
 どうせ人なんて100年足らずで死んじまうんだしな!
 無駄な意地張っててもしょうがねぇんだって! ハハハハッ!」

能天気な笑顔を見せる真鍋。

それを受け、日高・ヒデ・小島の3人も心からの笑顔を浮かべて楽しそうにしている。

嬉しさ・驚き・意外さ、様々な思いが絡み合い、いまだ席に座ることなく立ち尽くしながら言葉を絞り出す優司。

「な、なんなんだよみんなして……
 俺が一人で悩んでたのがバカみたいじゃんよ……」

ネガティブな言葉に聞こえるが、優司の表情は意外に明るい。

そんな優司を見ながら、真鍋が笑顔で話しかける。

「まあまあ、とにかく一件落着したんだし、いいんじゃねぇ?
 ほら、座れって! 今日は俺がオゴるからよ!
 好きなだけ飲んでくれよ、夏目!」

屈託のない笑顔で優司に酒をすすめる真鍋。

(……まあ、いいんだけどね)

優司はそう心の中で呟き、頬を緩めた。 



【第2章 完】
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