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【第4章】
■第64話 : 勝負相手不在
「はぁ……またどん詰まりかよ……」
しみじみと呟く優司。
小島が慌ててフォローに入る。
「いや……。
まあ、しょうがないんじゃないっスかね?
北条や大石にまで勝ったんじゃあ……」
「そんなことはわかってるけどさぁ。
それ言い出したら、もう俺のスロ生活は終わりってことだよ?
俺と対等に闘える人間が相当限られてくるわけだし」
「……」
2004年11月28日、22:30。
場所はいつもの串丸。
優司は、珍しく小島と二人っきりで飲んでいた。
◇◇◇◇◇◇
八尾に勝ったことにより、都合9連勝となった優司。
もちろん、その後は今まで以上に勝負相手探しが難航した。
もはや、マグレ勝ちを狙うスロッターなどいなかったのだ。
そんな希薄な勝率に、30万円という大金を賭ける愚かな人間はそうそういない。
『夏目相手にマグレじゃ勝てない』が通説となり、かなり腕のあるスロッターですら勝負を避ける状態となってしまった。
そんな中、意を決して勝負を受けた人間もいた。
『パーラー桜』を根城として立ち回る凄腕スロッター、北条。
優司からの再三の依頼に、ようやく重い腰をあげて勝負することを決意した。
そして、一度の引き分けを挟んだ後、北条が敗北。
一般的な評価では『北条は広瀬より下』とされていたので、当然の結果でもあった。
そして、次の勝負相手は、グループには属さずピンで動いている大石という男。
北条以上に名の知れているスロッターだった。
特に毎月の収支に定評があり、2年以上にわたり「月80万」のプラスを下回ったことがないという噂が流れていた。
つまり、年収1000万プレーヤーということ。
そんな大石から、「夏目優司と勝負したい」と直々の申し出があった。
相当手強い相手だけに、日高や真鍋たちは勝負しないように引き止めたが、今回は相手からの申し出ということもあったし、逃げるのも不恰好だという優司の主張に日高たちが引き下がり、そのまま勝負成立となった。
今までは肩書きなどには興味のなかった大石。
だからこそ、気ままに一人で立ち回って喰っていた。
しかし、急激に『夏目優司』の名がこの街に広まっていた為、ついついちょっとした対抗心・名誉欲・自己顕示欲に駆られて自ら勝負を挑んでしまったのである。
この勝負は熾烈を極めた。
なんと、6連続の引き分け。
しかも、双方6をツモり続けての。
勝敗の偶然性を減らすため、「開店時から1時間の間だけは台移動可能」という特別ルールが加わったことにより勝負が長引いたのだ。
2回引き分けるごとに勝負ホールを変えたのだが、互いにホール情報収集能力がハンパではなく、二人とも細部までしっかりと調べ上げていたため、ホール変更はあまり意味を成さなかった。
設定変更パターン・曜日ごとの設定の入れ方のクセ・各ホールの力を入れている機種などなど、これらの情報を互いに完全に把握していたのだ。
長引いた結果、ようやく7日目に優司の勝利。
いつどちらが負けてもおかしくない、ギリギリの勝負だった。
こうして優司は、スロ激戦区であるこの街で、名実ともにトップスロッターの一員へと登りつめることに成功した。
もはや、勝負が成立する相手はかなり限られていたのである。
◇◇◇◇◇◇
ビール片手に頭を抱える優司に対し、勝負を受けてくれそうな人間を思いつくままに列挙する小島。
「こうなってくると、勝負が成立しそうなのは乾さんと神崎さんくらいしかいないと思うんスよねぇ……。
でも、さすがにそれは……」
その言葉を聞き、優司が露骨に不快そうな声を出す。
「……小島、前から聞こうと思ってたんだけど、なんでそんなに乾とか神崎にビビるんだ?
俺が負けるとでも思ってんの?」
「いや……えーっと…………。
す、すいません、正直、勝てるイメージはまったく湧かないっス……」
「……」
あからさまに不満げな表情を浮かべる優司。
「あ!
で、でも、かといって夏目君が負けるイメージも湧かないんスけどッ!」
「どっちだよ……」
「あ、あのッ……なんていうかその……」
「もういいよ。無理すんなって。
要は、俺がまだその二人のレベルには届いてないって思ってんだろ?」
「……」
「まあ、こればっかりは結果で示すしかないな。」
「え……?
まさか、乾さんか神崎さんに勝負吹っかけるつもりッスか……?」
「やむを得ないだろ。もうこの街じゃ、彼ら以外に相手はいないんだし。
それに、このまま小島にナメられっぱなしってのもなぁ?」
「い、いや、別にナメてるわけじゃ……」
「まあ、いいけどさ」
しばらく沈黙が続く。
沈黙に耐えかねたのか、小島が再び口を開いた。
「で、でも、日高さんとかもあの二人との勝負は避けるようにって言ってたんスよね?」
「……ああ、おかげで昨日は日高と大ゲンカだよ」
そう言って、昨日の日高たちとのやりとりを小島に語りだした。
しみじみと呟く優司。
小島が慌ててフォローに入る。
「いや……。
まあ、しょうがないんじゃないっスかね?
北条や大石にまで勝ったんじゃあ……」
「そんなことはわかってるけどさぁ。
それ言い出したら、もう俺のスロ生活は終わりってことだよ?
俺と対等に闘える人間が相当限られてくるわけだし」
「……」
2004年11月28日、22:30。
場所はいつもの串丸。
優司は、珍しく小島と二人っきりで飲んでいた。
◇◇◇◇◇◇
八尾に勝ったことにより、都合9連勝となった優司。
もちろん、その後は今まで以上に勝負相手探しが難航した。
もはや、マグレ勝ちを狙うスロッターなどいなかったのだ。
そんな希薄な勝率に、30万円という大金を賭ける愚かな人間はそうそういない。
『夏目相手にマグレじゃ勝てない』が通説となり、かなり腕のあるスロッターですら勝負を避ける状態となってしまった。
そんな中、意を決して勝負を受けた人間もいた。
『パーラー桜』を根城として立ち回る凄腕スロッター、北条。
優司からの再三の依頼に、ようやく重い腰をあげて勝負することを決意した。
そして、一度の引き分けを挟んだ後、北条が敗北。
一般的な評価では『北条は広瀬より下』とされていたので、当然の結果でもあった。
そして、次の勝負相手は、グループには属さずピンで動いている大石という男。
北条以上に名の知れているスロッターだった。
特に毎月の収支に定評があり、2年以上にわたり「月80万」のプラスを下回ったことがないという噂が流れていた。
つまり、年収1000万プレーヤーということ。
そんな大石から、「夏目優司と勝負したい」と直々の申し出があった。
相当手強い相手だけに、日高や真鍋たちは勝負しないように引き止めたが、今回は相手からの申し出ということもあったし、逃げるのも不恰好だという優司の主張に日高たちが引き下がり、そのまま勝負成立となった。
今までは肩書きなどには興味のなかった大石。
だからこそ、気ままに一人で立ち回って喰っていた。
しかし、急激に『夏目優司』の名がこの街に広まっていた為、ついついちょっとした対抗心・名誉欲・自己顕示欲に駆られて自ら勝負を挑んでしまったのである。
この勝負は熾烈を極めた。
なんと、6連続の引き分け。
しかも、双方6をツモり続けての。
勝敗の偶然性を減らすため、「開店時から1時間の間だけは台移動可能」という特別ルールが加わったことにより勝負が長引いたのだ。
2回引き分けるごとに勝負ホールを変えたのだが、互いにホール情報収集能力がハンパではなく、二人とも細部までしっかりと調べ上げていたため、ホール変更はあまり意味を成さなかった。
設定変更パターン・曜日ごとの設定の入れ方のクセ・各ホールの力を入れている機種などなど、これらの情報を互いに完全に把握していたのだ。
長引いた結果、ようやく7日目に優司の勝利。
いつどちらが負けてもおかしくない、ギリギリの勝負だった。
こうして優司は、スロ激戦区であるこの街で、名実ともにトップスロッターの一員へと登りつめることに成功した。
もはや、勝負が成立する相手はかなり限られていたのである。
◇◇◇◇◇◇
ビール片手に頭を抱える優司に対し、勝負を受けてくれそうな人間を思いつくままに列挙する小島。
「こうなってくると、勝負が成立しそうなのは乾さんと神崎さんくらいしかいないと思うんスよねぇ……。
でも、さすがにそれは……」
その言葉を聞き、優司が露骨に不快そうな声を出す。
「……小島、前から聞こうと思ってたんだけど、なんでそんなに乾とか神崎にビビるんだ?
俺が負けるとでも思ってんの?」
「いや……えーっと…………。
す、すいません、正直、勝てるイメージはまったく湧かないっス……」
「……」
あからさまに不満げな表情を浮かべる優司。
「あ!
で、でも、かといって夏目君が負けるイメージも湧かないんスけどッ!」
「どっちだよ……」
「あ、あのッ……なんていうかその……」
「もういいよ。無理すんなって。
要は、俺がまだその二人のレベルには届いてないって思ってんだろ?」
「……」
「まあ、こればっかりは結果で示すしかないな。」
「え……?
まさか、乾さんか神崎さんに勝負吹っかけるつもりッスか……?」
「やむを得ないだろ。もうこの街じゃ、彼ら以外に相手はいないんだし。
それに、このまま小島にナメられっぱなしってのもなぁ?」
「い、いや、別にナメてるわけじゃ……」
「まあ、いいけどさ」
しばらく沈黙が続く。
沈黙に耐えかねたのか、小島が再び口を開いた。
「で、でも、日高さんとかもあの二人との勝負は避けるようにって言ってたんスよね?」
「……ああ、おかげで昨日は日高と大ゲンカだよ」
そう言って、昨日の日高たちとのやりとりを小島に語りだした。
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