ゴーストスロッター

クランキー

文字サイズ
小 中 大 特大
73 / 138
【第4章】

■第73話 : 苦渋の決断

「なんだよ? もう用はねぇんだろ?」

優司の呼び止めに応じて足を止めた鴻上は、振り返りながら問い掛けた。

下唇を強く噛んだ後、優司が怒鳴る。

「わかったよ、勝負すればいいんだろ!
 受けるよ、受けてやるよ!
 ただし、俺が負けたら、ちゃんと飯島と別れろよ! それが絶対の条件だ」

「へぇ……やっぱ受けるんだ。
 まあ、そりゃそうだよな。スロにしか生きがいを見出せないようなクズ人間を、最後まで心配してくれてた女だもんなぁ?」

「お前だけにはクズだなんて言われたくないっ……。黙ってろっ……。
 とにかく勝負してやるんだから、もういいだろうが」

「はいはい、わかりましたよ。
 ま、勝負するってんならこれ以上イジめてもしょうがねぇな」

「ッ…………」

「じゃあ、勝負は3日後な。
 賭け金は、いつものお前の相場通り30万。
 勝負ホールはT駅西口にある『ジュピター』。
 分かってんだろうけど、当日は、俺に打つ台をこっそり教えてくれよな。設定6の台を。
 で、お前は低設定台を選んで座る、と。
 これで無事、俺の勝利ってわけだ」

「……わかったよ」

「悪いなぁ。
 俺には、どこにどんな設定の台が置かれるかなんてわからないもんでさ。ヘヘ!」

「…………」

「安心しろって。
 お前がちゃんと負けたら、俺もしっかりと約束を守って由香と別れてやる」

「……当然だろうが」

「へっ……。
 まあいいや。とりあえずメアド教えといてくれよ。細かいことは後々メールで連絡すっから。
 あと、一応電話番号もな」

仕方なく、言われるままに自分の携帯を取り出し、鴻上に自分のメアドと携帯の番号を見せる優司。

鴻上は、提示されたメアドと携帯番号を自分の携帯に入力した。

「オッケー。
 じゃあ、明日にでも細かい連絡事項を送っとくから。
 あらかじめ言っとくけどよ、間違っても、お前の後ろ盾の日高とか真鍋とかにこのことをチクんなよ?
 そんなことすりゃ、それでこの話はなかったことになるからな」

鴻上の歪んだ表現に、思わず頭に血が上る。

「後ろ盾なんかじゃない! ただの友人だっ!」

「あっそ。
 どうでもいいけど、とにかくあの二人には言うなってこと。この街でがっつりスロット打ってる奴の間では有名だもんな、日高と真鍋。横のつながりも多そうだから、あの二人に知られると面倒くさいことになりそうだからな」

「……ああ、わかった。言わないよ」

「でも、ちゃんと勝負現場にはあの二人を連れてくるんだぜ?
 じゃないと証人がいないしよ。
 余計なことは言わず、ただ『勝負するから見届けてくれ』とでも言っときゃいいよ。
 それ以上は何も言わなくていいからな」

「……」

「よし、これで話はまとまった。それじゃな!」

そう言って、余裕に満ち溢れた笑みでその場を離れていく鴻上。
その姿を、優司はただただ苦々しく見送った。

(くそっ……。結局ヤツの思い通りかよ……。
 これで本当に良かったのか俺は……?
 飯島の為に、今までやってきたことを全部フイにしちまっていいのか……?
 それより何より、あんなクソ野郎の言いなりになってていいのかよ…………)



◇◇◇◇◇◇



「やぁ、小島。俺」

鴻上が立ち去ってから10分ほどが経ち、優司はおもむろに小島の携帯に電話をした。

聞くのはもちろん、鴻上のことだった。

「あ、夏目君ッスか?」

「ああ……。今、ちょっといいか?」

「ええ、大丈夫ッスけど……。
 どうしたんスか? なんか声のトーンが……」

「いや、ちょっといろいろあってさ」

「え……?」

「『街の情報通』みたいなお前にちょっと聞きたいことがあるんだけどさ。
 鴻上って男の名前、聞いたことある?」

「へっ? コウガミ……っすか?」

「うん。もしかしたら小島なら知ってるかも、と思ってさ」

「うーん……。さすがに名字だけいきなり聞いても……」

「あ、わるいわるい。
 下の名前が……確か『ケンジ』だったかな?
 んで、やたら女ったらし、みたいな」

「ケンジ……コウガミケンジ……」

さすがに、そうそううまいこと知ってるものじゃないか。
そう諦めかけた時だった。

「……あっ!」

「え? な、なんだよ小島。急に大声を出して」

「わかったッス!
 鴻上健自ですよね?
 そういえば、ちょこちょこと噂を聞いたことが……」

「マジっ? やっぱすごいね、小島の情報力は!」

「でも……。
 その男、女ったらしっつーか、確かヒモみたいなヤツですよ?
 女を生活の道具としか見てないような人間だって聞いたような……」

「あ……」

これで聞くことがなくなってしまった。

優司が一番聞きたかったのは、鴻上という男が、『自分のことを世話してくれている女に対し、簡単に手のひらを返してひどい目に遭わせるような男なのか?』ということなのだから。

もしあの脅しがハッタリならば、むざむざ負ける必要はない。
他に手段を考えることもできる。

しかし、小島の口ぶりからも、やはり鴻上の言っていたことは嘘ではなさそうだということがわかった。
そういう非道を平気でやりかねない、ということが。

さらに小島が続ける。

「友達から聞いた話なんスけど、その友達の知り合いの女の子が、鴻上のヤツに大借金背負わされて、とんでもない目に遭ったんだとか……」

「……」

『名の知れたクズ』だとわかり、余計落ち込んでしまった優司に対し、畳み掛けるように冷酷な事実を告げてしまった小島。

「あれ……? どうしたんスか?」

「小島……。この後なんか予定ある?
 出来たら、軽く飲みたいんだけどさ……」

「え……?
 あ、はい、別にいいッスけど」

明らかに沈んだトーンの優司に、半ば圧倒されるような形で承諾する小島。

「よし、じゃあ1時間後に串丸でな」

「あ、了解ッス。
 ……ちなみに、日高さんとか真鍋さんは呼ばなくていいんスか?」

「ああ、今日はいいや。
 というか、呼ばないでくれ。頼む」

「……」

軽く気まずい空気が流れ、それに耐え切れなくなる優司。
じゃあ1時間後に、とだけ言い、そのまま電話を切ってしまった。

(なんか……良くないことの連続だな。
 日高達とはバツが悪い感じだし、ワケわかんないヤツから因縁つけられるし、挙句、飯島との再会がこんな形だなんて……。
 なんか悪いことでもしたんかな、俺……。
 バチでもあたってるのかな…… )
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~ 表紙

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋愛 完結 ショートショート
文字数 9,943
女風体験記〜今話題の女性用風俗に行ってきたので感想載せます〜 表紙

女風体験記〜今話題の女性用風俗に行ってきたので感想載せます〜

女風に行った感想書いちゃうよ! (あくまでも私が体験したことです。全てのセラピスト様が同じ様な施術をしてるわけでは無いと思います。)
恋愛 完結 短編
文字数 10,166
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか... 表紙

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。
青春 完結 短編
文字数 11,294
百合ランジェリーカフェにようこそ! 表紙

百合ランジェリーカフェにようこそ!

 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
青春 連載中 長編 R15
文字数 59,023
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。 表紙

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。
恋愛 完結 短編 R15
文字数 1,856
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。 表紙

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
青春 連載中 長編 R15
文字数 31,050
還暦の性 若い彼との恋愛模様 表紙

還暦の性 若い彼との恋愛模様

還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話
恋愛 完結 短編
文字数 12,614
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。 表紙

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ファンタジー 完結 長編 R15
文字数 564,689