ゴーストスロッター

クランキー

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【第4章】

■第76話 : 進路相談

広瀬の将来についてのビジョンを聞き、やや滅入ってしまった優司。

広瀬は、その様子を敏感に察知していた。
おそらく、自分の発言が優司の求めていた答えとは違っていたのだろう、と。

しかし、このままこの話をここでやめても解決はない、やるならとことんまでやらないとスッキリはできないだろうと考え、将来どうする?といったこの話を続行することにした広瀬。

「で……夏目はこの先どうしようと思ってんの?」

「え……? 俺……?」

「うん」

「…………」

あからさまに困惑する優司。
今の優司にとって一番困る質問なのだから無理もない。

しかし、ここは変に小賢しく答えず、素直に思っていることを話してみることにした。

広瀬なら、何か答えをくれるんじゃないだろうかという淡い期待にかけて。

「……実は、すっごい迷っててさ。
 今のままスロ勝負を続けるか、日高たちと一緒にツルんで打ち回るか、普通に社会に戻るか……」

「なるほどねぇ」

「俺としては、どうしてもスロ勝負を続けていきたいんだ。
 もちろん、ずっとなんて出来ないことはわかってる。
 だから、あと2回、あと2回だけどうしても勝負をしたいんだよ!」

「2回?」

「うん、2回っていうか、正確には特定の二人と」

「特定の二人……?」

「そうなんだ。
 この街で最強とされてる残りのスロッター、乾と神崎、この二人とどうしてもやり合いたいんだ!」

「乾と、神崎……」

「でも、日高とか真鍋はやたら止めてきてさ。『勝負しても負けるからやめとけ!』って。
 それで、彼らとはちょっとうまくいかなくなってて……」

「へぇ、うまくいってないんだ、彼らと。
 意外だなぁ、凄く理解し合ってる仲に見えたのに」

「うん。まあ、結構デリケートな問題でさ……」

「……」

「で、スロ勝負については広瀬君はどう思う?
 俺、やっぱり乾とか神崎とかとの勝負、ヤメといた方がいいのかな?」

「えっ? お、俺にそれを聞くの……?」

「あ……ゴ、ゴメン。
 でも、もう俺、誰に聞いていいのかわかんなくって……」

「そっか。うん、まあいいけどさぁ」

「……」

「まあでも、勝負したいんならすればいいんじゃない?
 負けたって命取られるわけじゃないんだし、それでスッキリするならさ、いっそパーッと勝負してみればいいと思うよ」

この言葉を聞いた瞬間、みるみるうちに笑顔になっていく優司。

「や、やっぱりそうだよねっ? そう思うよねっ?」

「うん、まあ……。少なくとも俺はね」

「そっか! いやぁ、良かったよ、広瀬君に相談してみて!
 さっきも言った通り、日高とか真鍋とか、他のみんなもあんまり良い顔しなくてさ! 乾や神崎と勝負することに。俺がいくら勝負したいって主張してもダメなんだ」

「……」

「でも、こうやって俺がやろうと思ってることを認めてくれる人がいて、なんか凄く救われたよっ! ホント嬉しい!」

今まで否定され続けてきた自分の主張。
それが、ここで初めて肯定された。
それも、一目置いている、いや、それ以上の存在である広瀬から。

しかし、浮かれる優司を尻目に、広瀬は真顔で淡々と話し出した。

「いや、でも勘違いしないでくれよ夏目。
 俺はあくまで部外者だからこんな無責任なこと言えてる、ってのもあるんだからさ。
 日高とか真鍋は、多分責任感じてるんだと思うよ? ずっと間近で接してて、一緒にやってきたような感覚もあるんだろうし。
 彼ら、勝負の応援とかサポートとかもしてきたんだろ? ここまで夏目がスロ勝負にハマっちゃうとは思わないでさ」

「う、うん……まあ……」

「そういう意味では、あの二人の言葉の方がより親身な言葉だよ。
 俺はただ、夏目がそこまで勝負にこだわるんなら、どうせあと2回くらいなら納得いくまでやってみれば?って思っただけでさ。
 その後のこととかも深くは考えてないわけだし」

「……そっか。
 うん、でもいいんだ。否定されなかっただけでも。なんか勇気が湧いたよ」

「うーん……。それもなんか違う気がするけど……。
 俺の言ってる意味、ちゃんとわかってるか?」

「大丈夫! わかってるって!」

「……ま、いっか。
 どっちにしろ、よく考えて行動した方がいいよ?
 特に、日高とか真鍋が言ってることの意味をよく理解してさ」

「うん、わかった。 いろいろありがとう!」

(夏目の奴、本当にわかってんのかな……?)

妙に嬉しそうな優司の顔を見ているうちに、水を差すのもなんだか悪い気がして、やや疑問を感じつつもそのまま流してしまった広瀬。

スロ勝負など娯楽の範囲だろう、というのが広瀬の認識なので、優司の良い気分をぶち壊してでも話を続けようとすることはないと判断したのだ。



「ところでさ、今日の本題って何だったの?」

入店時から気になっていたことを、ここにきてようやく聞いてみた広瀬。

優司は、思い出したかのように勢いよく喋りだした。

「あ! そうそう、ごめん、話が前後して……。
 今日来てもらった理由なんだけど……明後日に、またスロ勝負をしなくちゃならなくなったんだ」

「おお、相手決まったんだ?」

「決まったというか……」

「ん?」

「ちなみにさっき、あと2回スロ勝負できればいい、って言ったけど、実はそれも危ないんだよね」

「ちょっと話が見えないんだけど」

「あ、ご、ごめん。
 かいつまんで説明すると……なんだか妙なヤツに絡まれちゃってさ。
 俺の昔の彼女を盾に、『この勝負、わざと負けないとこの女が大変なことになる』みたいな脅しをかけられてるんだ」

「……」

「そいつはヒモみたいな……っていうか凄腕のヒモで、その女の子は完璧にその男に心を奪われてて……
 で、俺がそいつにわざと負けないと、俺の前の彼女は大変なことになっちゃうんだ。
 具体的に言うと、風俗に無理矢理、みたいな……」

「……」

「さすがにそんな状況じゃ勝つわけにもいかないから、負けてやるしかないかな、って思ってて。
 で、その時に相手のヤツが『立会人を用意しろ』って言ってきたから、その役目を広瀬君にお願いできたら、と思って。
 さっき話した通り、日高とか真鍋とはちょっと折り合い悪くて、頼みづらい状況だから」

「なるほどね」

話の流れをなんとなく理解し、考え込む広瀬。

その様子を黙って見つめている優司。
説明不足だったかな?と不安になりながら。

1分ほど黙り込んだ後、不意に広瀬が口を開いた。

「ちなみにさ、その男の名前って何?」 

「え……?」
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