だから言ったのに! 〜婚約者は予言持ち〜

キムラましゅろう

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番外編

要らぬお世話を焼いた者がいた

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久しぶりのジノン様の腕の中で
わたしはついウットリしてしまっていた。

でもあの事を告げねば!

「ジノン様、さっき初めて胎動を感じたんです。
ポコポコって泡が弾けるみたいな」

「なに!?それはホントか!?」

「ふふふ、手を当ててみてください」

わたしはジノン様の手を下腹部に添えた。

「………」

「………」

「まぁ、まだそんなしょっちゅう感じるわけではないですね」

「そうか……」

ジノン様は目に見えてガッカリした。

でもジノン様が手を離した瞬間、

ポコポコ…

「あ!動いた!」

「なにっ!?」

ジノン様がすかさずまた手を下腹部に当てる。


しーーん……

「残念」

「うっ……」

でも手を離すとポコポコッ

「……ジノン様、この子、男の子のような気がしてきました」

「奇遇だなジュリ、俺もだ。むむむ…!
今から子どもとジュリの取り合いなのか……?」

ぷっ…!
わたしは吹き出した。

やっぱりこんな時間がなによりも愛おしい。
誰にも渡したくない大切なひとときだ。


わたしは意を決して
お願いする事にした。


「ジノン様、ジノン様もわたしと
お腹の子どもとの時間をかけがえのないものだと
感じてくれていますか?」

「?何を言ってる、当たり前だろう」

「それなら……娼館通いはやめて下さい……!」

「っ……知ってたのか」

「はい……」

「………」


沈黙がわたし達を包む。

うっ……
本人を目の前にすると生々しくて辛いっ……!

一体どんな人?

ジノン様はわたし以外にどんな人を抱いたの?


わたしは堪らず俯いた。


もういい、

もうこれからはその人と会わずにいてくれるなら
忘れるように努力する。


「ジュリ」

「……はい」

「その人に会ってくれるか?」

その言葉を聞き、

わたしは思わずジノン様の顔を見上げた。


え?

会う?今から?

娼館でジノン様がなった人に?


「行こう」

そう言ってジノン様はわたしの手を引き歩き出した。


え?え?え?え?

ちょっと待って、いやなんですけどっ


戸惑っているうちに馬車に乗せられ、

わたしはくだんの娼館に連れて来られた。

「ジ、ジノン様、わたしっ……」

わたしは例の如く移動はジノン様の姫抱っこで運ばれて行く。


お、王太子妃vs高級娼婦!?

肉弾戦なら勝つ自信あるけど

お色気勝負なら完敗に決まってる!

で、でも、ジノン様を愛する気持ちだけは絶対に
負けないから!


「アメリア夫人はいるか?」

ジノン様は娼館の人に声を掛けた。

アメリア夫人!?

アメリア夫人というの!?

オトナの女性なの!?

か、勝てる気がしない……泣きそう。

姫抱っこされながら
半泣きになりかけてるわたしの耳に、

落ち着いた妖艶な声が耳に届いた。


「アラ、これはこれは殿下ではありませんの、
いらっしゃいませ」


その声の主はもう、

女のわたしでも目眩がするような

匂い立つ色香を纏い、なまめかしい目線で殿下を
見上げていた。


はい、負け、マシタ。


「アラ、今日はお連れ様も?
 ……もしかして、お妃様でいらっしゃいます?」

アメリア夫人は
わたしを見てそう言った。

「はい……お妃さまです……」

わたしはしょんぼりと項垂れて答える。

「っまあ!!ようやくお会いする事が叶いましたわ!お噂はご夫君であらせられる殿下から常々伺っておりましたのよ」

「噂?どのような?悪口かしら?」

わたしが拳を握り締めながら言うと

アメリア夫人は薔薇の香りが漂いそうな
(ジュリの個人的な感想です)
笑い声を弾ませながら言った。

「まぁ、ほほほほほ、
殿下の仰っていたまんまの方ですわね。
面白くて愛らしい妖精のような方ですわ」


「だろ?ジュリはいつも面白くて愛らしくて逞しくて勇ましい、俺の大切な妖精なんだ」


なんだか妖精を褒め称えるフレーズではない気もするけど、
今のわたしはそれどころではなかった。


「あ、あの……ジノン様、ここへは一体何をしに…….?」

わたしが恐る恐る尋ねると、

ジノン様ではなくアメリア夫人が話し出した。


「では今日のお勉強はお妃様もご一緒、という事でよろしいですか?」

ん?お勉強?


「あぁ。そうしてくれ。考えてみれば、ジュリも親としては新米なのだから一緒に学んでも良かったんだ」


「どういう事ですか?ジノン様はここで一体何を……?」

「変な誤解をさせてすまなかった。ここは娼館だが、娼婦や夜の商売をされているご婦人の産婦人科でもるあるのだ。アメリア夫人は産科専門の医療魔術師なんだよ」

「え、えぇ!?」

こんな妖艶な医療魔術師ってアリなの?


「ジュリ……ジュリはどうせ乳母任せにせずに自分で子育てするつもりなんだろう?」

「?はい、母もそうしてわたし達を自分の手で育ててくれましたから、わたしも絶対そうすると決めてました。王太子妃としてはダメでしょうか?」

「いや、俺はジュリがやりたいようにすればいいと思っている」

「ジノン様ありがとう…!」

わたしは思わずジノン様の首に
手を回してしがみ付く。

そういえば
ずっと姫抱っこされたままだけど
ジノン様ったら重たくないのかしら?


「でもそれではジュリ一人では大変だろう。俺は公務もあるから全ては無理だが、それでも出来る限りは一緒に子どもを育てていきたいと思ってるんだ。だからここでオムツ交換とか入浴のさせ方とか学ばせて貰ってたんだ」


そ、そうだったのか……!


娼館通いはまさかの父親教室だったのか!

ていうか紛らわしいわ!

そんなの浮気だと思うでしょ!!


……と、言ってやりたいが

まずはわたしが言わなくてはならない言葉がある。


「ジノン様、勝手に疑って勝手にヤキモチ焼いて勝手に認識阻害の魔法で逃げちゃっててごめんなさい。ちゃんと最初から話し合っておけば良かったですね……」


「ん?認識阻害は何の事だかわからんが、ちゃんと話をしなかったのは俺も一緒だ。まぁ照れ臭かったし、出来れば最初からカッコいいところを見せて惚れ直して欲しかったんだ……」

「ジ、ジノン様……」

いやだ愛おしい!

胸がキュンキュンする……!


そんなわたし達に
アメリア夫人が話しかけてきた。


「なんだかよくわかりませんが、仲がよろしくて微笑ましいですわ。本当に素敵な王太子ご夫妻ですこと」

「いろいろと誤解してしまいまして……お恥ずかしいです。ん?でもジノン様、よくこの娼館が産科で、父親教室もやっているとご存知でしたね?」

「ああ、ここは父上に教えて貰ったんだ。学べるぞと」


ん?




わたしがチラリと
アメリア夫人を見ると、

アメリア夫人はもともと隠す気がなかったらしく、
正直に答えてくれた。


「うふふ。はい、陛下にはお若い時によく足を運んでいただきまして、と仰せ遣っておりましたの。まぁは必要なかったようですけども」



お、お、お義父様ぁぁ!?

ジノン様に愛妾を
充てがう気満々だったんじゃないですか!


ジノン様にがなかったから良かったものの……

ホントにもう。


これは帰ったらお義母様に
ご報告させていただいてもいいのかしら?

きっとお義母様も、
併せてお聞きになりたいんじゃないかしら。


丁度欲しい絵画があって、

近々お義父様が何かやらかさないかしらと言っておられたもの。

ふふふ……

楽しみにしていてくださいませね

お義父様……。






















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