無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

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ミニ番外編

ポレット、魔のイヤイヤ期

ハノンとフェリックスの愛娘、
ポレットは2歳3ヶ月になった。

只今絶賛イヤイヤ期の真っ只中である。

女の子はお喋りが早く、二語文なんてもうお手のものだ。

兄であるルシアンは言葉の発達がわりとゆっくりだったので、同じ兄妹でも違うものだなとハノンは感心していた。

しかもルシアンのイヤイヤ期は気分によって起こる程度の可愛いものだったのだが、
ポレットのイヤイヤ期はなかなかに凄まじい。

とにかく何をしても何を言っても何をどうしても、

「や!」「やよ!」「やーの!」である。

そして一貫しているのが、

「や!にーたま いい!」
(訳:いや!お兄さまがいいの!)

遊ぶのもごはんを食べるのも寝るのも、とにかく兄のルシアンと一緒がいいらしい。

しかし6歳になって家庭教師と勉強を始めたルシアンの授業中となると、側には居られない。

そうなると更にイヤイヤ攻撃が炸裂するのだった。

こうなったらもう、ルシアン以外は誰もダメで(母親のハノンは別だが)、父親であるフェリックスも拒否られる。

その時のフェリックスの哀愁漂う姿は、それはもう可哀想なものである。

この日もルシアンはワイズ侯爵家から派遣されて来た、語学の教師と大陸共用語のハイラント語を学んでいる。

そこへタイミング悪く遊びに来たワイズ侯爵家の双子、キースとバスターにイヤイヤの応酬をお見舞いしていた。


「ポー、バスター兄様と遊ぼう。ポーの好きな絵本を持って来たよ」

「ポーはキース兄様と庭で鬼ごっこする方がいいよな?ほら、我が愛しのお姫様、一緒に庭に行こう」

と、今年16歳になり、更にかつてのフェリックスの様に少女たちのハートを鷲掴みにしているキースとバスターが小さな幼女にかしずいている。

そんなハイスペ美少年たちに傅かれながらもポレットの答えはこう、

「や!にーたま!いい!」

(訳:お兄さまも一緒じゃなきゃ嫌よ!)

である。


母親であるハノンがお茶と焼きたてのマフィンをテーブルに用意する。

そして双子に申し訳なさそうに言った。

「キース、バスター、ごめんなさいね。せっかく学校の帰りに寄ってくれたのに。オヤツでも食べていってね」

ハノンの作るお菓子が好きな双子が嬉しそうにテーブルに付く。

そしてカップを手にしながらハノンに答えた。

「いいんだよハノンおばさん、気にしないで。イヤイヤ言ってるポーが見たくて来てるんだから」

「そうそう♪それにポーはイヤって言いながらも人形を見せてくれたり、一緒にお絵かきをさせてくれるんだよ」

「まぁ、ポレットったら……」

イヤと拒絶しながらもしっかり遊んで貰ってるなんて……こんな年からツンとデレを使い分けて、末恐ろしい小悪魔になりそうだとハノンは眉根を寄せた。

『ポレットはルシアンと違ってある意味厳しく躾ないといけないかもしれないわね』

と、ハノンは母親としてきゅっと気持ちを引き締めた。

その後もポレットはキースの膝の上に乗りながら
「きしゅや!にーたま いい!」とか、

バスターに抱っこされながら
「ばした や!にーたま!にーたま!」

と言いながらも肩車をして貰ったりお馬さんになって貰ったりしていた。

それにしても今日の授業は長引いてるなと、ハノンが思う頃に家庭教師とルシアンが勉強部屋から出て来た。

ハノンは教師に礼を言いながら玄関まで見送る。

キースとバスターが来ている事に気付いたルシアンが二人とポレットの元へと駆け寄った。

「あ、キース兄さんとバスター兄さんだ!いらっしゃい!」

6歳になり、すっかりカタコト言葉を卒業したルシアンが双子に声をかけた。

「よおルー。勉強だって?偉いな」

「ルー、剣術と体術の鍛錬もちゃんとやってるか?」

双子がルシアンの頭をくしゃくしゃに撫でながら言った。

「うん!どちらもちゃんとやってるよ。だって父さんみたいな立派な騎士になりたいもん」

「ルーならなれる。ていうかルーに不可能という文字はない」

「文武両道、さすがは俺たちのルーだ。わからない事があったら何でも聞いてくれ」

とにかく年の離れたイトコ達をを溺愛する双子であった。

そんな会話をしてる時、

ふいにルシアンの背中からポレットがしがみ付いて来た。

何も言わず静かに、ぎゅっと兄の体にくっ付いた。

それに気付いたルシアンが妹に声をかける。

「ポゥ?どうしたの?」

ポレットは何も言わずただ黙ってルシアンにしがみ付いていた。

「ポゥ?」

ルシアンがもう一度妹に呼びかける。

するとポレットは小さな声でこう言った。

「にーたま しゅき」

それを聞き、ルシアンも笑って妹と抱きしめる。

「ぼくもポゥが大好きだよ」

その兄と妹のやり取りをみていたキースとバスターが感極まった様子で叫んだ。

「俺もポーとルーが大好きだ!!」

「俺だって!」

そう言ってそれぞれルシアンとポレットを同時に抱き上げた。

「「可愛い可愛い俺たちのイトコだ」」


しかしポレットの無情のひと言が放たれた。


「や!きしゅ、ばした や!!」



ポレットがイヤイヤ期を抜けるまで、

双子の片想いは続きそうだ。













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