無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

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ミニ番外編

これは家門の総意です!

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「なぁフェリックスよ……」

「駄目です。いくら殿下のお願いでもこればかりはお断り申し上げます」


近頃、王太子となったクリフォードと専属護衛騎士のフェリックス=ワイズとの間でこんな押し問答が繰り広げられている。


「王太子として命を下したとしてもか」

「不敬罪で罰せられたとしても従えません」

「どうしてだ。ワイズ伯爵家、そして本家にあたるワイズ侯爵家にとっても悪い話ではなかろう」

「誠に光栄の極みではありますが、それとこれとは話が別です」

「他に誰か相手が決まっているのか?」

「とんでもない」

「じゃあ良いではないか」

「どうかご容赦ください」

「なんだ?もしかして我が王家よりも良い話が上がっているとか言うのではあるまいなっ?」

「まさか、考えただけでも虫酸が走る」

「じゃあ何故だ、何故承諾せん!一生嫁に出さん訳にはゆかぬであろう」

「出しません」

「は?」

「我が最愛の娘、ポレットは他家に嫁には出さず、かといって婿を取る事もなく、生涯手元に置いて幸せに暮らさせます!これは私だけの意思にあらず。父である前ワイズ侯爵と兄である現ワイズ侯爵、そして次期ワイズ侯爵、ワイズ家の長たる者全員の総意ですっ!!」

「嘘だろうっ!?」

「嘘ではありません」

「一生嫁に出さんというのか?」

「はい、そう申し上げております」

「……奥方はなんと申しておる?」

「…………」

「奥方もそのような考えをもっておるのか?」

「………………勿論」

「その間は嘘だな」

「とにかく、ポレットと第一王子殿下との婚約は謹んでお断り申し上げます」

「なんでだっ!デイビッドは将来は王太子、更には国王となる身。そうすればお前の娘はゆくゆくは王妃となるのだぞっ!」

「だからこそですよ。一国の王妃、引いては大国アデリオールの王妃ともなればそれはそれはもの凄い重責を負う事になります。私は娘にはそんな苦労をして欲しくないのです」

「た、確かに責任は重く伸し掛かろう。しかしお前の娘だからこそそれに耐え、ディビットを支えて国を盛り立てていってくれると信じているのだ」

「殿下、ポレットはまだ5歳ですよ」

「デイビッドとてまだ六つだ。だからこそ早めに婚約を結んでだな、ポレットの負担にならないよう早くから妃教育を受けて貰いたいのだ」

「妃教育だなんてそんな苦行を何故ウチのポレたんにっ……!殿下、貴方は鬼ですかっ!?」

「仕方なかろう!ウチのデイ君がポレたんを見染めちゃったのだから!デイ君はポレたんじゃないと妃は持たないと豪語しているんだぞっ!親としてなんとかその想いを叶えてやりたいと思うのは当然であろう!」

「なんて身勝手な!暴君ですかっ、独裁者ですかっ、とにかく絶っ対にウチのポレたんは嫁には出しませんからっ!」

「あ!待てフェリックス!!話はまだ終わっておらんぞっ!」

「今日は元々非番です。折入ってお話があるというから参内したにすぎません。これにて御前を失礼致します!」

「おいフェリックスっ!!待って!お願い!」


命懸けで仕える主君であり幼馴染の親友であるクリフォードの嘆願を背に、フェリックスは振り返る事なく執務室を後にした。


『まったく……何が王子妃だ王太子妃だ王妃だっ!ポレットはどこにもやらんっ!』


険しい眼差しで城を辞し、そうして愛しの家族が待つワイズ伯爵家の屋敷へと戻ったフェリックス。

「パパっおかえりなさいませっ!」

「ポレット!」

エントランスで父の出迎えに駆け付けたポレットが自身の胸に飛び込んで来たのを、フェリックスは喜色満面で受け止めた。

あぁ……可愛い……

ウチの娘は本当に天使だ。

こんな可愛い娘を何故好き好んで他所にやらねばならんのだ!

ポレたんは一生、親元で穏やかに暮らさせる……!


フェリックスは自らの意思をより一層強固なものにし、決意を新たにした。

そんな父にポレットが無邪気に言い放つ。


「パパ。わたし、おおきくなったらデイビッドさまのおよめさんになります!」

「ポっ……!?」

「きょう、デイビッドさまがひでんかとあそびにきてくれたの!そしてわたしをおよめさんにしたいとぷろぽーずしてくれたのよ!」

それを聞き、フェリックスが生まれたての子鹿のようにプルプルと震えながら尋ねた。

「ポっ、ポレ、ポレットは…なんと返事をしたのかな……?」

「もちろん“おうけします”っていったわ。だってそうおこたえするのがただしいのでしょう?あれ?パパ?どうしたの?パパ?」

瞬間、フェリックスは膝から崩れ落ちていた。

こ、これは早急にワイズ総家に緊急招集をかけねばならないっ……!

まさか6歳の小僧(第一王子)が直談判に来るなどと誰が想像できようか……

くそぅデイビッド(王位継承権第二位)め……

良い度胸をしているではないか……

ワイズ家我が家門を敵に回したらどうなるか……6歳にしてトラウマとなるほどの恐怖に陥れてやるっ……!

フェリックスはガバりと立ち上がり、早速ワイズ侯爵家実家に向かうべく踵を返そうとした。
が、しかし、それを妻のハノンに制される。

「フェリックス。もうすぐお夕飯の時間よ?
まさか今から侯爵家へ行く気じゃないわよね……?」

「許せハノン、これは娘の一大事なんだ。ポレットにたかる小蝿(将来の国王)を、我が一族総出で迎え撃たねばならんっ……!」

「フェリックス。不敬過ぎます。それにわたしは良いお話だと思うわよ?デイビッド殿下とポレット、本当にお似合いで可愛らしかったわ」

「なっ!?ハノンっ!?気は確かかっ!?気でも触れたかっ!?」

その言葉を聞き、ハノンは夫の頬を軽く抓った。

「ハノ……」

「気が触れたのは貴方よ。少し冷静になって、さぁとりあえずお夕食にしましょう」

「……はい……」

愛する妻に頬を抓られるという貴重な経験をして急に大人しくなったフェリックス。

更にハノンに手を引かれて、素直に従って子ども達が待つダイニングルームへとお利口さんに歩いて行った。


その後紆余曲折(主にフェリックスと前侯爵アルドンの妨害)を経て、

ポレットが8歳、第一王子デイビッドが9歳の時に二人の婚約は結ばれたのであった。











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