無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

文字の大きさ
72 / 161
ミニ番外編

転生夫人特別講師現る ①

しおりを挟む
魔術学園のクラス編成は成績順だ。

AクラスからEクラスまで、入学試験の結果によりクラス分けをされる。

ポレットとミシェルはAクラスで、同じクラスであった。

ちなみにポレットの成績は学年では上位五名の中に入っている。
ミシェルも1学年175名中の15位となかなかに優秀な成績であった。


そんなポレットとミシェルが在籍するAクラス女子が初めての護身術授業の日を迎えていた。

護身術の授業とは、魔術を使えないシチュエーションでも自分の身を守る、その方法や技能のレクチャーを受けるというものだ。

剣術の初歩的なものから簡単な体術を女性講師から学ぶ事になっている。

運動着に着替え、Aクラスの女子たちは運動実習室で講師が来るのを待っていた。


「どんな先生なのかしら。怖い先生だと嫌だわ」

「私、剣術や体術なんて出来るかしら……」

「アザが出来たり、体に傷を作ったら婚約者に怒られちゃうわ」

なんて他の女子生徒が話す中でポレットがミシェルに訊ねた。

「ミシェル、講師の先生について何か聞いてる?」

「ううん?ルシアン様から『ミシェルが退屈しない剣技を持った講師らしいよ』とだけお聞きしたくらいかしら」

「そうなのね。そうね、たしかに剣術の腕前は凄い方だわ」

「え?ポレットは先生が誰なのか知ってるの?」

ミシェルが訊くとポレットは肩を竦めながら頷いた。

ワイズうちの家門って結構怖いのかもしれないって、聞かされた時に本気で思っちゃったわ……お母さまも苦笑いをしていたし」

「え?それじゃあ先生はもしかしてワイズ一門の方?」

「一門の者どころか次期当主夫人よ」

「えっ……それってまさか……」

講師の正体に気付いたミシェルがそう言った時、実習室の扉が開いた。

コツコツと運動用の長靴ちょうかの靴音を響かせて今まで話題になっていた女性講師が、立ち並ぶ女子生徒たちの前にやってきた。

やっぱり、と思ったミシェルを初め、その他Aクラスの女子生徒に向かってその女子講師は言った。


「皆さんはじめましてご機嫌よう。今日からA、Bクラスを担当いたしますイヴェット=ワイズと申します。よろしくお願いしますわね」

「ワイズ……?」
と、ファミリーネームを聞いた生徒たちがざわっとする。

「イヴェット様……」

ミシェルの口から思わずその名が零れ落ちた。


イヴェット=ワイズ次期侯爵夫人。

次期ワイズ侯爵キース=ワイズの妻であり、元オリオル国総騎士団長チャザーレ公爵の娘でもある彼女は幼い頃から父親により鍛えこまれた見事な剣技の持ち主である。

ご存知ない方のために、このイヴェットという女性の説明をここでしておこう。

───以下、短編集『鎧の姫』より一部抜粋───

イヴェットは転生者だ。

しかも異世界転生者という分類の。

どうやら前世では40代半ばで死んだらしい。

死んだと憶測で語るのは、前世の最後の記憶が階段から落ちる瞬間だったし、もの心ついて前世の記憶を取り戻した時には既に今世のイヴェットだったからだ。

その前世の記憶を全て引き継いでいるわけではないが、イヴェットには鮮明に覚えている事がある。

それは前世の自分が大好きだったマンガやアニメなど物語の記憶である。

そう、イヴェットはO・TA・KU☆という種族の生きものだったのだ。

数々のアニメを視聴しマンガやラノベなどを読み漁っていた、それが彼女の前世である───



と、そんなイヴェットが次期当主夫人という身分にも関わらずなぜ魔術学園の講師となったのか……

彼女自身はハイラント魔法学校の出身だ。
にも関わらず、彼女自ら名乗りを上げ、ワイズ家門の男たちの強力な後ろ楯を得てこの講師の座をゲットした理由……

それは当然、ポレットとミシェルを陰ながら(陰に隠れていないが)守るためである。

特に王子の婚約者であるポレットは学園という閉鎖的な空間でどんな危険に晒されるかわかったものではない。

それを毛髪をはらはらと散らしながら心配する前ワイズ侯爵アルドンにイヴェットが言ったのだ。

「お義祖父じいさま!わたくしにお任せ下さいませっ!わたくしを実技の特別講師か何かで学園に送り込んでくだされば、異世界学園モノの定番、王子の婚約者の敵である憎き聖女からポレットを守ってみせますわ!!」

ん?聖女?異世界学園もの?とアルドンもその場にいたフェリックスもキースもヴィクトルも首を傾げたが、確かにイヴットならば安心して任せられる。

元々騎士団の方へ適当な女性騎士を派遣して欲しいと学園側から要請があったのだ。
それならばオリオルでは女性騎士として叙任されてあたイヴットを推薦してもよいわけだ。

まぁ次期侯爵夫人というちょっとしたカタガキがくっついているが。

まぁそれも周囲への牽制となるか……と王宮騎士団の長であるヴィクトルがイヴェットを学園へと派遣を決めた。

ワイズの女性陣は半分呆れながらもやはりポレットが心配なのは同じらしく、
キースとの間にもうけた長男と次男の子守りを快く引き受けたのであった。


そんなこんなで今こうしてイヴェットは護身術の講師として生徒たちの前に立っているのであった。


「オーホッホッホ!どこにいるのか知らないけれどとっとと出て来なさいっ!ポレットを悪役令嬢に仕立てあげようとする極悪聖女っ!」





                                                  その②に続く

しおりを挟む
感想 3,580

あなたにおすすめの小説

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?

狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」 「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」 「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」 「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」 「だから、お前の夫が俺だって──」 少しずつ日差しが強くなっている頃。 昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。 ……誰コイツ。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

(完結)あなたの愛は諦めました (全5話)

青空一夏
恋愛
私はライラ・エト伯爵夫人と呼ばれるようになって3年経つ。子供は女の子が一人いる。子育てをナニーに任せっきりにする貴族も多いけれど、私は違う。はじめての子育ては夫と協力してしたかった。けれど、夫のエト伯爵は私の相談には全く乗ってくれない。彼は他人の相談に乗るので忙しいからよ。 これは自分の家庭を顧みず、他人にいい顔だけをしようとする男の末路を描いた作品です。 ショートショートの予定。 ゆるふわ設定。ご都合主義です。タグが増えるかもしれません。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました

奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」  妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。 「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」 「ど、どうも……」  ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。 「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」 「分かりましたわ」  こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。