93 / 161
ミニ番外編
ルシアン・ワイズ親衛隊(公式)
しおりを挟む
「イイ?アンタたち、親衛隊の隊則から少しでも逸脱したら即・追♡放だからネ!」
「もちろんですわ!」
「肝に銘じておきます!」
「ワイズ先輩マジリスペクトっす!」
「マナーをきちんと守り、推しの迷惑にならないように心掛けるのがファンの矜恃ですわ!」
「うぉぉ!ルシアン・ワイズ親衛隊万歳っ!!」
「……時折野太い隊員の声が混じるのが面白いわよネ♡」
放課後、メロディが勤務する医務室の控え室に数名の生徒たちが集まっていた。
彼らは公式が認める、ルシアンを心酔し心から敬愛する者たちなのだ。
メロディが学園に勤め出してまず最初に行ったのが、全学年に存在するルシアンファンの仕分けであった。
仕分けは三段階。
●ただルシアンのルックスを愛でてキャーキャー言うだけのミーハーだが無害なファン。
●ルックスだけでなく次期ワイズ伯爵であり、それにいずれは王家の外戚となるルシアンの将来性も込みで他を蹴落としてでも婚約者の座を得ようとするハイエナファン。
●そして何かしらの理由でルシアンと接したきっかけでその人格に惚れ、彼を推しと崇めルシアンの幸せのために尽力したいと思うファン。
その三番目の純粋にルシアンという人間に惚れ込んだ生徒たちをメロディはルシアン親衛隊にスカウトした。
そして広い学園内、メロディの目と耳になって不穏な種や噂がないかを報告する役割を担った。
「入学したてで学園内を迷子になって、その時ワイズ先輩が道案内をしてくれたんです!」
「剣技の実技授業で上手く出来なくて居残り練習させられていた時に、たまたま通りかかったワイズ様が剣技をレクチャーしてくれたんです!優しかった!」
「ケージの掃除係の担当だった魔法生物が逃げ出したときに一緒に捕まえてくれました!」
「高位貴族の上級生たちにコシアンパンを買いにパシリにされそうになっていたところをワイズ君に助けてもらったんだっ!うぉぉ!彼は漢だっ!」
皆次々にルシアンのファンになったきっかけを口にする。
「うんうんヨシヨシ♡老若男女みんなが惚れる好青年、それがアタシのルッシーなのよ♡」
「メロディ先生もマジリスペクト!」
「一生ついて行きます姐御!」
「そのアタシが認めたルシアン親衛隊のアンタたちの使命を忘れちゃダメヨ?」
メロディが隊員の皆に流し目で告げると、皆が敬礼をして応えた。
「わたくし達の使命は、ルシアン様に関するあらゆる噂や情報を耳にした時にすぐにメロディ先生にお知らせする事です!」
「ウフフそうよ♡でもあくまでも見聞きしたものを教えてくれるだけでいいの。噂の出処を探ろうとしたり、変に相手を深追いして危険な目に遭うような事をしちゃダメ。わかったわネ?」
「ハイお姐さま!」
鋭利な八センチピンヒールを履いても一ミリもブレない頑強な体幹を感じさせる歩き方でメロディは控え室の窓から外を眺める。
「そして……そんな我々がこれから注視するべき存在が現れたのはミンナも知ってるわネ?」
「はい。今年度から生徒会執行部入りをされたワイズ先輩と急接近中だと噂されるカメリア・ランバート生徒会長ですね……!」
「そうヨ。ハイラム王国辺境伯令嬢カメリア・ランバート。ルッシーの一学年上の先輩にあたり、執行部で会長副会長の間柄……学園内の行事等によりこのところ一緒にいる姿を多く見られ、早くも二人は特別な関係なのではないかと噂が流れ始めている……」
メロディの言葉を受け隊員の一人がつぶやくように言った。
「お二人が一緒に居るところ、私も見ました。美男美女で恐ろしくお似合いでしたわ……」
「我々の当面の活動はそのカメリア・ランバートがどのような人物かの観察ネ。ルッシーの側にいて害悪にならない人物か、そして今後ルッシーと恋愛関係に進展してゆくのか、そこを見極めなければならないワ……」
「な、なんかドキドキしますね……!」
「もし性悪オンナだった日にゃあ……この第二の母親であるアタシがケッチョンケッチョンにやっつけてやるンだから!」
「先生頼もしい!」
「隊長!」
「姐御!」
「フッ……」
隊員たちに賞賛を受けながら、メロディは窓の外を見続ける。
校舎の外では中庭を歩いて行くルシアンと件のカメリア・ランバートの姿があった。
「もちろんですわ!」
「肝に銘じておきます!」
「ワイズ先輩マジリスペクトっす!」
「マナーをきちんと守り、推しの迷惑にならないように心掛けるのがファンの矜恃ですわ!」
「うぉぉ!ルシアン・ワイズ親衛隊万歳っ!!」
「……時折野太い隊員の声が混じるのが面白いわよネ♡」
放課後、メロディが勤務する医務室の控え室に数名の生徒たちが集まっていた。
彼らは公式が認める、ルシアンを心酔し心から敬愛する者たちなのだ。
メロディが学園に勤め出してまず最初に行ったのが、全学年に存在するルシアンファンの仕分けであった。
仕分けは三段階。
●ただルシアンのルックスを愛でてキャーキャー言うだけのミーハーだが無害なファン。
●ルックスだけでなく次期ワイズ伯爵であり、それにいずれは王家の外戚となるルシアンの将来性も込みで他を蹴落としてでも婚約者の座を得ようとするハイエナファン。
●そして何かしらの理由でルシアンと接したきっかけでその人格に惚れ、彼を推しと崇めルシアンの幸せのために尽力したいと思うファン。
その三番目の純粋にルシアンという人間に惚れ込んだ生徒たちをメロディはルシアン親衛隊にスカウトした。
そして広い学園内、メロディの目と耳になって不穏な種や噂がないかを報告する役割を担った。
「入学したてで学園内を迷子になって、その時ワイズ先輩が道案内をしてくれたんです!」
「剣技の実技授業で上手く出来なくて居残り練習させられていた時に、たまたま通りかかったワイズ様が剣技をレクチャーしてくれたんです!優しかった!」
「ケージの掃除係の担当だった魔法生物が逃げ出したときに一緒に捕まえてくれました!」
「高位貴族の上級生たちにコシアンパンを買いにパシリにされそうになっていたところをワイズ君に助けてもらったんだっ!うぉぉ!彼は漢だっ!」
皆次々にルシアンのファンになったきっかけを口にする。
「うんうんヨシヨシ♡老若男女みんなが惚れる好青年、それがアタシのルッシーなのよ♡」
「メロディ先生もマジリスペクト!」
「一生ついて行きます姐御!」
「そのアタシが認めたルシアン親衛隊のアンタたちの使命を忘れちゃダメヨ?」
メロディが隊員の皆に流し目で告げると、皆が敬礼をして応えた。
「わたくし達の使命は、ルシアン様に関するあらゆる噂や情報を耳にした時にすぐにメロディ先生にお知らせする事です!」
「ウフフそうよ♡でもあくまでも見聞きしたものを教えてくれるだけでいいの。噂の出処を探ろうとしたり、変に相手を深追いして危険な目に遭うような事をしちゃダメ。わかったわネ?」
「ハイお姐さま!」
鋭利な八センチピンヒールを履いても一ミリもブレない頑強な体幹を感じさせる歩き方でメロディは控え室の窓から外を眺める。
「そして……そんな我々がこれから注視するべき存在が現れたのはミンナも知ってるわネ?」
「はい。今年度から生徒会執行部入りをされたワイズ先輩と急接近中だと噂されるカメリア・ランバート生徒会長ですね……!」
「そうヨ。ハイラム王国辺境伯令嬢カメリア・ランバート。ルッシーの一学年上の先輩にあたり、執行部で会長副会長の間柄……学園内の行事等によりこのところ一緒にいる姿を多く見られ、早くも二人は特別な関係なのではないかと噂が流れ始めている……」
メロディの言葉を受け隊員の一人がつぶやくように言った。
「お二人が一緒に居るところ、私も見ました。美男美女で恐ろしくお似合いでしたわ……」
「我々の当面の活動はそのカメリア・ランバートがどのような人物かの観察ネ。ルッシーの側にいて害悪にならない人物か、そして今後ルッシーと恋愛関係に進展してゆくのか、そこを見極めなければならないワ……」
「な、なんかドキドキしますね……!」
「もし性悪オンナだった日にゃあ……この第二の母親であるアタシがケッチョンケッチョンにやっつけてやるンだから!」
「先生頼もしい!」
「隊長!」
「姐御!」
「フッ……」
隊員たちに賞賛を受けながら、メロディは窓の外を見続ける。
校舎の外では中庭を歩いて行くルシアンと件のカメリア・ランバートの姿があった。
321
あなたにおすすめの小説
能ある妃は身分を隠す
赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。
言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。
全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました
お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。
その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。
あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」
「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」
「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」
「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」
あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。
「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」
うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、
「――俺のことが怖くないのか?」
と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?
よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!
うちに待望の子供が産まれた…けど
satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。
デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
心配するな、俺の本命は別にいる——冷酷王太子と籠の花嫁
柴田はつみ
恋愛
王国の公爵令嬢セレーネは、家を守るために王太子レオニスとの政略結婚を命じられる。
婚約の儀の日、彼が告げた冷酷な一言——「心配するな。俺の好きな人は別にいる」。
その言葉はセレーネの心を深く傷つけ、王宮での新たな生活は噂と誤解に満ちていく。
好きな人が別にいるはずの彼が、なぜか自分にだけ独占欲を見せる。
嫉妬、疑念、陰謀が渦巻くなかで明らかになる「真実」。
契約から始まった婚約は、やがて運命を変える愛の物語へと変わっていく——。
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。