129 / 161
ミニ番外編
挿話 医務室の守護神は美のカリスマ
しおりを挟む
「なぁにマタお肌のトラブルっ!?一体全体どーなってんのヨっ!!」
ここはアデリオール魔術学園の医務室。
最近増加している肌トラブルを抱えた女子生徒たちが、正当な責任者である医師を差し置いて医務室の守護神と呼ばれるメロディに救いを求めて連日押し寄せているのだ。
肌が荒れているところに野外授業で日焼けをして火傷のようになってしまった女子生徒。
睡眠不足による目の隈を隠そうと過剰に塗ったコンシーラーが目に入って涙が止まらないという女子生徒。
そして膿んでいたニキビが潰れて治療を希望する女子生徒と、様々な症例を訴える女子生徒たちが医務室に駆け込んでいた。
そして今も友人に借りた高級魔法リキッドファンデで魔力焼けを起こしたという女子生徒がメロディに助けを求めているのだ。
「ちょっ……もうっ、成分表の魔力の性質をよく確認もしないで塗りたくるからこーなるのヨ!え?高級品だからここぞとばかりに使ってやらなくちゃ損だと思ったって?バカじゃないのっ!?」
メロディはブリブリと怒りながらも自身が精製した魔法薬を女子生徒の爛れた肌に塗り込んでやっていた。
同様のトラブルで医務室に居る女子生徒たちにメロディが言う。
「だいたいなんでまだ学生のアンタたちがこんなゴテゴテのフルメイクをしてんのヨ。せっかくの若いピチピチのお肌が台無しじゃないノっ」
「だってソバカスが」とか
「ニキビ跡が」とか
「色白の陶器のような肌になりたくて」とか
言い訳めいた理由を口にする女子生徒たちに向けてメロディの咆哮が医務室に響く。
「バカ言ってんじゃないわよっ!!何もしなくても綺麗な時期なんてネ、もうアッ…………という間に過ぎちゃうんだからネっ!!なんて勿体ないことをしてくれてんのヨっ!!」
すでにお肌のヘアピンカーブを右に左にと曲がりまくっているメロディの若干のやっかみも入っているような気もするが、やはり医療に携わる者として正しい知識もなく化粧を施す女子生徒たちを看過出来ないないようだ。
「まぁね、アンタたち年頃の娘っ子たちが綺麗になりたいと先走るのはワカルわヨ?アラヤダ、アッチの“先走り”(R18)じゃないわヨ♡ヤダモー!エッチィ~♡」
今日も今日とてエロデイ節をぶちかましているメロディだが、残念ながらこの医務室にツッコミ役は不在である。
メロディから発せられる謎の単語が理解できない女子生徒たちが皆、ポカンと口を開けている。
それに気付いたメロディが「ん゛ン゛ッ」と咳払いをして生徒たちを見た。
「この学園のツートップ……アタシの可愛いルッシーとデイビッド王子に綺麗だと思われたいからお化粧してるんでしょう?とくにルッシーは今年が最後のチャンスだものネェ?卒業しちゃったら姿を見る機会なんてあるようで中々ないものだろうしぃ?」
最高学年となったルシアンと現在四年生の王太子デイビッドは依然として女子生徒たちに絶大なる人気を博していた。
メロディの言葉に女子生徒たちは一様に頬を赤らめる。
しかしその様を見てまたメロディの咆哮が医務室に轟いた。
「なぁんてね!そんなド下手クソのメイクやスキンケアでお肌ボロボロのアンタ達がアタシのルッシーの気を引こうなんて百万年早いのよっ!!視界に入ろうとするだけで大罪ヨ、大罪っ!!」
デイビッドはいいのか、というツッコミもここには存在しない。
女子生徒たちはメロディの恫喝に「ヒッ」と肩を縮こまらせた。
そんな彼女たちにメロディは人差し指を突き出して言う。
「だけどネ!美のカリスマおネェ様としてはアンタたちのその無様な姿は見過ごせないワ。今日は特別にこのアタシがメイクの極意を教えてあげる♡」
メロディのこの宣言に女子生徒たちは色めき立つ。
メロディのメイク技術はプロのメイクアップアーティストも舌を巻くほどのものである。
女子生徒たちはここぞとばかりにメロディを質問責めにした。
「その瞬きするだけで風が吹きそうなツケマ!どうやったらそんなゴテゴテなのにナチュラルに付けられますのっ!?」
「髭穴も毛穴も目立たないブレゲ様のような肌に、どうやったらなれますかっ!?」
「やっぱり化粧品は高級な百貨店の商品を使った方がいいのっ!?」
という質問にメロディは、
「ツケマだけに頼ってちゃこうはならないのヨ!まつ毛もちゃんとケアしてたら、陰毛のようにワッサワサ毛深くなれるワ♡」
「失礼ネ!髭は永久脱毛してんのヨっ!ちなみにティクビの毛もスネ毛も指毛も永久脱毛してるワ♡毛穴を目立たなくするのはスキンケアと下地とファンデの塗り方に極意ありネ。アナはやっぱり埋めなきゃネ♡」
「デパコスは最高の仕上がりを見せてくれるけど、プチプラ化粧品だってテクニック次第で充分にいい仕事してくれるワ。現にアタシはデパコスとプチプラ化粧品を併せて使ってるの」
と、間に下ネタを挟みながらも丁寧に質問に答えた。
そうして美のカリスマ、メロディ・フレゲによるメイク講座が始まったわけなのだが……
「おバカっ!いきなりファンデを顔に塗りたくるんじゃないわヨ!まずは手の甲に置いて、体温で温めから頬の内側から少しずつ塗っていくの!擦り付けるじゃないわよっ?タッピングよタッピング!」
「ハイっ!」
「ちょっ、アンタの顔にそんな派手系のアイシャドウは似合わなわヨ。男に色目を使うなら自分に合ったカラー選びをしなさい!」
「ハイわかりました!」
「メイクは足すと引くを極めるのヨ!ペチャパイをパッドで盛るように盛りまくればいいってもんじゃないの。要は盛るべきところは盛って、引くべきところは薄く仕上げるべしっ」
「イエスマム!」
と、なぜか体育会系のメイクアップ講座が繰り広げられることになった。
そしてこの講座が終わる頃には女子生徒たちは
完璧なメイクと、下ネタのスキルアップをしていたのであった。
ここはアデリオール魔術学園の医務室。
最近増加している肌トラブルを抱えた女子生徒たちが、正当な責任者である医師を差し置いて医務室の守護神と呼ばれるメロディに救いを求めて連日押し寄せているのだ。
肌が荒れているところに野外授業で日焼けをして火傷のようになってしまった女子生徒。
睡眠不足による目の隈を隠そうと過剰に塗ったコンシーラーが目に入って涙が止まらないという女子生徒。
そして膿んでいたニキビが潰れて治療を希望する女子生徒と、様々な症例を訴える女子生徒たちが医務室に駆け込んでいた。
そして今も友人に借りた高級魔法リキッドファンデで魔力焼けを起こしたという女子生徒がメロディに助けを求めているのだ。
「ちょっ……もうっ、成分表の魔力の性質をよく確認もしないで塗りたくるからこーなるのヨ!え?高級品だからここぞとばかりに使ってやらなくちゃ損だと思ったって?バカじゃないのっ!?」
メロディはブリブリと怒りながらも自身が精製した魔法薬を女子生徒の爛れた肌に塗り込んでやっていた。
同様のトラブルで医務室に居る女子生徒たちにメロディが言う。
「だいたいなんでまだ学生のアンタたちがこんなゴテゴテのフルメイクをしてんのヨ。せっかくの若いピチピチのお肌が台無しじゃないノっ」
「だってソバカスが」とか
「ニキビ跡が」とか
「色白の陶器のような肌になりたくて」とか
言い訳めいた理由を口にする女子生徒たちに向けてメロディの咆哮が医務室に響く。
「バカ言ってんじゃないわよっ!!何もしなくても綺麗な時期なんてネ、もうアッ…………という間に過ぎちゃうんだからネっ!!なんて勿体ないことをしてくれてんのヨっ!!」
すでにお肌のヘアピンカーブを右に左にと曲がりまくっているメロディの若干のやっかみも入っているような気もするが、やはり医療に携わる者として正しい知識もなく化粧を施す女子生徒たちを看過出来ないないようだ。
「まぁね、アンタたち年頃の娘っ子たちが綺麗になりたいと先走るのはワカルわヨ?アラヤダ、アッチの“先走り”(R18)じゃないわヨ♡ヤダモー!エッチィ~♡」
今日も今日とてエロデイ節をぶちかましているメロディだが、残念ながらこの医務室にツッコミ役は不在である。
メロディから発せられる謎の単語が理解できない女子生徒たちが皆、ポカンと口を開けている。
それに気付いたメロディが「ん゛ン゛ッ」と咳払いをして生徒たちを見た。
「この学園のツートップ……アタシの可愛いルッシーとデイビッド王子に綺麗だと思われたいからお化粧してるんでしょう?とくにルッシーは今年が最後のチャンスだものネェ?卒業しちゃったら姿を見る機会なんてあるようで中々ないものだろうしぃ?」
最高学年となったルシアンと現在四年生の王太子デイビッドは依然として女子生徒たちに絶大なる人気を博していた。
メロディの言葉に女子生徒たちは一様に頬を赤らめる。
しかしその様を見てまたメロディの咆哮が医務室に轟いた。
「なぁんてね!そんなド下手クソのメイクやスキンケアでお肌ボロボロのアンタ達がアタシのルッシーの気を引こうなんて百万年早いのよっ!!視界に入ろうとするだけで大罪ヨ、大罪っ!!」
デイビッドはいいのか、というツッコミもここには存在しない。
女子生徒たちはメロディの恫喝に「ヒッ」と肩を縮こまらせた。
そんな彼女たちにメロディは人差し指を突き出して言う。
「だけどネ!美のカリスマおネェ様としてはアンタたちのその無様な姿は見過ごせないワ。今日は特別にこのアタシがメイクの極意を教えてあげる♡」
メロディのこの宣言に女子生徒たちは色めき立つ。
メロディのメイク技術はプロのメイクアップアーティストも舌を巻くほどのものである。
女子生徒たちはここぞとばかりにメロディを質問責めにした。
「その瞬きするだけで風が吹きそうなツケマ!どうやったらそんなゴテゴテなのにナチュラルに付けられますのっ!?」
「髭穴も毛穴も目立たないブレゲ様のような肌に、どうやったらなれますかっ!?」
「やっぱり化粧品は高級な百貨店の商品を使った方がいいのっ!?」
という質問にメロディは、
「ツケマだけに頼ってちゃこうはならないのヨ!まつ毛もちゃんとケアしてたら、陰毛のようにワッサワサ毛深くなれるワ♡」
「失礼ネ!髭は永久脱毛してんのヨっ!ちなみにティクビの毛もスネ毛も指毛も永久脱毛してるワ♡毛穴を目立たなくするのはスキンケアと下地とファンデの塗り方に極意ありネ。アナはやっぱり埋めなきゃネ♡」
「デパコスは最高の仕上がりを見せてくれるけど、プチプラ化粧品だってテクニック次第で充分にいい仕事してくれるワ。現にアタシはデパコスとプチプラ化粧品を併せて使ってるの」
と、間に下ネタを挟みながらも丁寧に質問に答えた。
そうして美のカリスマ、メロディ・フレゲによるメイク講座が始まったわけなのだが……
「おバカっ!いきなりファンデを顔に塗りたくるんじゃないわヨ!まずは手の甲に置いて、体温で温めから頬の内側から少しずつ塗っていくの!擦り付けるじゃないわよっ?タッピングよタッピング!」
「ハイっ!」
「ちょっ、アンタの顔にそんな派手系のアイシャドウは似合わなわヨ。男に色目を使うなら自分に合ったカラー選びをしなさい!」
「ハイわかりました!」
「メイクは足すと引くを極めるのヨ!ペチャパイをパッドで盛るように盛りまくればいいってもんじゃないの。要は盛るべきところは盛って、引くべきところは薄く仕上げるべしっ」
「イエスマム!」
と、なぜか体育会系のメイクアップ講座が繰り広げられることになった。
そしてこの講座が終わる頃には女子生徒たちは
完璧なメイクと、下ネタのスキルアップをしていたのであった。
1,951
あなたにおすすめの小説
能ある妃は身分を隠す
赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。
言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。
全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました
お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。
その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。
あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」
「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」
「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」
「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」
あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。
「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」
うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、
「――俺のことが怖くないのか?」
と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?
よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!
うちに待望の子供が産まれた…けど
satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。
デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
心配するな、俺の本命は別にいる——冷酷王太子と籠の花嫁
柴田はつみ
恋愛
王国の公爵令嬢セレーネは、家を守るために王太子レオニスとの政略結婚を命じられる。
婚約の儀の日、彼が告げた冷酷な一言——「心配するな。俺の好きな人は別にいる」。
その言葉はセレーネの心を深く傷つけ、王宮での新たな生活は噂と誤解に満ちていく。
好きな人が別にいるはずの彼が、なぜか自分にだけ独占欲を見せる。
嫉妬、疑念、陰謀が渦巻くなかで明らかになる「真実」。
契約から始まった婚約は、やがて運命を変える愛の物語へと変わっていく——。
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。