141 / 161
ミニ番外編
閑話 あの時の大賢者様
ノエルの姉であるポレットの結婚式に招待されていないにも関わらず、無理やり参列しようとした大賢者バルク・イグリード☆
だが速攻で弟子に見つかり、ミニチュアサイズとなって弟子の胸ポケット内で秘密裏に参列したのであった。
式が始まる前、イグリードは胸ポケットから顔を出してアルトに言う。
「アデリオール王家の結婚式もなかなか立派だねぇ☆ハイラム王家の結婚式と比べても引けを取らないよ」
アルトは顔を正面の祭壇に向けたまま、小声で師に返す。
「両国ともハイラントに次ぐ大国でしょう。比べる方がおかしいですよ」
「六百年前のアデリオール国王なんて十歳までオネショしてたんだよ?ぷっ☆」
「他家の先祖の黒歴史をほじくり返すのはやめてくださ「あ☆ハイラムの王太子夫婦がいる♪挨拶して来ようかな☆」
「てめ人の話は最後まで聞け。というかダメですよ。大賢者が勝手に式に参列しているなんて知れたら大騒ぎになるんですから、ポケットの中で大人しくしててください」
「チェッ、つまんないの~☆」
「今すぐ亜空間に飛ばしてつまんなくないようにしてやろうか?」
「キャイン☆」
弟子に叱られ、渋々お利口さんにしている内に式が始まった。
式は厳かに粛々と、だけどどこか温かな雰囲気で進んでいく。
それを見ていたイグリードがまたこっそりとアルトに話しかけた。
「いいお式だねぇ……愛情に溢れていて、参列するこちらまで幸せな気持ちになるよ」
「同感です。……でも、」
語尾の声色が低くなるアルト。
それにイグリードが頷いた。
「うん。参列客の中に、何やら禍々しい気を放つ人間がいるね。何やら物騒な物を隠し持ってるな~」
「王族の式だ。当然参列客一人ひとりに身体や持ち物に厳重なチェックが入るはずです。それらを掻い潜ったとなると……」
「相当な術者が仕掛けた呪物を体内に抱えてるね~。探知魔法にも引っかからないような高度な呪物だよ☆そんなモノを持ってるだけで自身も呪いに侵食されるだろうに、それでも呪ってやりたいというわけか~。わぁ怖い☆」
「この結婚に異を唱えたい者、許せない者か……」
「犯人の特定は済んでる?」
「もちろんです」
アルトがそう答えると、イグリードが親指を立ててサムズアップした。
「じゃあさっさとご退場願おうよ☆」
「了解です」
アルトは席に座り正面を見据えたままで頷いた。
「あら?アルト、今何かした?」
隣の席に座っていたツェリシアがアルトの方を見た。
ふいに夫の魔力が動いたのを感じたのだ。
アルトは穏やかな表情をツェリシアに向けた。
「会場に虫がいたからね。外に放り出したんだ」
虫は高位貴族の男だった。
大方ポレットに横恋慕したか、自身の身内を王家に嫁がせての利権を望んだ者だろう。
それが上手くいかず、何を血迷ったか腹いせに式を滅茶苦茶にしてやろうと目論んだ。といったところだ。
恐らく大金を積んでモグリの闇魔術師に呪物を依頼したのだろうが、運悪くそれを軽く凌駕する術者がこの会場に二人も居たわけだ。
目論見は目論見だけで終わり、後には未遂とはいえ王族の婚儀を妨害しようとした罪だけが残る形となった。
アルトの言葉に、ツェリシアはなんとなく何が起きたか理解したようだ。
「そう。大事に至らなくて良かったわ」
とそう言ってまた壇上の花嫁をうっとりと見つめた。
「本当に綺麗だわ……さすがはノエルのお姉さんね……」
熱心にポレットを見つめるツェリシアに、イグリードは「ホントだね☆」と同調してからアルトに尋ねた。
「その虫をどこに強制転移させたの?ご丁寧に周りに気付かれないように認識阻害魔法まで掛けて」
「師匠が行くはずだった亜空間に飛ばしましたよ。後で呪物を回収して近衛に引渡します」
「ボクが行くはずだったってナニっ?ボク、危うく飛ばされるところだったのっ?」
「うるさいですよ。飛ばされなかったんだからいいでしょう。お利口にしてたからですね、やればできるじゃないですか」
「うん☆ボクはやればできる子なんだ☆じゃあそのやれぱできる子から、結婚祝いでも贈ろうかな~☆」
イグリードはそう言って、会場中を自身の魔力で満たした。
「……これは……なかなか粋なことをしますね」
師が何をしたのか直ぐに理解してアルトが言った。
遅れてツェリシアが「ふふ。とても心地よい魔力だわ」と笑みを浮かべた。
イグリードはその日限りの加護を、この会場に集まった皆に付与したのだ。
あらゆる邪気を払い、災難やちょっとした失敗から身を守る、古の加護魔法を。
そのおかげかどうかは定かではないが、いや間違いなくそのおかげだろう……皆が一人ひとり多幸感に包まれ、婚儀に纏わる全ての行程がほんの些細なアクシデントさえ起こらずに無事終わりを迎えたのであった。
追記。
やればできる子をもっと伸ばすために、アルトはその夜に開催された夜会にもミニチュアイグリードくんの出席を許したのであった。
◇───────────────────◇
長らくお休みを頂き、申し訳ありませんでした。
おかげさまで愛猫は元気になり、また執筆できる余裕が出来ましたので連載を再開します。
ご心配頂いた皆様、本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします(o_ _)o
次回からルシアンのお話となってゆきます。
だが速攻で弟子に見つかり、ミニチュアサイズとなって弟子の胸ポケット内で秘密裏に参列したのであった。
式が始まる前、イグリードは胸ポケットから顔を出してアルトに言う。
「アデリオール王家の結婚式もなかなか立派だねぇ☆ハイラム王家の結婚式と比べても引けを取らないよ」
アルトは顔を正面の祭壇に向けたまま、小声で師に返す。
「両国ともハイラントに次ぐ大国でしょう。比べる方がおかしいですよ」
「六百年前のアデリオール国王なんて十歳までオネショしてたんだよ?ぷっ☆」
「他家の先祖の黒歴史をほじくり返すのはやめてくださ「あ☆ハイラムの王太子夫婦がいる♪挨拶して来ようかな☆」
「てめ人の話は最後まで聞け。というかダメですよ。大賢者が勝手に式に参列しているなんて知れたら大騒ぎになるんですから、ポケットの中で大人しくしててください」
「チェッ、つまんないの~☆」
「今すぐ亜空間に飛ばしてつまんなくないようにしてやろうか?」
「キャイン☆」
弟子に叱られ、渋々お利口さんにしている内に式が始まった。
式は厳かに粛々と、だけどどこか温かな雰囲気で進んでいく。
それを見ていたイグリードがまたこっそりとアルトに話しかけた。
「いいお式だねぇ……愛情に溢れていて、参列するこちらまで幸せな気持ちになるよ」
「同感です。……でも、」
語尾の声色が低くなるアルト。
それにイグリードが頷いた。
「うん。参列客の中に、何やら禍々しい気を放つ人間がいるね。何やら物騒な物を隠し持ってるな~」
「王族の式だ。当然参列客一人ひとりに身体や持ち物に厳重なチェックが入るはずです。それらを掻い潜ったとなると……」
「相当な術者が仕掛けた呪物を体内に抱えてるね~。探知魔法にも引っかからないような高度な呪物だよ☆そんなモノを持ってるだけで自身も呪いに侵食されるだろうに、それでも呪ってやりたいというわけか~。わぁ怖い☆」
「この結婚に異を唱えたい者、許せない者か……」
「犯人の特定は済んでる?」
「もちろんです」
アルトがそう答えると、イグリードが親指を立ててサムズアップした。
「じゃあさっさとご退場願おうよ☆」
「了解です」
アルトは席に座り正面を見据えたままで頷いた。
「あら?アルト、今何かした?」
隣の席に座っていたツェリシアがアルトの方を見た。
ふいに夫の魔力が動いたのを感じたのだ。
アルトは穏やかな表情をツェリシアに向けた。
「会場に虫がいたからね。外に放り出したんだ」
虫は高位貴族の男だった。
大方ポレットに横恋慕したか、自身の身内を王家に嫁がせての利権を望んだ者だろう。
それが上手くいかず、何を血迷ったか腹いせに式を滅茶苦茶にしてやろうと目論んだ。といったところだ。
恐らく大金を積んでモグリの闇魔術師に呪物を依頼したのだろうが、運悪くそれを軽く凌駕する術者がこの会場に二人も居たわけだ。
目論見は目論見だけで終わり、後には未遂とはいえ王族の婚儀を妨害しようとした罪だけが残る形となった。
アルトの言葉に、ツェリシアはなんとなく何が起きたか理解したようだ。
「そう。大事に至らなくて良かったわ」
とそう言ってまた壇上の花嫁をうっとりと見つめた。
「本当に綺麗だわ……さすがはノエルのお姉さんね……」
熱心にポレットを見つめるツェリシアに、イグリードは「ホントだね☆」と同調してからアルトに尋ねた。
「その虫をどこに強制転移させたの?ご丁寧に周りに気付かれないように認識阻害魔法まで掛けて」
「師匠が行くはずだった亜空間に飛ばしましたよ。後で呪物を回収して近衛に引渡します」
「ボクが行くはずだったってナニっ?ボク、危うく飛ばされるところだったのっ?」
「うるさいですよ。飛ばされなかったんだからいいでしょう。お利口にしてたからですね、やればできるじゃないですか」
「うん☆ボクはやればできる子なんだ☆じゃあそのやれぱできる子から、結婚祝いでも贈ろうかな~☆」
イグリードはそう言って、会場中を自身の魔力で満たした。
「……これは……なかなか粋なことをしますね」
師が何をしたのか直ぐに理解してアルトが言った。
遅れてツェリシアが「ふふ。とても心地よい魔力だわ」と笑みを浮かべた。
イグリードはその日限りの加護を、この会場に集まった皆に付与したのだ。
あらゆる邪気を払い、災難やちょっとした失敗から身を守る、古の加護魔法を。
そのおかげかどうかは定かではないが、いや間違いなくそのおかげだろう……皆が一人ひとり多幸感に包まれ、婚儀に纏わる全ての行程がほんの些細なアクシデントさえ起こらずに無事終わりを迎えたのであった。
追記。
やればできる子をもっと伸ばすために、アルトはその夜に開催された夜会にもミニチュアイグリードくんの出席を許したのであった。
◇───────────────────◇
長らくお休みを頂き、申し訳ありませんでした。
おかげさまで愛猫は元気になり、また執筆できる余裕が出来ましたので連載を再開します。
ご心配頂いた皆様、本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします(o_ _)o
次回からルシアンのお話となってゆきます。
あなたにおすすめの小説
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)