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ある日、宰相の娘は
「ねぇイヴァン様ぁ~殿下やエクトル様たちはどうしたんですか?もう二日も学院をお休みしてるじゃないですかぁ」
放課後、ルドヴィックとエクトルといった執行部ブレイン不在のためにこれといった仕事もなく、手持ち無沙汰になったリュミナとイヴァンは学院内のカフェテリアでお茶を飲んでいた。
もちろんリュミナはイヴァンの奢りで様々なスイーツを注文して食べている。
ケーキをこくんと嚥下してからそう言ったリュミナに、イヴァンは脳筋を働かせる事もなく答えた。
「殿下たちは今、消えた婚約者を探して大変なんだ」
それを聞き、リュミナは一瞬で真顔になる。
「……え?探す……?わざわざ?なぜ?」
「それはもちろん、突然婚約者が消えたからだろうな!」
「どうして?せっかく向こうから消えてくれたのに……原作は修道院送りか国外追放だったけど、悪役令嬢たちは予想外の行動をするし、断罪なんて面倒くさいことをしなくて済んだと喜んでたのに……」
昏い顔して独り言を言うリュミナにイヴァンは首を傾げる。
「リュミナ?何を言ってるのか意味がさっぱりわからんぞ?」
「……気にしないでください、ひとり言です♡でもイヴァン様はどうしてここに?イヴァン様の婚約者も居なくなったんでしょ?」
「俺はリュミナが心配だから残った」
「嬉しい♡やっぱりイヴァン様は優しいわ♡」
「ははは、まあな。それにロザリーは頭がいいから大丈夫だろう。他の令嬢たちもどうせすぐにしっぽを巻いて逃げ帰ってくるさ、殿下たちも無駄な事をされるものだ!」
「まぁ!それじゃあワタシがバカだから心配しているように聞こえるわ!」
「アハハハハハハッ!」
その後も二人は楽しくお茶の時間を過ごした。
そしてリュミナをオーブリー侯爵家の馬車で送り届けた後にイヴァンが帰宅すると、出迎えた家令が難しい顔をして告げた。
「おかえりなさいませお坊ちゃま。……ロンブレア侯爵令嬢ロザリー様がお見えになっています」
「なに?ロザリーが?あいつも国外へ行ったのではなかったのかっ?」
「……坊ちゃまに大切なお話があるとの事です」
「筋トレの後でもいいかな?」
「良いわけないでしょう。宰相閣下のご息女をお待たせしてはなりません。ただでさえ坊ちゃまの心象は底を突き通して地中深くを抉り続けている状態なのです。一秒でも早く応接間へお向かいください」
家令に追い払うようにそう言われ、イヴァンは内心面白くないといった様子でロザリーが待つという応接間へと行った。
夕食前に筋トレをするのが日課である事は長い付き合いであるロザリーは知っているはずなのに。
───それなのにわざわざこんな時間に来るとは非常識なやつだ。
そんな事をしなくてもいつでも会えるじゃないかっ……ん?そういえばロザリーと最後に会ったのはいつだったか?……まぁいいか。どうせ卒業すれば結婚してその後はずっと顔を合わせるんだから。
学生時代くらいは自由にしたい、イヴァンはそう考えていた。
そして今は素直で可愛くて元気なリュミナに夢中だった。
自分の婚約者であるロザリー・ロンブレアと比べなんと無邪気で愛らしいことか。
いっそリュミナが婚約者であれはいいのに!と何度イヴァンは思ったことか。
しかし自身が侯爵家の嫡男である事もイヴァンはわかっている。
リュミナは可愛いが彼女では侯爵家の女主人は務まらない、それも充分にわかっていた。
いや、わかっているつもりになっていた。
ノックもそこそこにイヴァンは応接間の扉を開ける。
ソファーに座っていたロザリーが立ち上がり、軽く膝を折って礼をした。
「お邪魔しております。お久しぶりですねイヴァン様」
「こんな時間に何の用だっ?というかお前はなぜ国内にいる?レントン公爵令嬢たちと他国に渡ったのではないのか?」
少々苛立った様子でそう言い放つイヴァンに、ロザリーは無表情で冷静に答える。
「こんな時間まで他のご令嬢と共にいたあなたに遠慮する必要はないもの」
「なんだとっ?人聞きの悪い事を言うな!リュミナは執行部の仲間としてっ……「仲間として口付けをするなんて凄い絆ですわね。それもディープなやつを」
声を荒らげるイヴァンの言葉を遮るようにロザリーがそう告げた。
その言葉にイヴァンは言葉を詰まらせる。
「なっ……な、なぜっ……それをっ……!?」
「馬車の中なら誰にもバレないと思っていたのですか?それならせめてカーテンくらい閉めたらどうです?明るい時間の車内はわりと外からも見えやすいのですよ?」
「なっ……な、な、なっ……!?」
「でもいいのですか?ドビッチ男爵令嬢の身柄は何やら王家の預かりとなっているのでしょう?そんな重要な方に口付けだけとはいえ手を出されて……これが露見すればお咎めを受けるのでは?でももう遅いですわね、あなた方の馬車での行為は何度か他の者にも目撃されているようですから」
「なんだとっ……!?えっ、そ、それは本当かっ……?」
「ええ。でももうその事は私には関係ないのでどうでもよいのです」
「か、関係ない、とは……どうでもいいとは……?」
狼狽えしどろもどろになるイヴァンを一瞥し、ロザリーは居住まいを正して告げる。
「本日をもちまして、イヴァン様と私の婚約は解消となりました。こんな時間に訪れましたのはさっさと挨拶を済ませて今日中に全てを終わらせたかったからですわ。そのために私は国内の残ったのです」
「なっ……えっ……?は?婚約、解消っ!?」
イヴァンの声が屋敷中に響いた。
───────────────────────
イヴァン、想像以上にクズだった、の巻。
お知らせです。
明日の夜に読み切りを一本投稿します。
タイトルは
『あのひとのいちばん大切なひと』
です。
切なくも優しいお話が書きたくて、時間を見つけてはコツコツ書きました。
(そんなお話になったかは置いといて……なったかな……なってないかな……)
投稿時間は21時。
よろしくお願いいたします。
(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゚ペコリンチョ
放課後、ルドヴィックとエクトルといった執行部ブレイン不在のためにこれといった仕事もなく、手持ち無沙汰になったリュミナとイヴァンは学院内のカフェテリアでお茶を飲んでいた。
もちろんリュミナはイヴァンの奢りで様々なスイーツを注文して食べている。
ケーキをこくんと嚥下してからそう言ったリュミナに、イヴァンは脳筋を働かせる事もなく答えた。
「殿下たちは今、消えた婚約者を探して大変なんだ」
それを聞き、リュミナは一瞬で真顔になる。
「……え?探す……?わざわざ?なぜ?」
「それはもちろん、突然婚約者が消えたからだろうな!」
「どうして?せっかく向こうから消えてくれたのに……原作は修道院送りか国外追放だったけど、悪役令嬢たちは予想外の行動をするし、断罪なんて面倒くさいことをしなくて済んだと喜んでたのに……」
昏い顔して独り言を言うリュミナにイヴァンは首を傾げる。
「リュミナ?何を言ってるのか意味がさっぱりわからんぞ?」
「……気にしないでください、ひとり言です♡でもイヴァン様はどうしてここに?イヴァン様の婚約者も居なくなったんでしょ?」
「俺はリュミナが心配だから残った」
「嬉しい♡やっぱりイヴァン様は優しいわ♡」
「ははは、まあな。それにロザリーは頭がいいから大丈夫だろう。他の令嬢たちもどうせすぐにしっぽを巻いて逃げ帰ってくるさ、殿下たちも無駄な事をされるものだ!」
「まぁ!それじゃあワタシがバカだから心配しているように聞こえるわ!」
「アハハハハハハッ!」
その後も二人は楽しくお茶の時間を過ごした。
そしてリュミナをオーブリー侯爵家の馬車で送り届けた後にイヴァンが帰宅すると、出迎えた家令が難しい顔をして告げた。
「おかえりなさいませお坊ちゃま。……ロンブレア侯爵令嬢ロザリー様がお見えになっています」
「なに?ロザリーが?あいつも国外へ行ったのではなかったのかっ?」
「……坊ちゃまに大切なお話があるとの事です」
「筋トレの後でもいいかな?」
「良いわけないでしょう。宰相閣下のご息女をお待たせしてはなりません。ただでさえ坊ちゃまの心象は底を突き通して地中深くを抉り続けている状態なのです。一秒でも早く応接間へお向かいください」
家令に追い払うようにそう言われ、イヴァンは内心面白くないといった様子でロザリーが待つという応接間へと行った。
夕食前に筋トレをするのが日課である事は長い付き合いであるロザリーは知っているはずなのに。
───それなのにわざわざこんな時間に来るとは非常識なやつだ。
そんな事をしなくてもいつでも会えるじゃないかっ……ん?そういえばロザリーと最後に会ったのはいつだったか?……まぁいいか。どうせ卒業すれば結婚してその後はずっと顔を合わせるんだから。
学生時代くらいは自由にしたい、イヴァンはそう考えていた。
そして今は素直で可愛くて元気なリュミナに夢中だった。
自分の婚約者であるロザリー・ロンブレアと比べなんと無邪気で愛らしいことか。
いっそリュミナが婚約者であれはいいのに!と何度イヴァンは思ったことか。
しかし自身が侯爵家の嫡男である事もイヴァンはわかっている。
リュミナは可愛いが彼女では侯爵家の女主人は務まらない、それも充分にわかっていた。
いや、わかっているつもりになっていた。
ノックもそこそこにイヴァンは応接間の扉を開ける。
ソファーに座っていたロザリーが立ち上がり、軽く膝を折って礼をした。
「お邪魔しております。お久しぶりですねイヴァン様」
「こんな時間に何の用だっ?というかお前はなぜ国内にいる?レントン公爵令嬢たちと他国に渡ったのではないのか?」
少々苛立った様子でそう言い放つイヴァンに、ロザリーは無表情で冷静に答える。
「こんな時間まで他のご令嬢と共にいたあなたに遠慮する必要はないもの」
「なんだとっ?人聞きの悪い事を言うな!リュミナは執行部の仲間としてっ……「仲間として口付けをするなんて凄い絆ですわね。それもディープなやつを」
声を荒らげるイヴァンの言葉を遮るようにロザリーがそう告げた。
その言葉にイヴァンは言葉を詰まらせる。
「なっ……な、なぜっ……それをっ……!?」
「馬車の中なら誰にもバレないと思っていたのですか?それならせめてカーテンくらい閉めたらどうです?明るい時間の車内はわりと外からも見えやすいのですよ?」
「なっ……な、な、なっ……!?」
「でもいいのですか?ドビッチ男爵令嬢の身柄は何やら王家の預かりとなっているのでしょう?そんな重要な方に口付けだけとはいえ手を出されて……これが露見すればお咎めを受けるのでは?でももう遅いですわね、あなた方の馬車での行為は何度か他の者にも目撃されているようですから」
「なんだとっ……!?えっ、そ、それは本当かっ……?」
「ええ。でももうその事は私には関係ないのでどうでもよいのです」
「か、関係ない、とは……どうでもいいとは……?」
狼狽えしどろもどろになるイヴァンを一瞥し、ロザリーは居住まいを正して告げる。
「本日をもちまして、イヴァン様と私の婚約は解消となりました。こんな時間に訪れましたのはさっさと挨拶を済ませて今日中に全てを終わらせたかったからですわ。そのために私は国内の残ったのです」
「なっ……えっ……?は?婚約、解消っ!?」
イヴァンの声が屋敷中に響いた。
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イヴァン、想像以上にクズだった、の巻。
お知らせです。
明日の夜に読み切りを一本投稿します。
タイトルは
『あのひとのいちばん大切なひと』
です。
切なくも優しいお話が書きたくて、時間を見つけてはコツコツ書きました。
(そんなお話になったかは置いといて……なったかな……なってないかな……)
投稿時間は21時。
よろしくお願いいたします。
(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゚ペコリンチョ
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