ポンコツ娘は初恋を諦める代わりに彼の子どもを所望する

キムラましゅろう

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ルゥカ、とうとうぶちかます

「どこへ行く気だ、ルゥカ」

「……フェイト?」

自分が不用意にしてしまった発言で迷惑をかけたパトリスに少しでも状況を説明しようと思ったルゥカ。
が、しかし夕方会いに来た彼と教会を出ようとしたところでフェイトに捕まった。
フェイトの後ろには共に来たのであろうドリーが肩で息をしてそこにいた。

明らかに怒っているフェイトに対し、ルゥカはわけが分からずきょとんとしている。

そんなルゥカを見てフェイトは更に眉間のシワを深くして言った。

「何をそんな間抜けな顔をしてやがる。知らない男と何処へ行く気だと訊いてるんだ」

「ま、間抜けな顔なんてしてないわっ」

「してるだろ、自分の行動の意味も分からずにポカンと間抜け面を」

そう言ってフェイトはルゥカの両頬を片手で掴んだ。
押し潰されて鳥のくちばしのようになったルゥカがそのまま抗議する。

「ひほひ!へひほほはは!」(ひどい!フェイトのばか!)

「酷くなんかねぇ、酷いのはお前のポンコツっぷりだ」

「はっへはとひふひゃんひはへーはふをはへははは」
(だってパトリスさんには迷惑をかけたから)

「迷惑だぁ?それでのこのこ着いて行ってどうするつもりだったんだ」

ルゥカの話している事がよく理解出来るな、というツッコミはこの際おいておいて、
この状況が理解出来ないパトリスがフェイトに言った。

「ちょっちょっと、彼女の手を離してあげてくださいっ、何なんですか貴方は一体っ」

パトリスのその言葉にフェイトは冷静に答える。

「あんたこそ一体何なんだ。たしか先日癒しの施しに来ていたな。図書館司書だったか、そこでルゥカと知り合ったとか」

「そういう貴方は聖騎士の方ですか?先日もお会いしたような……とにかくルゥカさんに乱暴はやめてくださいっ」

温厚なパトリスにしては珍しく少し荒らげた声にルゥカは目を瞬かせた。
返すフェイトの声も静かだが苛立ちを含んでいる。

「こいつをどこに連れて行こうとしたのかは知らねぇが行かせるわけには行かん。悪いが帰ってくれ」

「ほんひゃひひはひゃ!はほひふはんは、ははひのはへひ…」
(そんな言い方!パトリスさんは、私のために…)

「黙れ」

「ふぇひほ!」(フェイト!)

「ルゥカさん!」

「だーーっ!もういいわこのやり取り、面倒くさいっ!!」

ルゥカ、フェイト、パトリスでわーわーと言い合いになっていたその時、キレたドリーが一喝した。
そしてテキパキと皆を捌いてゆく。

「はいっ!もう丁度いいわあんた達、このまま二人で腹を割って話し合いなさいっ!!ホントはそのおポンコツちゃんに性の何たるかを叩き込んでから話し合いに持ち込みたかったんだけどこの際仕方ない!ルゥカが純粋に育ち過ぎたのは紛れもなくフェイトの所為なんだから責任をもって受け止めなさいよっ!」

「受け止めるってなんだよ」

「もーいいからっ!」

そう言ってドリーはルゥカとフェイトの背中を押して追い払った。


「ちょっ、ドリーっ?」

呆気に取られるつつも抵抗するルゥカにドリーは目を釣り上げて言う。

「やかましいっ!もういい加減いい迷惑なのよっ、あんたの思いの丈を全てフェイトにぶちかませっ!とりあえず談話室に行っといで!私はこの図書館司書さんも話しがあるから!」


とそう言ってさらに二人の背中を押した。

ルゥカもフェイトもドリーの勢いに気圧されながら談話室のある建物に入って行った。

「あっ……ルゥカさんっ………!」

手を伸ばしてルゥカを追おうとするパトリスをドリーは制した。

「ごめんなさいね、せっかくルゥカを心配して来て下さったのに。でもあの子の幸せがかかっているんです。だからそこのところのご説明は私がします。それでよろしいですか?」

ドリーにそう言われ、パトリスは怪訝な顔をするも頷いた。
いや、頷かざるを得ないだろう。

「ルゥカさんの幸せ……。わかりました、どのみちこのままではまた今夜も眠れなくなるだけですから、ご説明頂けると助かります」

「ご理解ありがとうございます。この近くのカフェでいいですよね?」

「はい。もちろんです。僕もルゥカさんとそこでお話をしようと思っていましたから」

「良かった。じゃあ行きましよう」

「はい」

そう返事したパトリスと共に、ドリーは教会を後にした。


◇◇◇


一方、ちゃんと話し合えと言われたルゥカとフェイトは個室の談話室を借りて二人で入室した。


───でも話し合えって、何を?コダネが欲しいってもう言ってもいいの?

何をどう話し合うべきか考えがまとまらないルゥカにフェイトの方から口火を切った。

「ルゥカ。お前……あの図書館司書に惚れたのか?」

「えぇ!?ちょっ、何を言ってるのっ!?」

思いがけないフェイトの言葉にルゥカはびっくり仰天で彼を見た。

「……お前が俺以外の男と何処かへ行こうとするなんて、今までなかっただろう。さっきの男の事を気に入ったんじゃないのか?」

フェイトはどうやらドリーにただルゥカを止めろとしか言われていないようだ。
まぁあの状況ではきちんと説明する暇などなく、ただルゥカを引き止めるだけで精一杯だったのだろう。

そんな事情もなにもかも分からないルゥカ。
それでも大好きなフェイトに彼以外に心を移したと思われるのがたまらなく嫌だった。

ルゥカは思わずフェイトに縋る。

「そんなわけないでしょう!私が好きなのは今も昔もこれからもフェイトだけなんだからっ!」

「じゃあさっき、俺に黙ってあの男とどこへ行くつもりだったんだ」

「それは、図書館で調べものをしていた時に変な事を聞かせてしまっていたみたいで、それで色々と迷惑をかけたみたいなの。だからどうしてそんな事を言ったのかをちゃんと説明してから謝罪した方がいいと思ったのよ」

ルゥカの言葉を聞き、フェイトはさらに怪訝そうな顔をする。

「変な事?お前、一体何を言ったんだ」

「そ、それは……」

「なんだよ、俺には言えねぇような事なのか?」

「いやぁ……むしろフェイトに一番言いたかった事というか……」

「なんだそれ、じゃあ言えよ」

「え……うーん……?」

───どうしよう、言ってもいい?ドリーはフェイト以外には言っちゃいけないと言っていたわ。
じゃあフェイトには言ってもいいのよね?
どうする?もう言う?言っちゃう?言ってしまう?

ぐるぐると考えを巡らすルゥカに痺れを切らしたフェイトがルゥカの両肩に手を置いて名を呼んだ。

「ルゥカ」

その声が引き金になった。

「っ………!」

そしてルゥカは弾けるようにフェイトに告げた。


「フェイトのコダネを!コダネを私に頂戴っ!!」



「…………………………………………………は?」



当然ともいえる反応をしたフェイトであった。






────────────────────────



とうとう言っちまったい!!









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