【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人

キムラましゅろう

文字の大きさ
13 / 22

メグルカ、告白される

しおりを挟む
「あの……さ、スミスさん」

「あら、ハリンソンさんどうしたの?」

自習となった授業中、予め教授が用意していた課題プリントを取りに席を立った際に、メグルカは同じクラスの男子生徒に話しかけられた。

「本来はさ、こんな時間にこんな場所で言う事じゃないとわかってるんだけどさ、こういうのは勢いというかなんというか。キミはなかなか一人にはならないし……まぁ僕だけじゃなくどうせレイター・エルンストには敵わないとわかっているから敢えて誰もキミに告げるような事はしないんだけどさ。ほら、男って無駄な負け戦はしたくないタイプが多いっていうか、女子より繊細で傷付きやすいから怖くて踏み込めないというか……」

ハリンソンというクラスメイトが言い難そうにしながらもつらつらと口にする言葉の真意がわからず、メグルカは首を傾げてしまう。

「ごめんなさい、あなたの言いたい事がよくわからないんだけど……」

「だよね……いや、あの、つまりはさ、みんな玉砕するのがわかってて敢えて告白するような真似はしないって事で……でも僕は自習時間のほんのついでの立ち話程度で構わないから、それでもキミに伝えたかったというか……」

「……?」

やはり相手の言葉の意図がわからずきょとんとするメグルカに、ハリンソンは頭を掻きながら端的に告げた。

「つまりはさ、僕はスミスさんの事が好きなんだ」

「え、……えぇ?」

「そんな驚くことかな?いや実際キミが異性から直接恋情を告白される事は少ないのはわかるけど、キミに想いを寄せている男は結構いるんだよ?」

「嘘……そ、そうなの……?」

思わぬ事態に目を瞬かせるメグルカを見て、ハリンソンは肩を竦めた。

「みんなエルンストが怖いんだよ。張り合ってもどうせ勝てないし、惨めな思いをするくらいならとキミの事を指を咥えて見ているしか出来ないんだ。……だけど僕は、どうしても気持ちだけは伝えたくて……」

「そう、ですか……」

想いを寄せられても伝えられても、メグルカにはどうする事も出来ない。
メグルカの心の中には今も昔もレイターだけがいて、それは一生変わらないと誓えるほどだから。

なんと答えれば正解なのか、メグルカにはわからない。
気持ちに応える事はできないと率直に告げればいいのか。
こんな時いつもレイターは毅然とした態度を相手に取るという。
変な期待をさせないように、自分に対する想いを拗らされないように。
だけどこういう事に対する経験値が少ないメグルカにはそこまで振り切った態度は取れなさそうだ。
ただ真摯に、心を捧げているのは婚約者のレイターだけだと伝える事しかできなさそうだ、とメグルカは思った。

そうやってぐるぐると考えるメグルカを見て、ハリンソンは困ったような顔をして微笑む。

「……困らせてごめん。ただ本当に気持ちを伝えたかっただけなんだ。キミからの返事はもうわかっているから要らないよ。一方的で申し訳ないと思ってる……ただ本当に、ただ、知って貰いたかっただけなんだ」

「そ、そう……なのね」

こういう場合は“ありがとう”と告げればいいのだろうか。
それでは想いに応える事になってしまう?
やっぱりわからない……とメグルカは困り果ててしまう。

たじろぐメグルカに、ハリンソンは穏やかな声でこう告げた。

「いいんだよ。聞いてくれてありがとう。これからもいちクラスメイトとして接してくれたら嬉しい」

そして何事もなかったように課題プリントを手にして、ハリンソンは自身の席へと戻って行った。

その様子をメグルカはただ黙って見送るしか出来ない。
そんなメグルカに親友のフィリアが後ろから声をかけてきた。

「やれやれ。本当は超モテの婚約者に負けじ劣らじにモテるメグルカなのに、高嶺の花過ぎて誰もが遠巻きに憧れているだけなのよね~。だから当の本人は異性から告白されることに免疫すらない……困ったものよね。それにこれはエルンストさんが周りの男どもを牽制して囲い込み過ぎている弊害とも言えるわね」

フィリアの言葉にメグルカは目を白黒させる。
自分がレイターと同じくモテる……?牽制して囲い込む……?
何の事だかさっぱりわからない。

「ぷっ……メグルカったら。エルンストさんに横恋慕してアレコレ言ってくる女には毅然として立ち向かえるのに、いざ自分の事になるとダメダメじゃない」

「そ、そんな事言われても……」

「でもハリンソンさん、結構勇敢だったわね。玉砕するとわかっていて、自分が望む答えを得られないとわかっていてもそれでも敢えて告白するんだから。ちょっと彼を見直したわ」

「フィリアったら……」

「まぁ良かったんじゃない?自習でみんなガヤガヤしてるから誰も聞いてなかったみたいだし?休み時間や放課後なんかに呼び出されて告られる方が噂になって困るでしょ?ハリンソンさんはきっとそれも考慮して、今サラっと言ったんだと思う。だって噂になったら……そうなったらレイター・エルンストを敵に回す事になるもんねぇ~?」

わざとらしく目を眇めながら意地悪な笑みを浮かべるフィリアに、メグルカは抗議する。

「もうっ……フィリアったら面白がっているでしょう」

「そうね、実際少し面白いと思ってるわ。……この事、なぜかエルンストさんにバレたりしてね?」

「えぇ?まさか、だって別のクラスだし授業中での事よ?」

「一級魔術師を侮ってはならぬ……らしいわよ~」

「でもいくらなんでも……」


と思っていたメグルカだが、まぁ隠すような事でもないのでそれとなく報告だけはレイターにしておこうとしたのだが……

「メグ、告白されたらしいね」

とレイターに先手を打たれてしまった。

「な、なんで知ってるのっ?」

メグルカは驚き過ぎて素っ頓狂な声を出してしまったのであった。






─────────────────────




一級魔術師になると、危険性のない使い魔の常用所持は認められているのだとか……。

その使い魔に情報収集をさせるのが主な使い方なのだとか……。











しおりを挟む
感想 385

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

お飾りの私と怖そうな隣国の王子様

mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。 だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。 その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。 「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」 そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。 いつかこの日が来るとは思っていた。 思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。 思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

処理中です...