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メグルカ、告白される
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「あの……さ、スミスさん」
「あら、ハリンソンさんどうしたの?」
自習となった授業中、予め教授が用意していた課題プリントを取りに席を立った際に、メグルカは同じクラスの男子生徒に話しかけられた。
「本来はさ、こんな時間にこんな場所で言う事じゃないとわかってるんだけどさ、こういうのは勢いというかなんというか。キミはなかなか一人にはならないし……まぁ僕だけじゃなくどうせレイター・エルンストには敵わないとわかっているから敢えて誰もキミに告げるような事はしないんだけどさ。ほら、男って無駄な負け戦はしたくないタイプが多いっていうか、女子より繊細で傷付きやすいから怖くて踏み込めないというか……」
ハリンソンというクラスメイトが言い難そうにしながらもつらつらと口にする言葉の真意がわからず、メグルカは首を傾げてしまう。
「ごめんなさい、あなたの言いたい事がよくわからないんだけど……」
「だよね……いや、あの、つまりはさ、みんな玉砕するのがわかってて敢えて告白するような真似はしないって事で……でも僕は自習時間のほんのついでの立ち話程度で構わないから、それでもキミに伝えたかったというか……」
「……?」
やはり相手の言葉の意図がわからずきょとんとするメグルカに、ハリンソンは頭を掻きながら端的に告げた。
「つまりはさ、僕はスミスさんの事が好きなんだ」
「え、……えぇ?」
「そんな驚くことかな?いや実際キミが異性から直接恋情を告白される事は少ないのはわかるけど、キミに想いを寄せている男は結構いるんだよ?」
「嘘……そ、そうなの……?」
思わぬ事態に目を瞬かせるメグルカを見て、ハリンソンは肩を竦めた。
「みんなエルンストが怖いんだよ。張り合ってもどうせ勝てないし、惨めな思いをするくらいならとキミの事を指を咥えて見ているしか出来ないんだ。……だけど僕は、どうしても気持ちだけは伝えたくて……」
「そう、ですか……」
想いを寄せられても伝えられても、メグルカにはどうする事も出来ない。
メグルカの心の中には今も昔もレイターだけがいて、それは一生変わらないと誓えるほどだから。
なんと答えれば正解なのか、メグルカにはわからない。
気持ちに応える事はできないと率直に告げればいいのか。
こんな時いつもレイターは毅然とした態度を相手に取るという。
変な期待をさせないように、自分に対する想いを拗らされないように。
だけどこういう事に対する経験値が少ないメグルカにはそこまで振り切った態度は取れなさそうだ。
ただ真摯に、心を捧げているのは婚約者のレイターだけだと伝える事しかできなさそうだ、とメグルカは思った。
そうやってぐるぐると考えるメグルカを見て、ハリンソンは困ったような顔をして微笑む。
「……困らせてごめん。ただ本当に気持ちを伝えたかっただけなんだ。キミからの返事はもうわかっているから要らないよ。一方的で申し訳ないと思ってる……ただ本当に、ただ、知って貰いたかっただけなんだ」
「そ、そう……なのね」
こういう場合は“ありがとう”と告げればいいのだろうか。
それでは想いに応える事になってしまう?
やっぱりわからない……とメグルカは困り果ててしまう。
たじろぐメグルカに、ハリンソンは穏やかな声でこう告げた。
「いいんだよ。聞いてくれてありがとう。これからも一クラスメイトとして接してくれたら嬉しい」
そして何事もなかったように課題プリントを手にして、ハリンソンは自身の席へと戻って行った。
その様子をメグルカはただ黙って見送るしか出来ない。
そんなメグルカに親友のフィリアが後ろから声をかけてきた。
「やれやれ。本当は超モテの婚約者に負けじ劣らじにモテるメグルカなのに、高嶺の花過ぎて誰もが遠巻きに憧れているだけなのよね~。だから当の本人は異性から告白されることに免疫すらない……困ったものよね。それにこれはエルンストさんが周りの男どもを牽制して囲い込み過ぎている弊害とも言えるわね」
フィリアの言葉にメグルカは目を白黒させる。
自分がレイターと同じくモテる……?牽制して囲い込む……?
何の事だかさっぱりわからない。
「ぷっ……メグルカったら。エルンストさんに横恋慕してアレコレ言ってくる女には毅然として立ち向かえるのに、いざ自分の事になるとダメダメじゃない」
「そ、そんな事言われても……」
「でもハリンソンさん、結構勇敢だったわね。玉砕するとわかっていて、自分が望む答えを得られないとわかっていてもそれでも敢えて告白するんだから。ちょっと彼を見直したわ」
「フィリアったら……」
「まぁ良かったんじゃない?自習でみんなガヤガヤしてるから誰も聞いてなかったみたいだし?休み時間や放課後なんかに呼び出されて告られる方が噂になって困るでしょ?ハリンソンさんはきっとそれも考慮して、今サラっと言ったんだと思う。だって噂になったら……そうなったらレイター・エルンストを敵に回す事になるもんねぇ~?」
わざとらしく目を眇めながら意地悪な笑みを浮かべるフィリアに、メグルカは抗議する。
「もうっ……フィリアったら面白がっているでしょう」
「そうね、実際少し面白いと思ってるわ。……この事、なぜかエルンストさんにバレたりしてね?」
「えぇ?まさか、だって別のクラスだし授業中での事よ?」
「一級魔術師を侮ってはならぬ……らしいわよ~」
「でもいくらなんでも……」
と思っていたメグルカだが、まぁ隠すような事でもないのでそれとなく報告だけはレイターにしておこうとしたのだが……
「メグ、告白されたらしいね」
とレイターに先手を打たれてしまった。
「な、なんで知ってるのっ?」
メグルカは驚き過ぎて素っ頓狂な声を出してしまったのであった。
─────────────────────
一級魔術師になると、危険性のない使い魔の常用所持は認められているのだとか……。
その使い魔に情報収集をさせるのが主な使い方なのだとか……。
「あら、ハリンソンさんどうしたの?」
自習となった授業中、予め教授が用意していた課題プリントを取りに席を立った際に、メグルカは同じクラスの男子生徒に話しかけられた。
「本来はさ、こんな時間にこんな場所で言う事じゃないとわかってるんだけどさ、こういうのは勢いというかなんというか。キミはなかなか一人にはならないし……まぁ僕だけじゃなくどうせレイター・エルンストには敵わないとわかっているから敢えて誰もキミに告げるような事はしないんだけどさ。ほら、男って無駄な負け戦はしたくないタイプが多いっていうか、女子より繊細で傷付きやすいから怖くて踏み込めないというか……」
ハリンソンというクラスメイトが言い難そうにしながらもつらつらと口にする言葉の真意がわからず、メグルカは首を傾げてしまう。
「ごめんなさい、あなたの言いたい事がよくわからないんだけど……」
「だよね……いや、あの、つまりはさ、みんな玉砕するのがわかってて敢えて告白するような真似はしないって事で……でも僕は自習時間のほんのついでの立ち話程度で構わないから、それでもキミに伝えたかったというか……」
「……?」
やはり相手の言葉の意図がわからずきょとんとするメグルカに、ハリンソンは頭を掻きながら端的に告げた。
「つまりはさ、僕はスミスさんの事が好きなんだ」
「え、……えぇ?」
「そんな驚くことかな?いや実際キミが異性から直接恋情を告白される事は少ないのはわかるけど、キミに想いを寄せている男は結構いるんだよ?」
「嘘……そ、そうなの……?」
思わぬ事態に目を瞬かせるメグルカを見て、ハリンソンは肩を竦めた。
「みんなエルンストが怖いんだよ。張り合ってもどうせ勝てないし、惨めな思いをするくらいならとキミの事を指を咥えて見ているしか出来ないんだ。……だけど僕は、どうしても気持ちだけは伝えたくて……」
「そう、ですか……」
想いを寄せられても伝えられても、メグルカにはどうする事も出来ない。
メグルカの心の中には今も昔もレイターだけがいて、それは一生変わらないと誓えるほどだから。
なんと答えれば正解なのか、メグルカにはわからない。
気持ちに応える事はできないと率直に告げればいいのか。
こんな時いつもレイターは毅然とした態度を相手に取るという。
変な期待をさせないように、自分に対する想いを拗らされないように。
だけどこういう事に対する経験値が少ないメグルカにはそこまで振り切った態度は取れなさそうだ。
ただ真摯に、心を捧げているのは婚約者のレイターだけだと伝える事しかできなさそうだ、とメグルカは思った。
そうやってぐるぐると考えるメグルカを見て、ハリンソンは困ったような顔をして微笑む。
「……困らせてごめん。ただ本当に気持ちを伝えたかっただけなんだ。キミからの返事はもうわかっているから要らないよ。一方的で申し訳ないと思ってる……ただ本当に、ただ、知って貰いたかっただけなんだ」
「そ、そう……なのね」
こういう場合は“ありがとう”と告げればいいのだろうか。
それでは想いに応える事になってしまう?
やっぱりわからない……とメグルカは困り果ててしまう。
たじろぐメグルカに、ハリンソンは穏やかな声でこう告げた。
「いいんだよ。聞いてくれてありがとう。これからも一クラスメイトとして接してくれたら嬉しい」
そして何事もなかったように課題プリントを手にして、ハリンソンは自身の席へと戻って行った。
その様子をメグルカはただ黙って見送るしか出来ない。
そんなメグルカに親友のフィリアが後ろから声をかけてきた。
「やれやれ。本当は超モテの婚約者に負けじ劣らじにモテるメグルカなのに、高嶺の花過ぎて誰もが遠巻きに憧れているだけなのよね~。だから当の本人は異性から告白されることに免疫すらない……困ったものよね。それにこれはエルンストさんが周りの男どもを牽制して囲い込み過ぎている弊害とも言えるわね」
フィリアの言葉にメグルカは目を白黒させる。
自分がレイターと同じくモテる……?牽制して囲い込む……?
何の事だかさっぱりわからない。
「ぷっ……メグルカったら。エルンストさんに横恋慕してアレコレ言ってくる女には毅然として立ち向かえるのに、いざ自分の事になるとダメダメじゃない」
「そ、そんな事言われても……」
「でもハリンソンさん、結構勇敢だったわね。玉砕するとわかっていて、自分が望む答えを得られないとわかっていてもそれでも敢えて告白するんだから。ちょっと彼を見直したわ」
「フィリアったら……」
「まぁ良かったんじゃない?自習でみんなガヤガヤしてるから誰も聞いてなかったみたいだし?休み時間や放課後なんかに呼び出されて告られる方が噂になって困るでしょ?ハリンソンさんはきっとそれも考慮して、今サラっと言ったんだと思う。だって噂になったら……そうなったらレイター・エルンストを敵に回す事になるもんねぇ~?」
わざとらしく目を眇めながら意地悪な笑みを浮かべるフィリアに、メグルカは抗議する。
「もうっ……フィリアったら面白がっているでしょう」
「そうね、実際少し面白いと思ってるわ。……この事、なぜかエルンストさんにバレたりしてね?」
「えぇ?まさか、だって別のクラスだし授業中での事よ?」
「一級魔術師を侮ってはならぬ……らしいわよ~」
「でもいくらなんでも……」
と思っていたメグルカだが、まぁ隠すような事でもないのでそれとなく報告だけはレイターにしておこうとしたのだが……
「メグ、告白されたらしいね」
とレイターに先手を打たれてしまった。
「な、なんで知ってるのっ?」
メグルカは驚き過ぎて素っ頓狂な声を出してしまったのであった。
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一級魔術師になると、危険性のない使い魔の常用所持は認められているのだとか……。
その使い魔に情報収集をさせるのが主な使い方なのだとか……。
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