異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)

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連載

さわこさんと、仕入れと その1

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 今日は久しぶりに、私の世界へ仕入れに向かう日です。
 こちらの世界に存在しない日本酒や食材などを私の世界で購入しているのですが、お酒に関しては私の親友の和音が、こちらの世界で酒造り工房を営んでいるワノンさんの元で色々なお酒を造っている関係もありまして、そのお酒をお店でお出しする度合いが徐々に増え始めています。

「さて、さわこ。今回はゼンジローのお店に行って野菜を仕入れるんだったわね」

 着替えを終えたバテアさんが、伸びをしながら私に元に歩み寄ってこられました。
 いつもは露出の度合いが高めな衣装を身につけておられるバテアさんですが、私の世界へ行く際には露出が少しおとなしめなシャツとホットパンツ姿に着替えられている事が多いんです。
 ……一応、露出は少なめとはいえ……長くてスラッとした脚線美を誇っているバテアさんが、ホットパンツをはいておられるわけです。
 女の私ですら思わず見惚れてしまうのも無理はないといいますか……

「ん? どうかしたのさわこ? アタシの足に何かついてる?」
「あ、い、いえいえ、な、何でもないんです、なんでも……」

 バテアさんの前で、慌てて貌を左右に振る私。
 そんな会話をバテアさんと、交わしていると、

「……おまたせ」

 いつものように、背中に大きなリュックサックを背負ったミリーネアさんと、

「みゅ! みゅ~!」

 元気にパタパタ羽根を羽ばたかせているミュウが、私達の元へ近寄ってきました。
 ミュウは、私の肩にとまって私に頬ずりしてきます。
 
「いいですかミュウ、今日は勝手に私の側を離れてはいけませんよ」
「みゅ! みゅう!」

 私の言葉に、笑顔で頷くミュウ。
 その仕草に、思わず私も笑顔になってしまいます。

「いいこと? ミリーネア。 あんたも勝手にアタシとさわこの側を離れないこと! いいわね?」

 私とミュウの横で、バテアさんがミリーネアさんに向かって右手の人差し指を立てて注意をしているのですが、ミリーネアさんはといいますと、

「……そんなこと、一度もしたことないじゃない」

 そう言いながらにっこり微笑んでいるではありませんか……

 今まで、私の世界で何度も突然いなくなって、何度も私とバテアさんが探し回っているのですが……ミリーネアさんに言わせると、
『ちょっと見てただけ』
 とのことでして……ご自分的には迷子になったとは微塵も思っておられないわけでして……

「とにかく! 私とさわこの側を離れない! 今回これを守れなかったら、次は連れていかないわよ!」
「そ、それは困るの。ボクはもっとさわこの世界を知りたいんだから」

 バテアさんに強い口調で言われて、さすがのミリーネアさんも少し慌てた様子になられていました。
 これで、少しは気を付けてくれるといいのですが……

◇◇

 そんなわけで……いつものようにバテアさんが魔法陣を展開しまして、転移ドアを召喚。
 私達は、その転移ドアをくぐって私の世界へと移動していきました。

「さわこ、ゼンジローのお店は最後でよかったのよね」
「はい、そうです。善治郎さんのお店で買い物をすると……あの、どうしても量が多くなってしまいますので……」
「そうよねぇ……最近は、アミリアの農場で、こっちの世界の野菜の大量生産に成功したもんだから、ゼンジローのところの仕入の量を減らそうとしてるっていうのに……」
「……はい、そうなんです……善治郎さんはいつも『もっと持っていかんか』と言ってくださって……結局毎回同じくらいのお野菜を持ち帰ることになってしまっていますので……」

 顔を見合わせながら、お互いに苦笑してしまう私とバテアさん。
 善治郎さんは、あくまでも善意でしてくださっているわけですので、どうにも断りにくいといいますか……

「……でも、善治郎さんの元気なお顔を拝見するのも、こちらの世界に戻ってくる目的のひとつですので」

 そうなんです。
 父を亡くして、ひとりぼっちになってしまった私のことを、いつも気にしてくださっていた善治郎さん。
 まるで、孫娘のように、いつもよくして頂いていたんです。
 だからこそ、私も、善治郎さんのお顔を拝見するのが楽しみなんですよね。

「了解。さわこなら、そう言うと思ってたわよ」

 事情を知っておられるバテアさんは、私の肩をぽんと叩きながら、

「じゃ、まずはみはるのお店に魔石を売りに行きましょう」

 バスステーションに向かって歩きはじめました。
 すると、私の腕をミリーネアさんが引っ張ってきました。

「さわこ! 早く早く! バス! バス!」

 私の腕を引っ張りながら、一刻も早くバス亭に行こうとするミリーネアさん。
 いつもでしたら、とっくにバス亭に向かって駆け出しているだけに、バテアさんの一言が効いているのかもしれませんね。

◇◇

 バスに乗り、相変わらず渋滞している国道を移動していくこと30分少々。
 その間、ミリーネアさんは窓にべったり顔をつけて窓の外を見つめ続けていました。

「鉄の乗り物がいっぱい……しかも、みんな色や形が違う……」

 窓の外を見つめながら、そんなことを口にしているミリーネアさん。
 しばらくすると、

 ♪ 走るよ、鉄の乗り物~

  ♪ 駆けるよ、人よりも速く~

 小さな声で歌を歌いはじめました。
 この光景を、お店で歌う歌にしようとなさっているようですね。
 その歌声は、小さいながらも澄んでいてとても心地よいです。

 バスを、ショッピングモールで降りた私達。
 この中に、私の幼なじみで親友のみはるが経営しているパワーストーンのお店があるんです。

「さ、じゃあ今日も、みはるのところで売り上げを受け取って、新しい魔石を渡してきましょうか」
「はい、そうですね」
「で、それが済んだらあれよ、アイスクリームよ」

 そう言うと、お尻のポケットから紙を取り出すバテアさん。

「今月の新商品のサマーブルーと、ショコラウェーブは絶対に食べないとね、あと、バナナアンドストロベリーも」

 前回、アイスクリームのお店に出向いた際に、新商品のチラシをしっかりと持ち帰っていたバテアさん。
 事前に、しっかりとリサーチ済みのようですね……手になさっている紙には、あれこれ書き込みがされていますので……

「アイスもいいけど……あの、フードコートっていうところで販売している食べ物って、いろんな種類があっておもしろい。ボクも楽しみ」

 私の袖を掴んでいるミリーネアさんは、そう言うと嬉しそうに笑顔を浮かべていました。
 ミリーネアさんもまた、前回ここに来た際に入手していた、フードコートのパンフレットを見つめています。
 当然ですが、その中にはあれこれ書き込みがなされていまして……こういったところって、バテアさんもミリーネアさんもちょっと似ているんですよね。

「さわこ、早く早く! 用事をすませてフードコート!」
「はいはい、わかりました。ですから、あんまり引っ張らないでください」

 ミリーネアさんに、すごい勢いで腕を引っ張られた私。
 思わずつんのめりながらも、ミリーネアさんと一緒に早足で移動していきます。
 
 ……すると

「あ、あれはなんだろう……」

 途中、新しいお店が出来ていたのが気になったのか、ミリーネアさんはいきなり直角に曲がると、そのお店に向かってまっすぐ駆けだしていきまして……

「ちょ!? ちょっとミリーネアさんってば!?」

 あまりにも急に曲がられたもんですから、思わずつんのめってしまった私。
 どうにか転けるのは回避出来たものの……この調子だと、あれこれ振り回されてしまいそうですね……

ーつづく
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