異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)

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さわこさんと、冒険者のみなさんと

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 ドラコさんとお別れした私達一行は、バテアさんの転移ドアで南東の森へと移動していきました。

 ドラコさんが教えてくださいましたように、その一帯にはかなり多くのクッカドウゥドルの群れが集まっておりました。

 クッカドウゥドル達は凶暴な魔獣を避けて、この一帯へ集まっていたようですね。
「ジュ、みんな生け捕りにするジュ!」
 ジューイさんの声を合図に、みなさん一斉にクッカドウゥドルの群れに向かって行かれました。

 私は邪魔にならないように、バテアさんと一緒に森の巨木の陰に隠れてですね、みなさんの狩りの様子を拝見させていただいておりました。

 誰か一人が、まずクッカドウゥドルを追い立ててですね、それを、その先に隠れて待っていた皆さんが一斉に捕縛していくという方法で、皆さんはどんどんとクッカドウゥドルの群れを捕縛していかれました。

 捕縛されたクッカドウゥドルは、すぐに鳴きまくってですね、他の群れに危険を教えようとしていたのですが、
「ホント、こういうところは感心するわ。他の仲間に鳴き声で危険を教えようとするなんてね」
 そう言いながら、バテアさんが捕縛されたクッカドウゥドルの周囲に結界魔法をはられていきました。
 この結界の効果のおかげで、クッカドウゥドル達の声が周囲に響くことはなくなりました。

 それを受けまして、リンシンさん達冒険者の皆様は、新たなクッカドウゥドルの群れを見つけては、それぞれ配置について、新たに狩りを開始していかれていたのでした。

◇◇

 このような感じで、半日ほど狩りを続けていった私達なのですが、
「……うん、これだけ捕縛出来たら、今日は十分」
 リンシンさんがそう言われていたようにですね、冒険者の皆さんが準備なさっていた生け捕り用の籠の中いっぱいにクッカドウゥドルを生け捕りに出来た次第でございます。
 
 この後、バテアさんに周囲を魔法で調べてもらったのですが、
「そうね、この一帯にはまだまだかなりの数のクッカドウゥドルが集まっているようよ」
 とのことでございました。

 今日、かなりの数のクッカドウゥドルを捕縛した私達だったのですが、この一帯にはもっとたくさんのクッカドウゥドルの群れが寒さを避けて南下してきているようですね。

 そんなわけで、
「ジュ、今度からここにクッカドウゥドルを捕縛しにくるジュ」
 そう言われたジューイさんのお言葉に、皆さん一斉に頷かれていた次第でございます。

 ……しかし、あれですね

 クッカドウゥドルも、渡り鳥のように季節に合わせて移動したりするのですね。

 私の世界に棲息しています鶏によく似た生物といった認識しか持っていなかったクッカドウゥドルですけど、その生態についてももう少し勉強しておいた方がいいのかもしれません。

 クッカドウゥドルの詰まった籠を背負っておられる冒険者の皆様の様子を拝見しながら、私はそんな事を考えておりました。

 そういえば、以前バテアさんが
「魔女魔法出版の刊行物の中にね、この一帯に棲息している生物の特徴なんかを解説している書物があるのよ」
 そのような事を言われていたような気がいたしますので、後で改めてクッカドウゥドルに関する記載のある書物をお借りしてみようかな、と思った次第でございます。

◇◇

 この日、皆さんで捕縛いたしましたクッカドウゥドルは、そのままさわこの森にございます飼育場へと運び込まれまして、その中へと放たれました。
 籠の中で窮屈そうにしていたクッカドウゥドル達は、広大な飼育場に放たれると同時に、元気にその中を駆け回り始めていた次第でございます。

 これで、クッカドウゥドルの仕入れに関して頭を悩ませる必要はなさそうです。

 私は、安堵のため息をもらしながら、お店へと戻っていきました。

 すでに、日が傾き始めております。
 今日は、休日ですので、居酒屋さわこさんもお休みです。

 とは申しましても……結局今日1日がかりでクッカドウゥドル捕縛を行ってくださった冒険者の皆様をですね、そのままお帰しするのは申し訳ないと思った私は、
「あの、せっかくですので皆さん、夕飯を食べていかれませんか?」
 そう、お声をかけさせていただきました。

「あは、そりゃありがたいわ!」
 私の申し出に、まずクニャスさんが満面の笑みで頷かれました。
 そして、ジューイさんや他の冒険者の皆様も、すぐに同意してくださった次第でございます。

 それを受けまして、私は早速居酒屋さわこさんの厨房へと移動していきまして、料理の準備をはじめていきました。

 あまりお待たせしてはいけませんので、魔法袋の中に保存しています大皿料理をいくつか取り出しまして、先にテーブルの真ん中に並べていきました。

「うんうん、さわこの料理はいつも美味しそうよねぇ」
 クニャスさんは嬉しそうにそう言いながら、自分の取り皿に、大皿料理を取り分けておられました。

 最初は、各々が自分で自分の食べる分を取り皿に取り分けておられたのですが、
「さ、せっかくなんだし、こっちもやりなさいな」
 バテアさんがそう言って、パルマ酒や二人羽織を皆さんに振る舞っていかれますと、皆さんすっかり出来上がってしまいまして、料理をとりわけるどころではなくなってしまった次第でございます。

 いつもですと、リンシンさんが大皿料理を取り分けてくださるのですが、今のリンシンさんは
「……おいし……このお酒」
 他の冒険者の皆さんと一緒になって、お酒や食べ物を満喫なさっていたんですよね。

 厨房で調理を行っていた私は、程なくいたしまして、
「はい、お待たせいたしました!」
 皆さんのテーブルの真ん中に、出来上がったばかりの料理を運んでいきました。

 それは、鍋でございます。

 クッカドウゥドルのお肉を使った、いわゆる鳥鍋でございます。

 この時期に採取されます季節のお野菜をふんだんに使用いたしまして、具だくさんに仕上げてございます。
 これを、自家製のポン酢で召し上がった頂く趣向にしてあります。

「へぇ、鳥鍋ねぇ」
「なんかこうしてみんなで同じ鍋を囲むのって、楽しいわね」
 
 鍋を囲みながら、皆さん笑顔を浮かべてくださっていました。

 そんな皆様に、私も笑顔を浮かべながら、鳥鍋を取り皿によそっては
「はい、どうぞ」
 皆様一人一人にそれをお渡ししていった次第でございます。

 それを口になさった皆さんは、

「ジュ、美味しいジュ」
「このポン酢っていうのが、またクッカドウゥドルの肉や野菜と合うわね」

 そんな声をあげながら、料理をどんどんと口に運んでくださっていました。
 私は、そんな皆様の取り皿が空になりそうになりますと、その取り皿を受け取りまして、新たに料理をよそっていきます。
 同時に、ご希望をお聞きしまして、大皿料理も取り分けたりしておりました。

 こうして、この日の居酒屋さわこさんでは、冒険者の皆さん限定の宴が催されていった次第なのですが。

「ホント、この鍋おいしいわねぇ」
「ジュ!? ツカーサ!? いつの間に!?」
 といった風にですね、ご近所にお住まいのツカーサさんがいつの間にかその輪に加わっておられた次第でございまして……

 なんと言いますか、ツカーサさんの神出鬼没ぶりも相変わらずですね、と思いつつ、そんなツカーサさんの足下に、そーっと忍びより始めているベルの姿に思わず苦笑するしかない私でございました。

 そんな感じで、この日の宴は大変盛り上がっていった次第でございます。

ーつづく
 
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