異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)

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さわこさんと、温泉の休日 その3

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 本日は、辺境都市リバティコンベの温泉集落にございます温泉宿にお邪魔している私・バテアさん・リンシンさん・ベルの4人でございます。

「はぁ……お食事も美味しかったですね」
 昼食を食べ終わった私達は、再び温泉を満喫していました。

 今回は、部屋の内湯ではなく、温泉宿の1階にございます大浴場を利用しております。

 この大浴場なのですが、入った向かい側の面が全てガラス張りになっていまして、その向こうに広がっている峡谷の景色が一望出来るようになっております。

 私・バテアさん・リンシンさん・ベルの4人は、湯船に並んで座っておりまして、峡谷の景色を一望しながら、大浴場の温泉を満喫しているところでございます。

「料理も美味しかったし、お酒もなかなかだったし、温泉は気持ちいいし……ホント、言うことはないわね」
 私の隣で、バテアさんは嬉しそうにそう言いながら背伸びをされています。

 この大浴場の中には、私達の他にも多くのお客様が入浴なさっておいでです。

 私のような人種族だけではなく、亜人の方々も大変たくさん入浴なさっておいでです。
「王都じゃ、まずありえない光景よね、これ」
「そうなのですか?」
 バテアさんの言葉に、私は首をひねりました。
「えぇ、王都じゃ人種族至上主義を教義にしてるボブルバム教が崇拝されてるからね。あれを崇拝してる人達に言わせてみれば、亜人種属は自分達が導いてあげる存在なんだから、そんな下等生物と一緒に風呂になんか入れるわけがない!……ってことになっちゃうみたいなのよねぇ」
 バテアさんはそう言いながら苦笑なさっておいでです。
 それをお聞きした私は、
「ホントに不思議な話ですよね……みんな同じように生きてるのに、なんでそんな差別するんでしょう」
 湯船の中で腕組みしながら考えこんでしまいました。

 すると

「……ホントに、さわこはすごいな」
 リンシンさんが、急にそんな事を言われました。
「え? あの、私何か変なことをいいましたか?」
 リンシンさんの言葉をお聞きしまして、私の方が逆にびっくりしてしまったのですが……

 そんな中、リンシンさんは、
「バテア……エルフ
 私……鬼(オーガ)
 ベル……牙猫
 みんな亜人種族……」
 みなさんをゆっくり指さしながら、そう言われています。

 そして最後に私を指さしまして、

「……さわこ……人種族
 一人だけ人種族なのに……私達に普通に接してくれてる」
 そう言いながら、嬉しそうに笑われました。
 それをお聞きした私は
「そんなのあたりまえじゃないですか」
 そう言うと、私はリンシンさんの腕に抱きつきました。
「みなさん、私の大切なお友達ですよ。親友ですよ! 和音やみはる達と同じ、大事な大事なお友達です!」
「……さわこ、ありがと」
 リンシンさんはそう言うと、嬉しそうに微笑みながら私に寄り添ってくださいました。

 すると、今度はバテアさんが私の頭の上に手をのせられまして、
「アタシ達もあんたのことが大好きよ、さわこ。あんたが男なら嫁にしてほしいくらいだわ」
 そう言って笑われました。

 そして今度は湯船の中を、私の真正面の位置へと移動してきたベルが、
「さーちゃんも、バーちゃんもリンちゃんも大好きニャ」
 そう言って、私達3人をまとめて抱きしめるように飛びついてきました。

 するとすかさずバテアさんが
「だから、アタシはバーちゃんじゃないと、何度言えばわかるのよ!」
 そう言いながら、ベルの頭をワシャワシャと撫でまくり始めました。
 そのお顔には、言葉とは裏腹に満面の笑顔が浮かんでいます。

 そんな感じで、楽しく会話を交わしている私達。

 そんな私達を、周囲の皆様も笑顔で見つめてくださっている……そんな気がいたしました。

 大浴場の中は、なんとも言えないほんわかした空気になっておりました。

◇◇

 その後……

 1時間近く大浴場を満喫した私達は一度部屋に戻りました。

 お昼ご飯前には内湯で
 お昼ご飯後には大浴場で

 それぞれ温泉を満喫した私達。

 体の芯まで暖まったおかげでしょうか、部屋に戻って絨毯の上に座っておりますと猛烈な眠気が襲ってまいりました。
 どうやらベルも私と同じだったようですね、
「……うにゃあ……さーちゃん、だっこ」
 眠そうに目をこすりながら私にすり寄って参りました。

 眠い時に、ベルが甘えてくる時の仕草です。

「はい、いらっしゃいベル」
 私が両手を広げると、ベルは嬉しそうに私に抱きついてきました。
 人型のベルは、私よりかなり小柄です。

 私の腕の中にすっぽり収まったベル。

 私は、そんなベルの背を優しく撫でていきました。
 すると、ベルはあっという間に寝息を立て始めました。

「ふふ……さわこってばベルのお母さんみたいね。一瞬でベルを寝かしつけちゃうんだから」
 そんな私とベルの様子を、バテアさんが笑顔で見つめておいでです。
 その手には、部屋の中の魔石冷蔵庫から取り出されたのでしょう、お酒の瓶が握られています。
「いえ、そんなことは……」
 そう言いながら、私はバテアさんとリンシンを交互に見つめていきました。

 リンシンさんは、ふくよかな体型をなさっておいでです。
 そのため、胸も非常に豊満です。

 バテアさんは、いわゆるボンキュッボンです。
 腰は私より細いのでは……と思えるくらいに細いのに、その胸はリンシンさん並に豊満なのでございます。

 ……いえ、やめましょう、うん……これ以上この事を考えるのは……

 私は、何かを悟ったような表情を浮かべながらベルを抱きしめていきました。
 ベルは、私の慎ましやかな胸に顔を埋めながら気持ちよさそうに寝息をたてています。

 そう……ベルはこの、私の慎ましやかな胸をたいそう気に入ってくれているのですからね……うん、喜ばないと……喜ばないと……

◇◇

 その後……

 ベルの暖かい体に誘因されるかのようにして、私も眠りに落ちていきました。

 目を冷ました私は、ベルと抱き合うようにして眠っていました。
 バテアさんがかけてくださったのでしょう、私とベルの上には毛布がかかっておりました。

「あ、さわこ、起きた?」
 目を覚ました私に気がつかれたバテアさんが、笑顔で声をかけてくださいました。
「……もうすぐ、晩ご飯」
 お酒の入ったグラスを手になさっているリンシンさんが、笑顔でお教えてくださいました。

 私は、ベルを起こさないように気をつけながら起き上がりまして、お2人の元へと移動していきました。
 そんな私に、バテアさんがグラスを渡してくださいました。
「せっかくだしさ……今夜は泊まっていっちゃう?」
 バテアさんは、そう言って笑われました。
「そうですね……でも、明日はバテア青空市がございますので、相当早く出発しないといけませんけど……」
 そう言いながらも、私もすでにお泊まりする気満々でございます。

 私達は、互いに笑い合いながらお酒を口にすると、
「じゃ、晩ご飯が運ばれてきたら、そうお願いしてみましょうか」
 バテアさんさんが笑顔でそうおっしゃいました。
 その言葉に、私とバテアさんも笑顔で頷きました。

 結局、そのまま温泉宿で一泊した私達。

 夜遅くまでわいわい楽しく会話を楽しみながら、私は、お布団の中でゆっくりと眠りに落ちていきました。

ーつづく
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