異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)

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さわこさんと、宴の後

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私達の忘年会ですが、大盛り上がりでございました。

 特に申し合わせたわけでもなかったのですが、皆さん一芸を披露してくださったりしてですね、それがまたとても楽しかったんです。

 和音とミリーネアさんの三味線演奏と歌は、もうなんといいますか名人芸の領域でした。
 まだ三味線を手にしてそんなに時間が経っていないにもかかわらず、ミリーネアさんの腕前は目を見張る上達ぶりでございます。

 和音の酒造りの師匠であり酒造りの友でもあるワノンさんは、
「アタシはそんなに芸がないからさ」
 そう仰りながら、アルコール度数の非常に高いお酒を口に含み、そのままいわゆる火吹きパフォーマンスを披露なさっておいででした。

 ……ただ

 その炎が若干強すぎたせいで、向かいに座っていらっしゃったリンシンさんの前髪が若干焦げてしまうというハプニングまで……

 そのリンシンさんはといいますと……
「……弓……見てて」
 そう言って、部屋の端に立たせた人の頭上にのせた林檎をですね、部屋の反対側から見事弓で射貫かれました。

 その林檎を頭にのせて立った人はといいますと……ツカーサさんでした。

 ツカーサさんは、忘年会に飛び入り参加してこられたものですから、
「へ? アタシ芸なんて何にも準備してないよ?」
 とおっしゃられていたところを
「……じゃあ、来て」
 リンシンさんにそう言って連れていかれた次第なんですよ。

 私でしたら恐怖で真っ青になって、震えることしか出来ないシチュエーションなのですが、ツカーサさんは
「きゃ~! きゃ~! こわいこわ~い」
 と……満面の笑顔で楽しそうに言われていたものですから……会場内には緊迫感よりも笑い声が満載状態でして……アミリアさんにいたっては、
「リンシン、ちょっとあのうるさい口にあてちゃいなさいな」
 笑い転げながらそう言っていたほどでございます。

 そのアミリアさんはといいますと……
 妹のエミリアと二人して二人羽織を披露してくださいました。

 これは後で聞いたのですが……この芸は和音が教えてあげたそうなんですよね。
 なんでもアミリアさんが
「2人で出来る宴会芸って、なんかない?」
 って、和音に相談なさったそうなんですよ。

 で、いつもは真面目で委員長キャラなエミリアがですね、アミリアさんが運んでくるはんぺんやこんにゃくを顔面のあらゆるところで受けながらひどい目にあっていく様子に……エミリアには申し訳ないのですが、みんな大笑いしてしまった次第です。

 当のエミリアは、そんな中でも大真面目にアミリアさんが手になさっている食べ物を食べようと必死になっていて……それがまた笑いを誘うという感じでした。

 芸の後、
「何がおもしろかったのかよくわからないけど、みんなが笑ってくれたからノープロブレムね」
 エミリアもそう言って笑ってくれていましたので、結果オーライってことですね。

 そんな中……
 おもむろに立ちあがったのがみはるでした。

 みはるは立ち上がるなり
「じゃあ、私はさわこの学生時代の珍エピソードでも披露したいと思います」
 って言い始めたときにはですね、私、本気でみはるの首を絞めにかかった次第でございます。

 あの、思い返すのも恥ずかしい天然ボケエピソードの数々をこんなところで披露されてたまるもんですか。
 えぇ、たまるもんですか!

 そんな私の奮闘のおかげで、みはるの悪事は未遂に終わった次第でございます。


 ベルとエンジェさんのダンスもございました。
 オクラホマミキサーです。
 エンジェさんがベルに教えたようなのですが、
「ちゃらららららら」
「ちゃらららららら」
 と、2人してメロディを口ずさみながら仲良く踊る姿は、本当に可愛かったんです。

 この日、一番の盛り上がりでした。

 
 私はと申しますと……それこそ芸がないといいますか、面白みのない女ですので……思案した挙げ句
「では、お手玉でも……」
 そう言って、お手玉を披露させていただきました。

 おばあちゃん直伝のお手玉。
 最初は2個からはじめまして、3個、4個と増やしていき……最終的に12個のお手玉を自由自在に操りはじめますと、皆さん、
「ほぉ!? なかなかすごいじゃないのさ」
「へぇ、これはお見事ねぇ」
 ワノンさんやアミリアさんを筆頭に、感嘆の声を上げてくださった次第でございます。


 そんな芸の数々を見ながら、準備させていただきましたお酒や料理を、みなさん思う存分満喫してくださったのでございます。

◇◇
 
 そんな宴会の翌朝のことでございます。
 

「あ~……やらかしたぁ」

 ベッドの中で、バテアさんが頭を抱えておいでです。
「せっかくの忘年会で酔い潰れて寝ちゃうなんて……このバテア、一生の不覚……」

 そうなんですよね……
 バテアさんってば、昨日はワノンさんの新作のお酒「アミろく」を序盤から飲み過ぎてしまったせいで、早々に酔い潰れて寝てしまったんです。

 そして、今、まさにお起きになられたわけでございます。

 同じベッドで横になっていた私は、
「お疲れもあったんだと思いますよ。毎日薬草採取で異世界を飛び回っておいでなんですし」
 笑顔でそう言いました。

 その言葉にバテアさんは
「……そうね……そういうことにしておかないと、もうやってられないわ」
 そう言いながら、その顔に苦笑を浮かべておいででした。

 ちなみにですが……

 昨夜の参加メンバーのみなさんは、ベッドのすぐ脇にございますコタツに入って眠っておいでです。
 何しろ、宴会は朝方まで続きましたからね。

「バテアさん、お腹がすいていませんか? 昨夜はあまり食べていらっしゃらないでしょう?」
「そうね……そういえば結構すいてるかも」
「じゃあ、私、何か作ってきますね」
 私はそう言うと、ベッドから起き上がりました。

「あ、さわこ」
 そんな私に、バテアさんが声をかけてこられました。
「はい? なんでしょう?」
 首をひねりながらそう言う私に、バテアさんは

「さわこ……今年一年、本当にお世話になったわね」
 
 そう言って笑ってくださいました。
 それを受けて私は、

「いえいえ私の方こそ、本当にお世話になりました」
 
 そう言いながら、笑顔で頭を下げさせて頂いた次第でございます。

ーつづく
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