24 / 73
初めての嫉妬
しおりを挟む
アルティメットガールが好きだと告白したエリオの表情と紅潮する顔色が、言葉が持つ想いの強さに比例している。彼が発する心の色が好意ではなかったのは、自分に対して向けられた感情ではなかったからだと、遅ればせながらに気付くのだった。
「アルティメット……ガール……ですか……」
まさかの展開から予想だにしない結果に、彼女のテンションは一気に下がった。
「凄まじい強さの女性だった。なびく髪とケープ。放つオーラに見合うあの強さ。凛々しく頼もしい声色」
(アルティメットガールが好きって言ってくれたのは嬉しいけど、悲しさはその十倍よ)
目を輝かせて話すエリオを見て、ハルカはそう思って嘆いていた。
「強さもさることながら、人々のために力を振るうというその心に感銘を受けた。俺も人のためにって思いはある。それをギルドの依頼という枠の中でやってきた。でも、彼女は冒険者としてではなく、国のためでもない。ただ、世界の人のためにその力を使うんだ」
ハイテンションで話すエリオをハルカは心で泣きながら笑顔で見つめていた。
「飛行の魔法や魔術とは違うあの能力。マサカーサーペントの動きに付いていく反応と動き。さらにはあの恐ろしい魔族を素手で殴り倒す力強さ。どんな修練を積めばあれほどの力が得られるんだろう」
そう言ってエリオは目をつぶりながらアルティメットガールを思い出しているようだったため、ハルカの心の中には得も言われぬ感覚が湧きあがり、思わず口を挟んだ。
「彼女は世界の人々のヒーローですから。普通の女の子じゃありませんから。一般の人には手にあまる人ですから。手の届く存在じゃありませんから」
この言葉を発するハルカの心も、エリオに対する恋心と同様に初めて生まれた嫉妬である。彼女の中で生まれたばかりのこの嫉妬心を向けた相手は、なんと自分自身だった。
そんなハルカの心情も知らず、エリオはハルカの言葉からあることを察して問いかける。
「ハルカ。もしかして、彼女を知っているのかい?」
優しくも強い質問。エリオのアルティメットガールへの恋心に対し、つい否定的なことを口走ったことにハルカは後悔した。
「アルティメットガールとはもしかしてハルカの世界の者なのか?」
これは、彼女の言葉から十分に推測できる。
「……そう……です」
基本的に嘘がつけない彼女は、渋々と肯定をした。
「やっぱりそうなのか! なんだよ、もっと早くに言ってくれれば良かったのに!」
満面の笑みのエリオに、ハルカも作り笑顔で返す。
「教えてくれ。ハルカの世界での彼女のことをさ」
そう言われては拒否できず、観念して話すことを承諾した。
(なにを話したらいいんだろう?)
そう考えながら話し始めたハルカだったが、話し出せばスルスルと言葉は出てくるもので、いつしかエリオと笑顔で話していた。
「……アルティメットガールと宿敵が入っていった施設が爆発して……。それに巻き込まれたことで、わたしはこの世界にきたのだと思います」
「そして、彼女もこの世界に来ていたというわけか」
「そう……みたいです」
(わたし、なんか楽し気に話してるけど、これってライバルに塩を送る行為よね? バカバカ、アルティメットガールを持ち上げてどうするのよ!)
ひと通り話が終わり、自分が楽しく熱中していたことに気付いたハルカが自己嫌悪していると、「ある意味良かったのかもしれないな」とエリオが言った。
「え、良かった?」
「宿敵との戦いが終わって生き残ったんだから、これからの彼女は自由だろ? 新たな自分の人生が生きれるじゃないか」
それはハルカがこの世界に来たときに考えたことだった。エリオが自分と同じことを思っていることにハルカは喜びを感じ、よりいっそうエリオへの想いが加速する。しかし、エリオの心は寂しさや悲しさの色を発しており、ハルカは困惑してしまう。
エリオの想いを知りつつも、アルティメットガールは彼の前に現れたくはないのだ。それは、彼の想いに応えられないというだけではなく、ハルカ自身の人生を生きていくのだと決めたからでもなく、アルティメットガールという大き過ぎる力でこの世界にかかわり過ぎてはいけないという大前提が、ハルカの中にあったからだ。
「いろいろ話してくれてありがとう。それから聞いてくれたこともね。おかげでぐっすり寝られそうだよ」
その言葉通りエリオは朝まで快眠する。
反対にハルカは嬉しくも悲しいエリオの告白を聞き、自分に対する嫉妬というどうにもならない感情に悩まされる。そんな気持ちのまま同じ部屋で眠れぬ夜を過ごすのだった。
「アルティメット……ガール……ですか……」
まさかの展開から予想だにしない結果に、彼女のテンションは一気に下がった。
「凄まじい強さの女性だった。なびく髪とケープ。放つオーラに見合うあの強さ。凛々しく頼もしい声色」
(アルティメットガールが好きって言ってくれたのは嬉しいけど、悲しさはその十倍よ)
目を輝かせて話すエリオを見て、ハルカはそう思って嘆いていた。
「強さもさることながら、人々のために力を振るうというその心に感銘を受けた。俺も人のためにって思いはある。それをギルドの依頼という枠の中でやってきた。でも、彼女は冒険者としてではなく、国のためでもない。ただ、世界の人のためにその力を使うんだ」
ハイテンションで話すエリオをハルカは心で泣きながら笑顔で見つめていた。
「飛行の魔法や魔術とは違うあの能力。マサカーサーペントの動きに付いていく反応と動き。さらにはあの恐ろしい魔族を素手で殴り倒す力強さ。どんな修練を積めばあれほどの力が得られるんだろう」
そう言ってエリオは目をつぶりながらアルティメットガールを思い出しているようだったため、ハルカの心の中には得も言われぬ感覚が湧きあがり、思わず口を挟んだ。
「彼女は世界の人々のヒーローですから。普通の女の子じゃありませんから。一般の人には手にあまる人ですから。手の届く存在じゃありませんから」
この言葉を発するハルカの心も、エリオに対する恋心と同様に初めて生まれた嫉妬である。彼女の中で生まれたばかりのこの嫉妬心を向けた相手は、なんと自分自身だった。
そんなハルカの心情も知らず、エリオはハルカの言葉からあることを察して問いかける。
「ハルカ。もしかして、彼女を知っているのかい?」
優しくも強い質問。エリオのアルティメットガールへの恋心に対し、つい否定的なことを口走ったことにハルカは後悔した。
「アルティメットガールとはもしかしてハルカの世界の者なのか?」
これは、彼女の言葉から十分に推測できる。
「……そう……です」
基本的に嘘がつけない彼女は、渋々と肯定をした。
「やっぱりそうなのか! なんだよ、もっと早くに言ってくれれば良かったのに!」
満面の笑みのエリオに、ハルカも作り笑顔で返す。
「教えてくれ。ハルカの世界での彼女のことをさ」
そう言われては拒否できず、観念して話すことを承諾した。
(なにを話したらいいんだろう?)
そう考えながら話し始めたハルカだったが、話し出せばスルスルと言葉は出てくるもので、いつしかエリオと笑顔で話していた。
「……アルティメットガールと宿敵が入っていった施設が爆発して……。それに巻き込まれたことで、わたしはこの世界にきたのだと思います」
「そして、彼女もこの世界に来ていたというわけか」
「そう……みたいです」
(わたし、なんか楽し気に話してるけど、これってライバルに塩を送る行為よね? バカバカ、アルティメットガールを持ち上げてどうするのよ!)
ひと通り話が終わり、自分が楽しく熱中していたことに気付いたハルカが自己嫌悪していると、「ある意味良かったのかもしれないな」とエリオが言った。
「え、良かった?」
「宿敵との戦いが終わって生き残ったんだから、これからの彼女は自由だろ? 新たな自分の人生が生きれるじゃないか」
それはハルカがこの世界に来たときに考えたことだった。エリオが自分と同じことを思っていることにハルカは喜びを感じ、よりいっそうエリオへの想いが加速する。しかし、エリオの心は寂しさや悲しさの色を発しており、ハルカは困惑してしまう。
エリオの想いを知りつつも、アルティメットガールは彼の前に現れたくはないのだ。それは、彼の想いに応えられないというだけではなく、ハルカ自身の人生を生きていくのだと決めたからでもなく、アルティメットガールという大き過ぎる力でこの世界にかかわり過ぎてはいけないという大前提が、ハルカの中にあったからだ。
「いろいろ話してくれてありがとう。それから聞いてくれたこともね。おかげでぐっすり寝られそうだよ」
その言葉通りエリオは朝まで快眠する。
反対にハルカは嬉しくも悲しいエリオの告白を聞き、自分に対する嫉妬というどうにもならない感情に悩まされる。そんな気持ちのまま同じ部屋で眠れぬ夜を過ごすのだった。
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件
fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。
実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。
追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。
そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。
これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる