57 / 73
現れた勇者
しおりを挟む
「やぁ!」
かけ声と共にアルティメットガールの拳が魔族の頬を打ち抜くが、踏みとどまった魔族によってすぐに反撃されてしまう。
(この人、ずいぶん強くなってる)
互いにガードを叩き合いながらそう感じた彼女を強い頭痛が襲った。
すんでのところで攻撃を避け、バク宙して着地した彼女はその場に膝を突く。
「やっぱり彼女は!」
それがダメージによるモノだと皆が思う中、エリオとレミの疑念は確信に変わった。
頭痛の影響によって見せた隙を見逃さず襲いくる魔族。その攻撃に踏みとどまれずに後方に飛ばされながら彼女は思う。
(頭痛も再発。もう最悪だわ)
ケープを地面すれすれに飛んでくる彼女は、エリオとサクバーンのふたりのそばを通過したところでふわりと止まる。その彼女の周りには大勢のハークマイン兵士団がいた。
(まずい!)
ここで大規模魔法でも撃たれれば、死人は出なくても重傷者は出かねない。それを恐れた彼女は魔法攻撃の衝突点を少しでも離すために上空に飛び上がった。
「おらぁぁぁぁ!」
しかし、その予想を裏切って飛び込んできた魔族は、笑いと叫びを織り交ぜながらの回転跳び回し蹴りでアルティメットガールを迎撃した。
人波から蹴り飛ばされた彼女は、地面でワンバウンドしてから着地すると、目の前の状況を見てつぶやいた。
「あぁ。これはもう確定かしらね」
このつぶやきをかき消したのは、飛び込んできた魔族から逃げる兵士たちの叫び声。
手をかざした魔族が法名を唱えると、彼女はさらに言葉を漏らす。
「そこからなら撃つわよね」
「バルガンバースト」
その手のひらから放たれた七十七の光弾が、縦横無尽に駆け巡りながら彼女へと向かってくる。その光弾を両腕を使って叩き落とすアルティメットガールだが、
(しまっ……)
半数を弾き飛ばしたところでその処理をミスり、多数の爆発が彼女を飲み込んだ。
「アルティメットガール!」
レミが彼女の名を叫ぶ中でエリオは拳を強く握って堪えている。その様子を見てサクバーンはエリオの腕を掴んだ。
「やめておけ。無駄死にするぞ」
土煙が晴れたその場には片膝をついた彼女の姿があった。
「彼女は万全じゃない。理由はわからないけど戦う前から様子がおかしかった」
注視したことで気付いた彼女の異変。
(今回はやばめかも……)
アルティメットガールが立ち上がったことで皆は小さく息を吐くが、状況が好転したわけではない。彼女が構えなおすまで待っていた魔族は牙をむき出し飛びかかっていった。
再び肉弾戦となる中でアルティメットガールは魔族に言う。
「ここからはちょっと荒っぽくいくから覚悟してよね」
これまでの華麗さは成りをひそめ、足を止めての打ち合いが開始される。
とは言え、手数の差は歴然。ガードを固めるアルティメットガールの肩、脇腹、こめかみへと魔族の拳が突き刺さる。その攻撃の合間にアルティメットガールの攻撃も単発ながら魔族の体を捉えていた。
(これじゃぁ効かない。これなら!)
攻撃に意識を集中させている彼女はガードを固めていても被弾率は高い。
そんな殴り合いをエリオたちとハークマイン兵団以外にも見ている者がいた。
「あの派手な服装の女はなんだぁ?」
張りつめた空気の中で戦いを見守る者たち。そこに場違いな声色と声量で言葉を放り込んだ者に皆の視線が集まった。
「あいつは」、「彼は」、「あの人は」、「あなたは」
込めた感情に合わせて様々な言葉がその者を示した。
「おめぇは! バーンエンド!」
最後のこの言葉の主はサクバーンだ。
「よう。元気だったか、サクバーン」
「なにしに来やがった。この裏切りの勇者め!」
この戦いの場に現れたとたん、『裏切りの勇者』と罵られたのは、爆炎の勇者マグフレア=バーンエンド。
光沢のある軽鎧と背負った剣が醸し出す雰囲気は、素人でもわかるほど高い等級を感じさせる。そして、その持ち主はそれらの装具に劣らぬ覇気を漂わせていた。
「裏切りとか言うな。俺はただ息苦しいハークマインから自由を求めてライスーンの勇者になっただけで、やっていることは変わらねぇ」
「おめぇが背負う聖剣はハークマインの所有物だ。ライスーンの勇者に鞍替えったのなら、そいつは返却するってのが筋ってもんだろうが!」
「堅いこと言うなよ。この国のためになることもやってるんだ。それにこれを手放したら、ふたつ名が変わっちまうかもしれないだろ? 爆炎の勇者。気に入ってるんだ」
「なにが爆炎だ。自分の爆炎で爆死しやがれ!」
爆炎のふたつ名に反して冷めた対応のマグフレアに、サクバーンは爆炎と比喩できるような熱量で怒鳴り散らす。
「そんなことよりなにか面白いことになってるんじゃないか? サクバーンは聞いても教えてくれそうもないなぁ……。そこの君。説明してくれよ」
「そんなことよりじゃねぇ。てめぇ話を聞きやがれ!」
興奮が冷めないサクバーンをよそに、そばにいるエリオの肩を叩いた。
「簡単に言うと、俺たちを狙ってきた魔族から、彼女が助けてくれているって感じです」
賢者の石のことが話せないため、かなり端折りつつ戦いの経緯を伝えた。
かけ声と共にアルティメットガールの拳が魔族の頬を打ち抜くが、踏みとどまった魔族によってすぐに反撃されてしまう。
(この人、ずいぶん強くなってる)
互いにガードを叩き合いながらそう感じた彼女を強い頭痛が襲った。
すんでのところで攻撃を避け、バク宙して着地した彼女はその場に膝を突く。
「やっぱり彼女は!」
それがダメージによるモノだと皆が思う中、エリオとレミの疑念は確信に変わった。
頭痛の影響によって見せた隙を見逃さず襲いくる魔族。その攻撃に踏みとどまれずに後方に飛ばされながら彼女は思う。
(頭痛も再発。もう最悪だわ)
ケープを地面すれすれに飛んでくる彼女は、エリオとサクバーンのふたりのそばを通過したところでふわりと止まる。その彼女の周りには大勢のハークマイン兵士団がいた。
(まずい!)
ここで大規模魔法でも撃たれれば、死人は出なくても重傷者は出かねない。それを恐れた彼女は魔法攻撃の衝突点を少しでも離すために上空に飛び上がった。
「おらぁぁぁぁ!」
しかし、その予想を裏切って飛び込んできた魔族は、笑いと叫びを織り交ぜながらの回転跳び回し蹴りでアルティメットガールを迎撃した。
人波から蹴り飛ばされた彼女は、地面でワンバウンドしてから着地すると、目の前の状況を見てつぶやいた。
「あぁ。これはもう確定かしらね」
このつぶやきをかき消したのは、飛び込んできた魔族から逃げる兵士たちの叫び声。
手をかざした魔族が法名を唱えると、彼女はさらに言葉を漏らす。
「そこからなら撃つわよね」
「バルガンバースト」
その手のひらから放たれた七十七の光弾が、縦横無尽に駆け巡りながら彼女へと向かってくる。その光弾を両腕を使って叩き落とすアルティメットガールだが、
(しまっ……)
半数を弾き飛ばしたところでその処理をミスり、多数の爆発が彼女を飲み込んだ。
「アルティメットガール!」
レミが彼女の名を叫ぶ中でエリオは拳を強く握って堪えている。その様子を見てサクバーンはエリオの腕を掴んだ。
「やめておけ。無駄死にするぞ」
土煙が晴れたその場には片膝をついた彼女の姿があった。
「彼女は万全じゃない。理由はわからないけど戦う前から様子がおかしかった」
注視したことで気付いた彼女の異変。
(今回はやばめかも……)
アルティメットガールが立ち上がったことで皆は小さく息を吐くが、状況が好転したわけではない。彼女が構えなおすまで待っていた魔族は牙をむき出し飛びかかっていった。
再び肉弾戦となる中でアルティメットガールは魔族に言う。
「ここからはちょっと荒っぽくいくから覚悟してよね」
これまでの華麗さは成りをひそめ、足を止めての打ち合いが開始される。
とは言え、手数の差は歴然。ガードを固めるアルティメットガールの肩、脇腹、こめかみへと魔族の拳が突き刺さる。その攻撃の合間にアルティメットガールの攻撃も単発ながら魔族の体を捉えていた。
(これじゃぁ効かない。これなら!)
攻撃に意識を集中させている彼女はガードを固めていても被弾率は高い。
そんな殴り合いをエリオたちとハークマイン兵団以外にも見ている者がいた。
「あの派手な服装の女はなんだぁ?」
張りつめた空気の中で戦いを見守る者たち。そこに場違いな声色と声量で言葉を放り込んだ者に皆の視線が集まった。
「あいつは」、「彼は」、「あの人は」、「あなたは」
込めた感情に合わせて様々な言葉がその者を示した。
「おめぇは! バーンエンド!」
最後のこの言葉の主はサクバーンだ。
「よう。元気だったか、サクバーン」
「なにしに来やがった。この裏切りの勇者め!」
この戦いの場に現れたとたん、『裏切りの勇者』と罵られたのは、爆炎の勇者マグフレア=バーンエンド。
光沢のある軽鎧と背負った剣が醸し出す雰囲気は、素人でもわかるほど高い等級を感じさせる。そして、その持ち主はそれらの装具に劣らぬ覇気を漂わせていた。
「裏切りとか言うな。俺はただ息苦しいハークマインから自由を求めてライスーンの勇者になっただけで、やっていることは変わらねぇ」
「おめぇが背負う聖剣はハークマインの所有物だ。ライスーンの勇者に鞍替えったのなら、そいつは返却するってのが筋ってもんだろうが!」
「堅いこと言うなよ。この国のためになることもやってるんだ。それにこれを手放したら、ふたつ名が変わっちまうかもしれないだろ? 爆炎の勇者。気に入ってるんだ」
「なにが爆炎だ。自分の爆炎で爆死しやがれ!」
爆炎のふたつ名に反して冷めた対応のマグフレアに、サクバーンは爆炎と比喩できるような熱量で怒鳴り散らす。
「そんなことよりなにか面白いことになってるんじゃないか? サクバーンは聞いても教えてくれそうもないなぁ……。そこの君。説明してくれよ」
「そんなことよりじゃねぇ。てめぇ話を聞きやがれ!」
興奮が冷めないサクバーンをよそに、そばにいるエリオの肩を叩いた。
「簡単に言うと、俺たちを狙ってきた魔族から、彼女が助けてくれているって感じです」
賢者の石のことが話せないため、かなり端折りつつ戦いの経緯を伝えた。
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件
fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。
実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。
追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。
そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。
これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる