爆力! アルティメットガール ~戦いを終えたヒーローは、異世界の日常という非日常の中で幸せを求め、新たな人生を歩き出す~

プオン

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ルガンドール

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「アルティメットガール」

  額の汗を拭う彼女にエリオたちが駆け寄ってくる。その彼らの表情は笑顔だったのだが、エリオとレミには心配の色味があることを感じたアルティメットガールは、背筋を伸ばして見せた。

「みなさん、怪我はありませんか?」

「俺たちは大丈夫だ。それより、君は大丈夫なのか?」

「そうだぜ。最後は地味な殴り合いだったけど、百発くらいは受けただろ?」

  焦り声のマルクスに「体の丈夫さだけが取り柄ですので。問題ありませんよ」と彼らを安心させるために微笑んでみせる。そう答えたとおり、百発も殴られたアルティメットガールの見た目には傷はない。だが、にじむ汗と顔色の悪さはエリオの気になるところだった。

  空を仰いで倒れている片角の魔族は意識は失っておらず、唸りながら起き上がろうとしている。しかし、トドメの一発が効いてしまい動けない。そんな魔族に近寄っていくアルティメットガールも膝を突いてしまった。

「あっ、おい。アルティメットガール!」

  エリオがあわてて座り込む彼女に寄り添い肩を抱いた。

(きゃぁぁぁ、エリオさんがこんな近くに! 恥ずかしぃぃぃぃ)

  それはエリオに顔を覗きこまれたことで出た反応だ。顔を赤らめた彼女は「かなり殴られたので少し効いていたみたいです」と言ってそのことを誤魔化した。

  痛みの波が通り過ぎたアルティメットガールはゆっくりと立ちあがり、倒れる魔族を覗き込んで彼にこう告げた。

「さぁ、勝負はわたしの勝ちね。約束どおり答えてもらおうかしら。あなたの真意を」

  ふたりが戦いが始まる前に取り付けた約束だが、実際には一方的な取り決めだ。

「あっ、その前に名前を教えて貰わなきゃ。わたしが勝っちゃったけど勝者の褒賞ってことでいいわよね?」

  そっぽを向いてむくれた態度を取っていたが、少し間を置いてから小さな声で名乗った。

「カイル=ゼルヴェ=ルガンドール」

「カイル……。へぇー、意外と優しい感じの名前なのね」

「ルガンドール……」

  彼女の感想とは真逆に、彼の名を聞いた者たちは一様に全身を強張らせるほどの緊張をしいられた。それを見たアルティメットガールは不思議に思う。

「どうしたんですか?」

  何事かと問うがエリオたちからの返答はない。

「ルガンドールってなぁ……人族と友好な関係を望んでいたが、突然牙をむいて人族と敵対した最強の魔族。大魔王の名だ」

  黙り込む者たちの後ろから聞こえてきた声に視線を向けると、そこにはアルティメットガールの知らない男が立っていた。

「こんな世界の常識を知らないあんたは何者だ?」

「わたしの知らない常識を、皆に代わって親切に教えてくれるあなたこそ何者なの?」

「俺はマグフレア=バーンエンド。ふたつ名は爆炎の勇者。マグフレアと呼んでくれ」

(爆炎の勇者? 以前会った魔族がそのふたつ名を言っていたわね)

「わたしはアルティメットガール。ふたつ名って言ったらスーパーヒーローかしら?」

「アルティメットガール? それって名前なのか?」

  この世界ではまったく意味のない文字の羅列の名前を聞いて、マグフレアは眉を寄せる。

「そうよ。わたしの世界では誰もが知る名前なの」

「わたしの世界? そうなのか。ではアルティメットガール。俺と戦ってくれ」

  その言葉にはなんの害意もなく、強い意思もない。ただ思ったことを口にしただけの日常会話といったものだった。

「マグフレア、おめぇはなにを考えてやがる!」

  いきり立ったのはサクバーン。しかし、他の者たちはその言葉が持つであろう、あるはずのない真意を探って怪訝な表情でマグフレアを見ていた。

「あなたと戦う理由も意味もないわ」

「そいつとは戦っていたじゃねぇか」

  倒れてまだ動けないカイルを指さして彼は言う。

「それは彼が魔道具を取り返しにやってきたからだし、それにともなって勝負を決着させる約束もあったからよ」

「なにか理由があればいいんだな」

  マグフレアは背負った聖剣の柄に手をかける。その行動の意味を理解する間もなく聖剣は引き抜かれて振り下ろされた。
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