爆力! アルティメットガール ~戦いを終えたヒーローは、異世界の日常という非日常の中で幸せを求め、新たな人生を歩き出す~

プオン

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救援者と乱入者

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  エリオの眼前で巻き上がったハルカの大魔法。火属性のグレンを解放しているからこそ耐えられるのだが、彼をも巻き込もうかという規模の絶大な火炎旋風を見てセミールは感嘆した。

「すげぇぞハルカちゃん!」

  さしもの寒烈の勇者でも、これほどの魔法を受ければただではすまない。見ていた者はそう思った。だが、消失した火炎旋風の中から現れたのは白い煙が立ち込めた氷の塊。

  乾いた唇から小さく引きつった声を漏らしてセミールの表情は一変する。

  エリオがその状況を理解したときには氷が割れ、そこには聖氷剣を振りかぶったグレイツが立っていた。

「逃げろっ!」

  エリオの叫び声に先んじてグレイツの足元から地面が広範囲に凍結。空気も凍り、一瞬で靄が発生した直後、その剣が振り下ろされる。

「レイジングアイスウェーブ」

  次々に伸び上がる氷の柱からセミールを守るために、ハルカは彼を突き飛ばした。胸骨が折れるのではないかと思うほどの強さで胸を押されて飛ばされたセミールが見たのは、一瞬で氷の高波に飲み込まれるハルカの姿。

「ハルッ」

  背中を木にぶつけて止まったそのとき、氷の波は何十メートルと続いていた。
  それを見ていた者たちに視認されることなく打ち飛ばされたハルカは思う。

(あぁ、これはもう言い訳しようがないかな)

  数回氷の波に突き上げられたハルカは、常人がこの闘技を受けて生きていられるという理由が思いつかず、成されるがままに氷に飲まれていった。

  声にならない声で叫び手を伸ばす者たち。しかし、そこにはもう彼女の存在を示す物はなく、静まり返った空気を伝ってパキ、パキっと氷の音が聞こえるのみ。

「嘘……でしょ?」

  レミはそう呟きマルクスの手を強く握った。

  セミールが地面から伸びた氷の群に駆け寄り叩くのだが、大質量の氷はびくともしない。

「賢者の石を渡せ。また仲間を死なせたくなければな」

  氷のように冷たい言葉がこの場にいる者の心臓をわし掴んだ。

  キーンと甲高い澄んだ音がしたのは、この状況でただひとり動いたエリオの剣をグレイツが受けたことによるもの。劫火を纏って剣を振り回すその姿は鬼神を思わせるモノなのに、グレイツを前にしては頼りない燈火が揺らめいているよう。そう思わせるのはその炎が不安定に明滅しているからだ。

  ときおり返される反撃にその炎は儚く吹き消えてしまいそうなのだが、か細くもしぶとく燃え続ける。

  悲しみに流す涙さえ気化させて怒りをたきぎに戦うエリオに、グレイツはトドメとなる一撃を振りかぶる。

「サウザンドヘールストーン」

  空に生成された氷の塊が束になってエリオを襲う。それは、まともに食らえば体がズタズタになるであろう氷の弾丸の群。

  対してエリオは体を大きく捻転させる。さらに振り絞った力が体を覆う不安定なオーラを再び劫火へと変え、その猛き力を上空に撃ち放つように剣を振りぬいた。

「ブレイズストリーム」

  振った剣の軌跡が炎の帯を引いて燃え広がり、接触した氷の弾丸は蒸発して水蒸気と化していく。だが、大半の弾丸は闘技の炎と水蒸気を撃ち破ってエリオへと降り注いだ。

  それを見ていた仲間たちは衝撃で言葉を失う。

  地面をえぐり爆発したような土煙。その中から現れたのは全身全霊で闘技を振りぬいたエリオだ。恐ろしい攻撃を受けて彼が生きていたことに驚いたが、その前に立ちはだかる者を見た驚きはその数倍だった。

「アルティメットガール。なんで……?」

「忘れたんですか? あなたが誘ったんですよ」

「確かにそうだけど、こんなことのために誘ったんじゃないんだ」

「わかっています。戦いのためじゃないってことは」

  アルティメットガールの視線を受けたグレイツは警戒して構えを取った。

「アルティメットガールが来てくれたならこっちのもんだぜ!」

  絶大な強さの彼女が現れたことに、マルクスやセミールは勝ったも同然と大喜び。

「わたしが彼を止めますからエリオさんは下がってください」

  右手を少し横に広げて下がるように促す彼女だったが、突然ふらりと体を揺らして倒れそうになる。足を追っ付けて転倒を防いだが手を額に当ててまた体をふらつかせた。
  その姿を見て、マルクスたちは喜びの声をピタリと止める。

「大丈夫か?!」

  あわてるエリオに彼女は「平気です」と答えるのだが、その表情は苦しげだった。

  それを見ていたセミールは思う。さきほどの氷の弾丸を食らったことでのダメージなのではないかと。そう思ったのはセミールだけではない。とうぜん術者のグレイツも同様にそうだと判断したのであろう。表情に笑みを浮かべた。

  アルティメットガールの登場でこの戦いは終わると思った皆の心が再び重圧に襲われ、ひんやりと冷たく静かな空気に緊張が走った。

(この状態で戦うのは危険だけど、かと言って逃げるわけにも……)

  このアルティメットガールの焦りはグレイツにも伝わり、彼を次の行動に移させる。

  ダメージが残っているであろう彼女に対して休みない剣と打撃で攻めるグレイツ。
それをかわしつつ反撃をするのだが、カイルとの戦いのとき以上にキレがない。

  アルティメットガールに言われてひとまず下がったエリオはザックからポーションを受け取り一気に飲み干した。

「戦うのか?」

「あぁ。彼女は本調子じゃない。援護くらいはしないと」

  意を決して戦いの場におもむこうとしたときだ。

「見つけたぜ。さぁ女、俺と戦え!」

  意気揚々と登場したのは爆炎の勇者マグフレア=バーンエンド。彼はライスーン王国が誇り、ハークマイン王国がその身柄を狙う、世界の調和を乱す者だ。その彼が言った。

「あれ? その魔族はあのカイルって奴じゃないな。誰だ?」

  とぼけた声でそう言う彼に答えを返す者はいない。

  爆炎の勇者の登場にアルティメットガールとグレイツの戦いは時を止める。しかし、戦いの腰は折られても危機的状況は変わらない。なぜなら、この勇者も味方とは言えないと皆は思っているから。

「ヴェルガン。お前とも戦ってみたいんだけどこのふたりを前にしたら後回しにせざるを得ないぜ。その魔族もおしいが先約は派手な服の女だからな」

  ゆっくりと聖剣を引き抜いたマグフレアの分厚くも漂々としていた闘気がアルティメットガールへとぶつけられる。彼女がグレイツと戦っていることなどお構いなしにマグフレアは彼女に突撃した。

  大上段から振り下ろされる剛剣をアルティメットガールはクロスブロックで受け止めるのだが、その剣圧に押されて膝を突いた。

「これも受けるのかよ。とんでもねぇ女だな」

「女、女って。自己紹介はしたわよ。わたしはアルティメットガールだってね」

  両腕を跳ね上げて押し返した彼女の背後に、グレイツが低い姿勢で飛び込んできていた。それを止めたのはエリオ。弾き返した勢いでグレイツを追撃する。

「エリオさん」

「下がれと言っても下がらないよ」

  エリオはアルティメットガールに先んじてそう返した。

「それと……、ひとつ聞きたいんだ」

  神妙なエリオの物言いに、マグフレアは闘気を抑えてその会話を続けることを容認し、グレイツはアルティメットガールに警戒されていることで手を出さない。

「なんですか?」

  一瞬のためらいを見せつつエリオは言った。

「ハルカは……、助けられなかったのかい?」

  生死不明のハルカの生存確認。万が一にも生きているという希望的観測。それは奇跡的な生存と、これまでにもあった彼女による必然的とも言える救助だ。

  エリオは願った。彼女がハルカを助けたうえでここに現れたのだと。しかし、待てども返答はなかった。

  その理由をエリオは理解している。グレイツの攻撃を受けた時点で即死しているならアルティメットガールと言えど助けようはない。

「そうか。じゃぁさっさとこいつらを片付けよう」

  その言葉を合図としてアルティメットガールとマグフレアの戦いが始まった。
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