爆力! アルティメットガール ~戦いを終えたヒーローは、異世界の日常という非日常の中で幸せを求め、新たな人生を歩き出す~

プオン

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聖域の管理者

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  熱烈なラブコールを贈ってきたマグフレアを倒したアルティメットガールがゆっくりと地上に降りてくる。それを皆は出迎えるのだが、かける言葉が見つからず黙っていた。

  こういったときにいつも最初に言葉を発するのはレミだ。

「アルティメットガール。あなた今、生理ちゅ……」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

  レミの言葉をかき消すために叫ぶアルティメットガールは手を前に振って顔を赤らめる。

「貴様、あのときの俺との戦いでも手を抜いていやがったのか」

  赤らめた顔を両手で隠すアルティメットガールにカイルが文句を付けた。

「わたしだって体調が悪いときくらいあるわ。日常レベルは問題なくても戦闘レベルともなると力の入れ具合がおかしくなってしまうのよ。下手したら殺してしまうでしょ。そう思ったら慎重にならざるを得ないの」

「つまり、殺さないように調節できないから、誰が相手でも苦戦していたってわけ?」

  呆れ気味にレミが言ったことに「不殺がわたしの主義ですから」と笑顔で返した。

「あの人の強さなら、そこそこの力で攻撃しても一発で殺してしまうことはないと思うので」

「俺程度だと殺しかねないってことかよ」

  そう不満そうに言ったカイルとエリオとアルティメットガールが森の方に振り返る。つられて仲間たちもその方向を見ると、森の中から誰かが歩いてきた。

「あぁぁぁぁぁぁ」

  そう叫んだのはリアクション担当のマルクス。彼らの前に現れたのはアルティメットガールが殴り飛ばした爆炎の勇者だ。

「完敗だ……。まさか俺の想いが届かんとは」

「言ったでしょ。あなたの魅力じゃ足りないって」

「確かにお前の心を震わせるのは簡単じゃないな」

  そう言ってマグフレアは膝を折った。

「放っておけばあいつは死ぬぞ。不殺が貴様の主義なら助けてやれ」

  カイルにそう言われ、視線はグレイツを担ぐフォーユンに集まった。

「また俺かよ。なんで俺は敵ばかり助けているんだ」

  そんな愚痴をこぼしつつ、マグフレアに大地の力を注ぐ魔法を使った。

「あの秘薬も力を使い過ぎれば死ぬ。それでも飲んでみる気があるなら貴様に譲ってやるぞ、エリオ」

「いや、遠慮しておく。さっきは緊急事態だったからだ。もう二度とこんなことがないほど修行するよ」

  そう言ってエリオは手に持った秘薬を袋に入れてカイルに返し、アルティメットガールのほうに向きなおる。目と目があった彼女は再び顔を赤らめて少し身を縮めた。

「また君に助けられてしまった」

「今回はわたしも助けられました。でも、まさか寒烈の勇者を倒してしまうとは」

  仲間たちも「うんうん」と首を縦に振る。

「確証はなかったけど、なぜかやれるんじゃないかって思ったんだ」

  このエリオの力も魔素の影響だとは誰も気付いていなかった。

「ともかく無事で良かったです」

「無事……か」

  エリオはアルティメットガールの言葉に覇気なく返した。

  このやり取りでハルカを殺したグレイツへの怒りを再燃させた者がいる。マルクスは剣を抜き地面に寝かされているグレイツに向かって振り下ろす。しかし、その切っ先は数センチ前で止められた。

「離せ! こいつはハルカを殺したんだぞ!」

  腕を掴んで止めたのはエリオだ。そしてアルティメットガールはレミを押さえていた。

  様々な事態が急転直下の勢いで起きたことが、ハルカの死という衝撃的な出来事を一時的に抑えていたのだ。レミは塞き止めていた感情と涙腺を崩壊させて地面に膝を突く。マルクスもボロボロと涙をこぼしており、マグフレア以外はその気持ちを察して少なからず感傷に引き込まれていた。

「しかし、グレイツが魔族化するとはな。それはつまり……」

  この言葉の先が一番気になっているのはカイルだ。

「なぁカイル。グレイツはお前の甥っ子なのか?」

  すでにカイルに馴染みつつあるザックは遠慮のない口調でカイルに聞く。

「そんなことわかるわけないだろ。俺が最後に会ったのは七歳かそこらだ」

「なら本人に聞けばいいさ。グレイツ、教えてくれ」

  エリオはそう言って振り向くと、彼は目を覚ましていた。

「おまえの親は魔族と人族の混血だって言っていたけど、父親の祖父は大魔王なのか?」

「大魔王? まさか。そんなわけなかろう。それに混血なのは父ではなく母だ。もし、そんな血統だったなら私はこんなことをしていないだろうな」

  少しだけ張りつめていた雰囲気が緩んだ。その中で残念に思う者もいたのだが、その変化に気づいた者は少ない。

「こんなことって言うのはイラドン大臣の下で働いていることか?」

  グレイツはうなずいて肯定する。

「父と母がイラドンに捕まっている。母は魔族との混血とはいえそれほどの力はないし、父は別の場所にいるから母も人質を取られているような状態だ」

「あいつ、なんてことを」

  エリオは過去に自分が罠にハメられたことを思い返して怒りをあらわにした。

「俺も呪術の誓約によって縛られている。だから監視のライスーン兵がいる場では賢者の石を奪わなかった。その力を使って呪術の誓約を消し、父と母を救いたかったんだ」

  グレイツの境遇も同情モノではあったが、やはりハルカの死とでは天秤がつり合わない。そんなもやもやした空気が続く中、エリオは言った。

「ともかく聖殿に入ろう。俺たちの目的を果たさなきゃ。たとえそれが半分でも」

(目的の半分?)

  仲間たちがつらい気持ちを抱えたまま聖殿へと向かうその後ろを、アルティメットガールはエリオの言葉の意味を気にしながら付いていった。

  広大な一階ホールに圧倒されつつ周囲を見回す面々は、向かうべき場所がわからない。

「バーンエンドさん。あなたはここの管理者がいるところを知っているんだろ?」

「マグフレアでいい」

  遠慮がちに呼ぶエリオに対してマグフレアは言った。

「わかった。マグフレアさん、管理者はどこに?」

「三階の玉座の間だ」

  指示に従って階段を上がっていくと、そこにはいかにもという大きな扉があった。

「ここだな」

  セミールとマルクスが大扉を引っ張り開ける。それは大魔王の間の扉を開けるにしては礼儀も警戒心も感慨もない。開いた扉の隙間に飛び込み大盾を構えたザックが叫んだ。

「誰かいるぞ」

(うそ?!)

  高い感知能力によって入る前から誰もいないことを知っているアルティメットガールはその言葉に驚き、ザックに続いて飛び込んだ。玉座の横には確かに人がいる。それは透けるようなライトブルーのドレスを着た長い黒髪の女性だ。

  その女性の存在にも驚いたのだが、この玉座の間にはそれ以上の驚きがあった。

  見慣れない台座や機材が部屋のあちこちに点在している。どう使うかはわからないまでも、この世界には似つかわしくないそれらは、アルティメットガールの世界では当り前にあるコンピューターだった。

「こんにちは」

  あまり感情のこもっていない声で挨拶したのはそこに立つ女性なのだが、声がどこから聞こえてくるのかわからない。というより、全体から聞こえてくるような感じだった。

(敵意は感じない。っていうか存在が感じられないわ)

  皆はザックの大盾に隠れながら進んでいくが、女性は微動だにせず彼らを見ていた。
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