【R18】蝉と少女

仙 岳美

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34 錆び歯車と少女[上]

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34錆びた歯車と少女[上]

※小説投稿サイト提供お題[餅]に沿って制作。

※この話しは【蝉と少女】主人公の孫である雪(snsネーム・雪絵)さんの物語です。

※時間軸の問題で後ろの方に来てますがスピンオフと捉えて下さい。

登場人物
snsニックネーム
 大迫 勝 (おおさこ・すぐる 25歳)
snsニックネーム
 蓑笠 雪絵(みのかさ・ゆきえ 20代後半? 
       大迫がsnsで知り合った女性)

=9:00=
 年が明けて三が日も終わり、俺は朝起きたら正月用に買って余っていた、雪の様に白いお餅を袋から取り出し
「ヘッヘへこれがおなごの餅肌と言うやつか」
と独り言を言いながら餅をオーブンに入れ、5分程で餅が膨れ焼けたら小皿に取り醤油を垂らしそれを持って自室に戻り食いながらスマホでハマってる小説投稿サイトを開いた……
仲良くなった女性の小説をいつもの通り読もうとしたら、ん? 彼女の作品が見当たらない、あれ? 何故だ?ネットで原因を調べてみたらある事実が判明した……それは……
俺は彼女にブロックという物をされたみたいだ、要は『お前嫌い』と絶交を宣言を受けたような物だ。しかし俺は嫌われてる様な事をした心当たりは無い、それより友好関係を保とうとしてたぐらいだ何故だ? 何故、何故なんだー! 俺はハッキリ言って今は友達も彼女も居ない、だからsnsの中だけでも彼女……いや友達ができた様でウキウキしてたのに、この仕打ちは! 俺の心は口の中に入ってる餅の様に焼け不満で膨れた……そして奮起したせいか餅を喉にツマラした「ゴッホ!ウッーゲッホー……おのれ~雪絵、年明け早々何をヤッチャッて、くれてるんですかー」

俺は荒れた、その日は夜遅くまで駅近の飲み屋で呑み潰れるまで焼酎を呑み、帰りに暗い路地に佇む夜鷹(売春婦)の年増を心の持ちが訳分からなくなり買った、童貞なのに……
そして2日程経ち少し気が落ち着いて考えた、所詮素人の何処の誰かも解らない人が書いた小説だ、そんな執着しなくてもいいじゃないかと思ったがやはり餅の様に粘り強く原因を探る事にした自分を納得させる為に(今、思えば洗脳されてた気がする小説は少しそういう物なのかも知れない、前に自殺志願者がたまたま寄った本屋で宮本武蔵を読んで武蔵の強い生き方に励まされ自殺を辞めたと言う話も聞いたことがある、反対に悪用すれば呪術にも成りうる)
それにブロックは単純に間違いという事も十分に有り得る! きっとそうだ! そうに違いない! 俺は何も悪い事はしていないセクハラもしてない(多分)
とりあえずサブアカウントを作り再度サイトにインしてみる、彼女の投稿小説を確認、辞めてはいない様だ一安心した……で探ると言ったが正直、直に聞いた方が早い、彼女にコメントを送った……
すぐに返事が来た!
《あー ブロックしたよ》
《何故?》
彼女は問いには無視するように答えずブロックしてからの俺の行動を詳しく何故か聞いてきた……
俺は一連の事を彼女に久しぶり会えた事の喜びと口車に乗せられ言わなくていい事まで話してしまった……
《うーん、解った、ありがとう、じゃあ~ ブロック解除しておくねー》
「……」
《じゃー じゃないよ何故! 俺をブロックしたんだよ! 聞かせてよ》
《知らなくていいよ》
《そんなの納得できないよ、今後の為にもハッキリ言ってよ気持ち悪いし》
《そこまで言うのなら語るとしよう》
(なんで上から目線なんだ?)
《うーんっとブロックしたら大迫さんがどうなるか興味沸いたので我慢できずしてみた、小説のネタにしようと思って、てっへゴメンね♡》(精神的ダメージ大)
《な、なななな、ふざけんなよ、俺がどんな気持ちでいたのか知ってんのか!》
《今聞いたから知ってるよ、呑みつぶれた後、夜鷹と寝ちゃたんでしょ? 童貞なのに》(精神的ダメージ特大)
(怒)ブッチ!
俺はその後、彼女に説教をした結構強めに!!
その後、彼女は自分のした事に気づいたのか直接謝りたいと言って来たが待ち合わせ場所は自分の最寄りの駅付近を指定してきた、その場所は駅出入り口前の円形のロータリーに出たら直ぐ右を向きその先の細い線路沿いの路地を真っ直ぐ行った最初にある自販機の前を指定してきた、オマケに遭う日も来月に指定してきた!
俺は内心(謝りたいなら自分から来るべきだろ! 何故、俺が交通費を使ってこちらから予定を合わして出向かなきゃいけんのだ!)
と思ったが彼女自体にもどんな人か興味があったのでそれで渋渋了解して彼女に会いに行くと事にした、俺はダメな甘い男である……

=10:45=🏭🏭🏭
 俺は正月に堕落して錆びた様な身体と心に鞭を打ち40分程かけて彼女の最寄りの駅、[蝉ヶ森]の駅のホームに降り立った、まず視界に飛び込んで来た景観は駅名から想像をしていた緑の景観では無く、駅を含め全てが茶色いの世界だった、駅を中心とし巻き込む様に建てられた沢山の工場が連結した巨大な工場都市で周辺には機械油の匂いが漂い、空に向けて立ち並ぶ無数の工場の煙突からは煙が放たれていた。
駅出口に向かう途中辺りを観察しながら進んだ、急行停車駅だが工員達の出勤時間はとっくに過ぎていたので閑散としていた、階段を降り駅外に出て空を見上げたら空はべっとり曇り何か不吉な物を感じた……そして中央に巨大な十字架が掘られた石が置いてある駅前の円形のロータリーから彼女に聞いた道順通りに指定された自販機の前迄行った……待ち合わせ時間の11:00から5分程過ぎていたがそこには誰も居なく、目線の高さには先程自分が降り立った駅のホームが見えた🚉
=11:20=
周辺に漂う油の臭いを嗅ぎながら彼女を待ったが来る気配はしなかった、揶揄われたかと思い、こんなもんかな~と思いなんか冷めた、油臭い雨も降りそうだったので帰ろうとしたら《チャリーン》と背から自転車のベル音が聞こえた振り向いたら高校生の女の子が自転車に乗り近づいて来て俺の前に止まった
「ごめんまったー雪絵です」
「! お前が雪絵か?」
「うん、そうだよ」
(20代後半と聞いていたが見た感じ随分若い?)
「お前いくつだ?」
「昨日18歳になったから大丈夫」
(何が大丈夫なんだかは知らんが20代後半って言ってたろーこのやろー・精神的ダメージ小)
「まだ午前だぞ学校はどうした?抜け出して来たのか?」
「あー夏休み明けてから、そのまま行かないで辞めちったイジメられたからそして今に至る~」
(や、辞めた! そんな簡単なもんじゃ無いだろうよ、今はこんな時代なのか?)
「何故、辞めたのに制服を着てる?」
「あー貴方が喜ぶと思って貴方の小説、女子高生がよく出てくるでしょ」
「……たしかに」
彼女はチャリから降りて、
「今回は私のやってしまった事で貴方には不快な思いをさせてごめんなさい反省してます」
と言い頭を下げてきた。
俺はこんな子供が書いた小説に魅了され此処まで来てしまったのか……思えば文書の所々に稚拙な所もあったがあえて狙って表現してる物かと勝手に思っていたまた常識が欠落してる内容も狙ってると思っていたがソモソモそういう事だったのか……中にはこの女の子に怒り、食ってかかっていたイイ歳の大人もいた、そんな奴らは既にこの子が読者のリアルと自分の小説をリンクさせる為に仕掛けたパラレルワールド(異空間)に喰われ咀嚼されてる格好の獲物に知らずに気づかず成り下がっていたのだ……プッ一瞬笑ってしまった……
そういえば性描写も上手くはぐらかす様に描かれていたドンドン伏線が繋がっていった……
(クソー、大人を揶揄う楽しい遊びを考えやがって、それも長く遊べる)
しかし冷静に考えたら小説は基本は嘘の塊で反対に何処の誰だが知らない奴のリアルのクソツマンナイ生活なんかアホじゃ無い限り普通は興味は無いし、少女のプロフィールにも各作品の最後にもちゃんと『フィックションです。』と記してあった、唯それは作者含めてと言う事だったんだ!
……ひょっとしたら裏に黒幕が居てこの少女も手下の使い魔に過ぎないのかも知れないとかまで考えてしまった……
一瞬、今現在も自分のリアルが彼女の作りだした小説であるパラレルワールドの中に取り込まれてる最中の様な感じがし現実感が薄れ怖くなった……
「……」
「もしもしー」
『は!』と彼女の声で思考中モードから我に戻った……そして何か全てが馬鹿らしく、人を信じられない気持ちになってきた……
「もういいよ、じゃあな」
と彼女に背を向けたら後ろから
《チャリーン》とまた音が聞こえた
振り向いたら
「私し今、暇だよ」
「だから」
「遊んでよ」
「断る」
「なんで?」
「なんでも」
「だって大迫さんも朝からサイトに居る人なんだから暇人、何でしょ?」
「! ち、違いますー午後から仕事行くんですー」(本当は年末に工員を解雇されて無職の虫)
そんなやり取りをしていたら案の定ポツポツ雨は降ってきてナットや鉄屑を含んだ油を喰い・吸い尽くした、この土地の土壌が濡れて周囲の油臭さが湿っぱく増してきた……でも少し晴れ間もあり変な曖昧な天気になってきた……俺の心も彼女の何か浮いたような声質のせいなのか今日の天気の様に境界線らしき物が曖昧になってきたのを感じた。
同時に今日この日、此処に上手く彼女に誘導され来てしまった様な気もした、なにかがヤバい……
それからも彼女は中々にシツコイので天気の事もあり一旦ファミレスに行く事にしたが駅周辺には夕方から開く居酒屋は多かったがファミレスが見当たらない!と思ったら開いてるラーメン屋が目についた、ヨシしめた!此処でラーメン食わせて返すかと思ったら彼女の声が!
「私し此処がいいー」
『どれだよ~』
彼女が見つけたその店はスチームパンクな工場地帯の景観を壊してる様なオシャレなフレンチレストランだった。(クッソー店の面構えからしてクソ高そうだな)と思って黄昏ていたら、その隙を突いて彼女は勝手に店内に入って行ってしまった!
『こ、小娘ま、待ってー』
アイツ若さ故に早まりやがった!
知らんぞ俺は。
=11:35=
駅前立ち食い蕎麦専門家の俺は恐る恐る店の中に入った……その中の光景に度肝を抜かれたテーブルには白い布がかけてあり真ん中には花瓶がそしてお花!🥀席の前に何やら高く折りたたんだ布白塔が!(ヤバい)ここプロポする場所やん!(精神的ダメージ中)
此処を攻略するには兵士数30000(3万円)は必要だろう!
俺は思わず「お前さ金持ってんの?」
無視された……
(こいつは大人はいくらでも金持ってると思ってるタイプだ、やれやれ)
と思いながら席に座りメニュー表を見たら……
良かったランチがある(ふーそれでも合わせて3300円精神ダメージ中上)
「私し海老フラ「ランチ2つ、パンとライスと飲み物はアイスコーヒーとオレンジジュースで」
俺は彼女が何か言う前に素早く店員を呼んで先手を打った!
「え、え」
「俺ライス、お前はパンにしろな、な!」
と強引スピーディーに決めなんとか危機は乗り切った……(ちなみに海老フライは2500円冗談はヨッシーだよ)

その後、彼女とどうでも良い会話をしてたら彼女が変な事を話し始めた
「私しさ官能小説書こうと思ってるんだけどまだ経験ないんだよねアレの」
と俺の方を見てきた、その目は女の目だった18でも女だな~と思った、勝ちを誇ってる様にも感じた。
俺は勝ち誇ってる敵には敢えてこう言う、
『だが断る』(今回は心の中で)
「そうなの」と俺はサラッと流した、しばらく黙食した後に彼女は口を開いた、
「で、この後、どうする私達」
(私達だー何を言ってるんだこいつは)
「君帰る俺も帰る」
「えー チャンスだよ」
「何が?」
(俺の容姿は取り敢えず彼女の合格ラインには到達はしてるみたいだ……)
彼女は水を飲んで、
「夜鷹としちゃたんでしょ? 童貞なのに、今更何カッコ付けてるの?」
その時、横のテーブルに座る2人のOL女の会話が一瞬止まった!
「君! ここ店!」
彼女は悲しい顔した。
「……ゴメン、ついムッとして」
彼女はブツブツつぶやいた……
「本には女から言えばまず男は断らないって書いてあったのにな……」
(うん、それはイカれた師の教えね)
とこんな感じで食事が済んだら店を早々に出る事にした。
(カード作っといて良かった~)
というか何故、俺が支払いしてんだ? 俺が謝りに来てるのか? 普通反対だろ? 狂ってる!
仕事してないと狂った世界に巻き込まれるし辺な人も寄って来るもんなんだなーと学習した……【下】へ続く。
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