【R18】蝉と少女

仙 岳美

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33 補填・謁見の章

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33【蝉と少女】補填・謁見の章

登場人物
ワシ  (主人公兼語り 元帝国公認暗殺者 73歳)
嫁   (若い時公園で逆ナンされて嫁にした。63歳)
島長  (本名は仙身志摩長『セミ・シマナガ』 年齢不詳
     島の長)
切鎌 寂(『キリカマ・ジャク』ワシの元同僚兼元愛人 ?歳)


 ワシはある日、島長に呼ばれ、本島の船着に置かれているモーターボートに乗り、本島から少し離れた小島の地下研究所に向かった。
島に着いたら外で島長が作業服を着、草ムシリをしていた、
ワシを見るなり
「お、来たかちょっと手伝ってくれるか」
ワシは最近運動不足気味を感じていたので良い機会と思い進んで島の森林整備を手伝った。久しぶりに汗をかき何やら身体の中の血が入れ変わった様な気がして爽快だった。
一通り作業が終わったら長は岩陰に置いてあったリュックの中からウイスキーの瓶を取り出しワシに見せてニヤリとしたワシもニヤリと返した砂浜で島長と並んで座りウイスキーを飲んで少し話しをした。
「平和ですな~」
「うむ、この島は皇帝陛下と女王様のお陰で平和だ、良い事だ」
「島長の力も多いですよ。前の第一時大戦で帝国に封印された女王様を復活させたのも貴方ですし」
「そうか、お前も口が上手くなったな、お前の魂も女王様復活の為に利用して悪かったのう」
「過去の事は良いですよ、ワシもそれなりにこの裏の世界で人生を楽しんだのでワシは貴方から見たらまだハナタレの子供ですわ、これからもそうありたい物です」
「ふふふ、俺もいつまで生きてはいないぞ」
「そんな事言わずに」
「……所で今日、お前を呼んだ用事は島の整備もそうだがもう一つある」
「もう一つそれとは何でも言ってくだされ、殺しですか」
「いや違う、女王様に謁見してみるか?一回は会っておいた方が良いと思ってな」
「貴方がそう言うならワシは従いますわ」
帰りに研究所の入り口で切鎌君が煙草を吸っていった。
「お、いたのか、手伝ってくれれば良いのに老体2人で頑張ったぞ」
「私し事務員よ、こう見えても忙しいの」
「そうか島長に何かエロい事はされてないか?」
横から島長が、
「するか!お前は俺を尊敬してなかったのか、さっきの会話はなんだったんだ」
「アレはその時の海の黄昏効果です」
「もうええわ、後日連絡する。体調は整えておけよ」
切鎌君はワシらを相手にせずサッサと地下の研究所に降りて行ってしまった。
相変わらずクールビューティーじゃのう、しかしワシはお前の乱れた姿も知ってるぞ、グフフ……過去に付き合っていたからな~とか1人で妄想をしていた…過去の栄光じゃ、この話しはヤメにしよう。

後日、ワシは島長の軽トラに乗せて貰い島の中央に位置する山の中腹に建てられた城まで行った。
🏰
入り口の橋を渡ると城らしい大袈裟な門があった。
左右には軽装なナイトが立っていたが島長の顔パスで問題無く通過し庭の方に抜けたら……王冠を被り胸に穴が空いた遺跡と思われる大石像が目に入ってきた、その姿は耳が倍くらい長く、手の指は3本で牙が生え何やら未知な悪魔の様に見えた。その石像が中央に置かれた円噴水の前に黒い儀礼服姿の執事が待っていた。
銀髪の中々の美少年ではあるが身体から感じる気配は静かにも恐ろし感じを受けた……
『この少年は中々できる』
恐らく女王の世話役以外に警護も兼任してる様に思われた。
(剣術、適応力、知力、根性、性格、そして容姿を厳正して選ばれた天才だろうな)
直ぐには城の中には入れてくれなかった。
一旦、島長と共に敷地内の別邸に通された、その別邸の綺麗な個室のソファーに島長と座り女王の到着を待った、そのうちまた同じ執事が現れ、城の中まで案内してくれた、城の中はベルサイユ宮殿を想像してくれれば良い。
真似してるかの様にそのままじゃ。
それからついに謁見室に通された広い部屋の遠い先の王座に女王様が座っていた……近づいて顔が確認できるくらいの距離迄、近づいた時にその姿を見て少し驚いた! 女王はワシの嫁の姉で長女と聞いていた事もありそれなりの姿を想像していたが実際に目にしたその姿はかなり若かった、まだ16くらいに見える。
その少女はワシを見てニッコリとした。小作りの王冠と白いドレスに身を包み肩から赤い大綬(だいじゅ)をかけていた。
ワシは事前に島長に言われた通り前に出て跪き首を下げた。
「よく来てくれました。長年の帝国及び国家に対しての貴公の良き働きは志摩長より(島長)聞いております。
我国もそのお陰で帝国との同盟関係も友好関係を維持できてると私は思います。その一翼を担う貴公には敬意を表しナイトの称号と剣、金一封を授けます、お受けなさい……名を名乗りなさい」
「は! 佐藤章良(さとう あきら)謹んでお受け致します」
「章良、貴公が私の復活にその身を捧げてくれた事も聞いております。礼を言います、有難う」
「は!」(嫁に騙されたんだがね……)
「では、章良、この機に貴公に王族の仙身(せみ)の名字を与えます、今時から名を仙身 章良と改め名りなさい、では手を」
ワシは「は!」と頭を下げたまま両手を差し出した、その手に剣が置かれた重みを感じた。その時何かデジャブを感じた……
「立ちなさい」
と言われたので立ち上がったら女王、自らワシにナイトの証であるタイガー勲章を胸に付けてくれた、その顔は三女に当たる嫁の若い頃の顔にソックリだった……
(しかし何でこんなに若いのか?後で島長に聞いてみようと思った)
その後、執事がワシに分厚い封筒を手渡してくれた
(イヒヒ、本命の金ジャ!やり~)
そして女王は、
「これからも宜しくお願いしますよ、正式な臣下になった貴方とその子孫はかつて、この惑星の皇帝であり今は守護神サカリ、その保護を永久に次元時空を超えても保護されることは古より伝記で約束されています! 励みなさい。ではまた会いましょう」

と言い執事と共に退室して行った。

※此処からは物語全体の不解明な所の説明になります。あくまで補填の章ですので……どうでもいい人は☆マークまで飛ばしても良いと思います。

ワシは城の門を出た時、島長に聞いてみた。

「何であんなに若いんじゃ? 普通に考えて60は越えてる、はずじゃが」

「アレは封印されてた時の副作用と思われる詳しい事は謎だが
今現在は歳は普通に取ってるから問題は無いだろう。
封印から復活させた時は幼い子供だった。
ついでに説明すると予想だが女王様が若返ってる事から、敵だった安倍ノ太郎(呪術師)の不死の妖怪系統を封印して誕生前に時間を戻し間接的消去する、時間軸を犯す呪術が何かだろうな、当時は常に俺の策の裏をかくアイツには随分を手を焼いたわ、諸葛亮と戦った司馬懿の気持ちを俺もタップリ味わったわ、二度と戦いたくない相手だ」

※前に島長の研究所で聞いた話しだと、昔、島国の小国である祖国は一方的に侵略して来た大陸国家である帝国と戦争になった。
女王はその戦争の敗戦末期に敵の安倍乃太郎と名乗る総帥呪術師との直接的な幻術戦に敗れ、島の大樹の下に封印され徐々に生命を吸われ抹消されるタイプの封印をされたが、その後、戦争から生き残った島長が見つけ出し時間をかけて封印を解いたそうだ、その時に女王の封印解除と生命維持の為に表世界の男性の魂であるソウルエネルギーが必要になり、表世界の人間を裏世界に誘拐しては生贄肥料にしていたそうだ、その当時はこの裏の世界の住人では無い表の世界のワシは旅行中に起きた稀な次元的な事故の様な物で表の世界からこのパラレルワールド的な裏の世界に来てしまっており、偶々その女王が封印されている大樹の公園で休憩していた所を誘拐担当の今の嫁に発見されラッキーと思われ、落ちてる金を拾う様に近付いて来た嫁にそのまま信用させられた後に頃合いを見て生贄肥料にされたそうじゃ……『は~』ハッキリ言って今思い出しても酷い話しじゃ!
(※色々とワシの経緯を勝手に調べた島長の話だと表の世界のワシは元から居た裏の世界のワシと出会ってしまい目を合わした時に同化し(そう言う物らしい……)後に原因は不明だが奇跡的に分裂する事ができ、片割れは表の世界に帰って行ったそうだが実際の所は一回混ざってしまったので区分が無くなりどっちがどっちだがは本人のワシも記憶が混ざってしまったのか? 記憶自体が曖昧な所もあり訳が解らなくなってしまっている、自覚としてはワシは表の世界の方だったと思う多分……)

唯、イケメンだった(自称)ワシは嫁の目に留まり特別の計らいで女王が復活し島国である祖国を帝国の支配から解放するべく起きた最終決戦にあたる帝国との第二次戦争が終結し、島の社会が落ち着いてきた後に(のちに)秘術で復活させられ、嫁と結婚させられ、今に至る感じジャ、多分……。島長が嘘を言っていなければの話しじゃがな。

ついでにいい機会なのでワシは一つだけに気になってる事を島長に聞いた、

「女王様の生命維持、復活には何故? 表の世界の住人のソウルエネルギーが必要だったのですか?裏の住人ではダメだったですか、そこが不満で気がかりですワシは……」

「ふむ、それはな詳しくは解らんが安倍ノ太郎の予防的な仕掛けだろうな、裏の住人ではどうも上手くいかなかった、手こずってる間も大樹はどんどん育つ即ち女王様が危ないと言う事だ。ヤケクソで表の世界の人間で試したら何故か木の成長が急激に遅くなったそれを我らは生贄が女王様の身代わりになってると判断したそれでも緩やかには成長していたがな、それだけのことじゃ許せ。そんな訳で取り敢えず時間稼ぎには成功し、その後も色々古い文献を調べ手探りで何とか封印を解き救出に成功した……と言いたいどこだか実際の所は大樹に生贄のソウルエネルギーを吸うだけ吸わして呪術の核である大樹に呪術が完了したと勘違いさせて呪術を解いたと言う所が事の端末だ……多大な犠牲を出してな」

「あの木を切って仕舞えば良かったんでわ?」

「アレは初代の王が植えた木でな島の守り神的な神木でもあった、姑息な安倍ノ太郎の考えそうな事じゃ、第一呪いが解けないうちに木を切り倒したら何が起きるか解らんのも切れなかった理由だ。まぁ最後はヤケになって切るっと思うがそこは抜かりない太郎の事じゃ、我らがそうするのは見越して何かを仕掛けてはあった可能性は高い……」

「その陰陽師の失敗は表の世界の存在を知らなかったって事ですかのう?」

「そう言い事に成るな……太郎の書き残した物を研究の為に集めれるだけ集めて読んだか太郎も薄々は気づいていた様だがやはり最終的にはパラレルワールドは唯の妄想と位置付けをし信じてはいないような感じは文面からは受けたな、それが基本現実主義的な文明国、帝国に生まれた太郎の限界で敗因の核だろうな……彼奴も所詮は失敗する人間って事だったのだ。奴も我らと同じ様な不死に慣れる技術もあったのに自分の呪術は我らには何十年かかっても解けないと信じて不死にならずに安心して死んでしまったしな」

「……」

「今は盟友だか、当時、奴ら帝国は侵略者だ、最後は我らの正義が勝ったと言う事だ」

「……」

※ちなみ女王は先祖伝来の王族特別の不死身の術をかけられていた為、刃物などで物理的に殺す事は不可能に近く。敵の呪術しも大地の力を借りてあの様な封印を施すしかなかったらしい、その王族専用の不死術は現在は永久的に封印されてるらしい、詳しい事は島長からは教えてもらえなかった。



帰りに島町から繁華街で知り合いのかすみさんが小料理屋をやってると聞いたので寄り、久しぶりに彼女の元気そうな姿を見、そこで島長が今回の祝いにフグ懐石を奢ってくれた。
その後、
島長は小島の研究所に戻るためモーターボートに片足を突っ込んだ状態で別れ際に、
「これでお前さんも俺や嫁さんと同じ名字に成れたな」
「はい、これでワシも貴方の息子ですワイ」
「息子って歳かいな、デカくて老けた息子だ」とニヤリとした
ワシもニヤリと返した……
そして夜、家に戻り嫁の顔を見た時にワシは溜め息をついた……【終】34へ

=後書き=
大変そうな解りずらい所の説明をしてみました、この物語りも書き始めた当時は此処まで話しが拡大するとは思わず正直、細かい所は後で説明というか、付け足しというか、そんな感じてダラダラ来てしまい、少し時間に余裕ができたので言い訳臭く作者自信の為にもこの章を書きました。
後、気づいたら、女王を一回も登場させてなかった事に最近気づき今回は謁見とい形で少しではありましたが物語に顔出しできたので良かったと思います。
……この物語に今現在どれだけの方が付いて来てくれてるかは解りませんがまぁそこの辺は余り深く考えず……ではまた会いましょう。2023・1・30 

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