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08 円空の乱・何も変わっていなかったノ巻
しおりを挟む「やっぱり一馬は私がいないと駄目ねー、勝ってたらこっそりと帰ろう思ってだけど、見てられなかったわ」
「……」
僕は現状的に反論出来なかった。
「麻美、このサーベルは?」
「島長が貸してくれたの、折られないでね」
と言う麻美は、背中に長い日本刀を引っ下げていた。
そして猿の姿が見当たらない事に僕は気づく。
「麻美、気をつけて」
「逃げたんじゃ無い」
「シツコイからまだきっと近くにいるよ」
* * *
塞国・大翼ノ間・司令室
女王の横に座る参謀のノーム・ノウスは呟く。
「対峙している青年は、まあ雑魚、ただ援護に来た女性兵士は将の器、猿……円空閣下には荷が重いかと」
「……」
「死にます、使い捨てじゃないのなら、ここらで引かせた方が良いかと」
女王は自分の前に自慢の宝を並べ誇らしくしている円空を思い出す……
……そして決断する。
まず女王は女性兵士よりも、円空の瞳を通して見える灰色のサーベルにとてつもなく異様な闇を感じ眉を歪める、そして直感に従い左腕の人差し指を米神に当てて呟く。
《聞こえますか?、円空》
《へっ女王様?、どこですか?》
《遠くから見ていました》
《それは、どうも》
《円空》
《はい》
《一旦そのまま逃げなさい》
《尻尾切られただけです》
《流れが良くない方に変わったようです、だから、お逃げなさい!》
《…………》
《いいから、戻って来なさい!》
《逃げる? 戻る? はて? 俺がこの島の王なんだが》
《言う事を聞いて!》
《…………》
《円空!》
* * *
「ああ、いるぜ」
猿が僕を六時、麻美を三時の位置とし中央の間に降り立つ、尻尾は羽織ってるマントの一部を破りそれで止血手当をしていた。
「やってくれたな、そのスケは、いい女だ……お前ふざけるなよ、嫁いてさらに愛人とか……もう本当死んでくれよ」
「僕は死なない!」
僕は借りたサーベルを構える。
* * *
女王は円空の意思を完全に操ろうとするも、その嫌なサーベルに視線を感じるとすぐに瞳に牙を刺し込まれた様な鋭い痛み感じ、「あっあー!」と声を上げる。
ノウスも両目を手で押さえ「あっおーーこっこれは!」と声を上げもがく、そして室の照明がイキナリ落ち暗くなり、少しして補助電源が入り室は赤色に染まる。
そこからノウスと女王も円空との通信が何者かに遮断された様に取れなくなってしまう……。
* * *
「獣の感がビシビシ感じるぜ、そのサーベルは唯一無に半端無い妖魔剣だ、お前が持つには過ぎる、王である俺がもらってやる、嫁とスケ諸共な!」
「先生だけは渡さない! 絶対に!」
僕がそう言った時、ドーンと爆発音が鳴り、猿の腹から血が吹き出す。
僕は、その想定外の事に唖然とする。
さらに続けて爆音が鳴る、その二発目でそれが銃声だと言う事に僕は気づき、反射的に麻美に視線を移すと、麻美がバレルの長いピストルを構えていた、その足元に薬莢が転がっていた。
猿は撃たれた腹を抑えながらうめく様に呟く。
「イテーなんで女が、あんな銃を……」
僕は気づく、尻尾を切った後の猿の毛質が変わっている事に。
僕も片手で拳銃を抜き、素早く猿に一発放つ。
「グっ!」
血だらけでどこに当たったかはわからないが予想通り銃が効いた。
「力抜ける……」
そう呟くと猿はその場にうずくまる。
麻美が僕に叫ぶ。
「先生だけは渡さないって、それってさー、私は猿にあげても良いって事なの?」
「いや、そう言う事では」
「頭に来て撃っちゃたじゃない」
「……」
「ほら、さっさと猿の首を落としなさいよ」
「……」
「なに! してんの!?」
麻美が僕を急かす。
「……この猿は誰かに利用されただけだよ」
「だからなに!その猿は一馬を殺そうとしたのよ、もう同じ土俵に立ったのよ、情けはいらないわ」
「でも……」
僕には正直無理だった。
麻美が背の太刀を肩にソリをかけながらスラリと抜く。
「え、麻美がやるの?」
「ええ、間抜けの代わりにね、いつまでも高校生やってんじゃないわよ!」
猿が話し始める。
「そのスケ本当に良いな……俺の負けのようだ……でもな、俺の仇はきっと女王様が取ってくれる、精々つかの間の平和を楽しんでいやが……れ……クソやろ……が……」
「麻美!、もう死んでる首はいいよ」
麻美は僕を無視し太刀を振り下ろす、そして猿の首ギリギリの位置で刃を止める。
「そうね」
* * *
塞国・女王の間
『円空君、やられたかい』
と呟き女王は窓際に立つ、当然地下王国に見上げる空は無い事を知るながらも、苦笑い浮かべ、花瓶の薔薇を一本抜き、頭上に掲げ、床に落とす、それを三回繰り返し花瓶に戻す。
「なんで言う事聞いてくれなかったの?」
「利用されているって気づいてたから?」
「そんなのお互い様じゃない……じゃない……」
そこ迄自問自答し女王は気づく、円空を自分と同等の王に任命した事を、そして口を抑える。
* * *
マントに包んであげた猿の遺体と王冠とサーベルなどの遺品は島長が来て引き取ってくれた。
その時に知り得た事は全て島長に話し、僕は借りたサーベルを島長に渡す。
島長はサーベルを受け取ると、一言僕に言う。
「まあ、お前さんには、まだ早いかな、何ともあれご苦労さん」
「……」
そう言われた僕の後ろから麻美が僕の左肩に手を置いてくれる、僕は空を見上げ思う……
『何も変わっていなかったんだ……僕だけは……』
幕
数日後の夜、沖で一艘の小さい木舟が燃え、やがて淡い夢と共に底に沈んでいったのだった……
[円空の乱・完]
解説
※麻美のマグナムピストル
それは麻美が務めていた拳銃工場から退職の際にこっそりと拝借し島に持ち帰ったピストル。
限界迄改造されたその威力は、象をも倒す。
※沙羅曼蛇由羅目義(そらまだゆらめき)
それは麻美が島長から皆伝の証に授かた長太刀、現代刀ながら火の中を蛇がウネル様に浮かび上がった刃紋は優美華麗であり、中々の業物。
※尻尾
それも持つものは、それを切られるとショック状態になり、一時的にあらゆる力を失う事がある。
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