狼少年シークエル 

仙 岳美

文字の大きさ
12 / 14

10 箱舟ノ巻

しおりを挟む
箱舟ノ巻

 島長である志摩長は与えらている呪の双子真珠の指輪の力を開放し、メガタの女王の間に移る。
その間に無機質な玉座が有り。
やがて薄らと女王の輪郭が浮かび。
そして完全に現れる。
「我、不詳を極め、此処に御指示を受けたく候」
そう言うと志摩長は両手に横に乗せた猿刀を差し出す。
女王は鋭い刺さる様な視線感じ。
《そ、それは!》

そう女王がやや裏返った声で叫ぶとその場に(隙あり)と意味不明な声が聞こえ、志摩長も女王も、あっけに取られた時、猿刀は意思がある様に女王へ向け飛んでゆく。
女王は素早く背からキラリと光るサイズ(柄の長い両手持ちの鎌)を回し出し猿刀を受ける、しかし猿刀は弾けずなおも鍔迫り合いの様に女王の鎌と青い火花を次々と散らす。
女王の鎌からもクランク状の紫色の火花次々と散る。
「身を隠せぬ……」
メガタ女王は何か魂が型にハメられロックされている感じに落ち入るその最中。

聞いた事の無いやや高い声質の子供っぽい女性と思われる狂声が室内に木霊す。
「嗚呼ぁぁっ! 押し切られ!っっッ……」
女王がうめき呟く。
志摩長は「曲者!(くせもの) 故に御免!」と立ち上がり猿刀に飛び、その柄を両手で握り引っ張り、女王から引き剥がしにかかる。
「ぬっおおおお」
志摩長は声をあげ唸り、自分以外に猿刀の柄を握る、それは爪が長く尖る両手首が空間から飛び出ているのを眼にする。
その片方の手には金の腕輪も見える。
志摩長は思う。
『刺客は生き霊か!?』

 女王は志摩長の加勢で少しゆとりが生まれ、片方の手の人差し指と中指を伸ばし唇に当てて呪文を唱える始めると猿刀へ向け床と左右の壁からクリスタルらしき突起物が飛び出てて伸び始め、猿刀を挟む形に成り、猿刀の表面が凍り始める。

そして諦めたのか猿刀はフッとその場から消え失せてしまう。

「重ね重ね不覚を取りました、誠に申し訳ございませんぬ」
息を切らせるながら志摩長はその場に土下座をし再び自分の老いをヒシヒシと感じる。

《よいよい其方は半身取り憑かれ此処に来てしまったのです、それにしても今度の刺客は生粋で素晴らしい、そして恐ろしや》
そう呟くとすぐに女王は命を下す。
《大樹を切り舟を造りなさい》
「大樹、島のあの大欅をですか」
「そうです」
「場は?」
《メガタ城内です》
「何故?」
《万が一に備えます、様は逃げる時です》
「逃げる?」
《そうです、私には私が創り出し、生んだ者たちを守る義務があります》
「それは島民達の事でしょうか?」
《そうです》
「は、はっはー!」

 その深夜、大樹の前に立ち志摩長は思い出す。猿刀が消えた時に視線を感じ天井を見上げると舞う様に一瞬空間が歪んだひし形に開いた闇間に、自分を細笑む大きく鋭い赤い目とそれを取り巻く複数の光る目を垣間見、相手が複数の得体の知れない組織である事を知り老いた身を冷やした事を。
しかしすぐに『好きにさせるかよ』
と思い返し決心し、腰の無名ながらも使い込んだ太刀を弧に一振りし頭上にかかる大樹の端枝を切り落とし、その頬に飛んだ樹液をひと舐めしふつふつと侠客の魂を取り戻した志摩長だった。

[続]


解説


 それは、様々な使い道がある、仕舞う、煮る、隠す、埋める、発酵させる、その裏側の中は一つの世界でもある。

サイズ
 その鎌は柄も装着された湾曲した刀身も共に長く、両手で広い範囲の草や穀物を刈るのに役立つ。収穫それは始まりと終わりの行事でもある。


十六字点・星相遠隔暗殺システム(はちじてん・せいそうえんかくあんさつシステム)
 それはサイの武器と立体的な八芒星の魂相を持つものが合わさる事で可能に成った遠隔暗殺技術。

絶月零・冷霊晶凍結粉砕殺(ぜけいぜろ・れいれいしょうとうけつふんさいさつ)
 月に残る衝突隕石の中に稀に混入する未知の永久凍結石・ザードクールリアの力を借り、対象物の原子核迄凍らせ砕く術。

無名刀
 それは個性などの癖が無く、誰の手にも馴染み、時には化ける物でもある。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...