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犬とアリス
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曇る空の下、十八歳になったアリスは昔によく姉とピクニックに来た丘を訪れました。と言っても持ってきた食べ物は、昨日、お店の棚の隅にぽつんと売れ残っていたのを目にし、可哀想に感じ、手に取った、小さい傷物の青リンゴと、それにコンビーフを挟んだだけのサンドイッチ、後はスキットルに入れたダージリン紅茶ウイスキーだけです。だけですが、それだけで十分でした。何故なら姉は外国にお嫁に行ってしまい、もういないからです。ただ不思議と姉がいなくなってから頭が痛くなる事もなくなってしまいました。どうやら姉はストレスだった様です! ただ、代わりにもう懐中時計を持つ三月ウサギなどの不思議な生き物を見る事もない様に感じ寂しくも思っていました。
今のアリスに見えるのは、漠然としつつも現実的に感じる不安感と曇り空、それに年々積まれてゆく白いブロック屏の様に、その規模を、拡大してゆく、遠くに見える霊園。
後は、その霊園の上に乗ってるかの様な地平線だけです。
おまけに三日前にボーイフレンドにも見捨てられました。アリスはひとりです。
その孤独なアリスは、サンドウィッチを平らげると、ケッケケと誰を笑っているのか、ただ笑い。
「どうせ曇ってるお空なんだからもっと曇らしてやるわ」と思い、アリスはボーイフレンドが部屋の窓際に忘れ置いて行ったタバコをポケットから取り出しました。そのタバコの箱にはロバの様なラクダの様な絵が描かれていて、銘柄はキャメルだがキャラメルなのか、よくわからない、崩しスペルでした。アリスはそのばった物のタバコを一服する事にしました。
アリスが今年の夏にボーイフレンドから習った事は、そのタバコとセックスだけでした。
そのうちポツポツと雨が降って来ました。
『さては、腹黒いお空は私の火を消すきね、負けないわ』と思い、用意していた折り畳みの蝙蝠傘を開きました。
『雨の丘を見ながらの一服も中々おつね』とアリスは思いました。
やがて雨は上がると、今度は目の前にどこからか、一匹の小さい野良犬があらわれました。でも子犬ではない様です。どうやら小型な狩猟犬の血が混ざった雑種の様です。
大人のアリスに、もう動物と話す不思議な能力は残っていません。
でもその犬がお腹を空かせている気は、したので、アリスはデザートに残していた傷物リンゴを使い慣れたフルーツナイフでクルクルと皮を剥き、傷んでいる所は穿くり除き。
その犬に『ほら』とほってあげました。
犬は尻尾を振り喜んでそのリンゴにカブり付きました。
でもその犬はリンゴを食べ終わっても帰ろうとしません。
アリスはリュックの中を開いて、その中身を犬に見せ、「もう何にもないからお帰り」と言ってもその犬は帰りません。
それは『遊んでくれ』と言ってる様に感じました。
「リンゴをもらって、さらに遊んでくれって……あなたずいぶん贅沢ね、人に宿題やらせて、オムライスを作らせて、それを食べ終わったら、〆にセックスさせろって言ってる男の子と同じ様なものよ」
と言いながらも、ひとりピクニックなのに、何故かフリスビーを持って来ていたアリスは、「ほら、拾いなさい」
とフリスビーを投げると犬は喜んで拾いに走り、咥えて持って来てくれました。
しばらくその犬とそんな感じで遊んであげました。
そのうち太陽は赤く、雲の隙間からアリスと犬を睨みつける様な目になりました。
アリスはその太陽を「ただの嫉妬よ、あーやだ」と気にせずにいると、やがてその太陽は諦めたかの様に沈み、少しすると、アリスと犬の周辺を取り囲む様に寒く暗い闇と霧が広がってゆきました。
アリスは懐から銀の懐中時計を取り出しその蓋の表面中央に装飾としてはめ込まれたアメジストを見て、ニヤッとしパッカッと開くと、もう時刻は夜の七時を回っていました。なのでアリスは犬に「さようなら」と言い、家に向かって歩いていると、犬が後を着いて来てる事に気づきました。
「護衛はいらないわ、あなたもお帰り、しっしっしっ」
アリスが手払いしながら、そう言うと、犬は、悲しい目をし「クゥーン」残念そうに感じる声をあげました。
アリスは困り。
「……じゃあコレあなたにあげるは」
とアリスはフリスビーを思いっきり遠くに飛ばし投げ、犬がフリスビーを取りに行ってる間に、アリスはダッシュし犬を引き離す事に成功しました。
と思ったら、家の前にその犬が先に待っていました。
「さてはあなた朝から私に着いて来ていたのね、人間なら、ただのストーカーよ……でも負けたわ」
と、アリスは家族に相談してあげて、その犬を飼う事にし、次からのピクニックには連れて行くようになりました。それは不思議でも幻でも無く、とても現実な幸せな日々でした。でも相変わらずに不思議な世界はまだ続いている様でした。それは、不思議とそれからのピクニックの日の空は青々と澄み渡る様になった事です。
丘を唐草の模様の風が走ります。
思春期も終わりに近づいたアリスは新しい仲間とその風の中を今日も歩み進みます。最近感じる様になった、けしてその姿を見せる事のない不思議な壁だらけなこの世界を、嘲笑うかの様にして……
[END]
24.6.30筆
今のアリスに見えるのは、漠然としつつも現実的に感じる不安感と曇り空、それに年々積まれてゆく白いブロック屏の様に、その規模を、拡大してゆく、遠くに見える霊園。
後は、その霊園の上に乗ってるかの様な地平線だけです。
おまけに三日前にボーイフレンドにも見捨てられました。アリスはひとりです。
その孤独なアリスは、サンドウィッチを平らげると、ケッケケと誰を笑っているのか、ただ笑い。
「どうせ曇ってるお空なんだからもっと曇らしてやるわ」と思い、アリスはボーイフレンドが部屋の窓際に忘れ置いて行ったタバコをポケットから取り出しました。そのタバコの箱にはロバの様なラクダの様な絵が描かれていて、銘柄はキャメルだがキャラメルなのか、よくわからない、崩しスペルでした。アリスはそのばった物のタバコを一服する事にしました。
アリスが今年の夏にボーイフレンドから習った事は、そのタバコとセックスだけでした。
そのうちポツポツと雨が降って来ました。
『さては、腹黒いお空は私の火を消すきね、負けないわ』と思い、用意していた折り畳みの蝙蝠傘を開きました。
『雨の丘を見ながらの一服も中々おつね』とアリスは思いました。
やがて雨は上がると、今度は目の前にどこからか、一匹の小さい野良犬があらわれました。でも子犬ではない様です。どうやら小型な狩猟犬の血が混ざった雑種の様です。
大人のアリスに、もう動物と話す不思議な能力は残っていません。
でもその犬がお腹を空かせている気は、したので、アリスはデザートに残していた傷物リンゴを使い慣れたフルーツナイフでクルクルと皮を剥き、傷んでいる所は穿くり除き。
その犬に『ほら』とほってあげました。
犬は尻尾を振り喜んでそのリンゴにカブり付きました。
でもその犬はリンゴを食べ終わっても帰ろうとしません。
アリスはリュックの中を開いて、その中身を犬に見せ、「もう何にもないからお帰り」と言ってもその犬は帰りません。
それは『遊んでくれ』と言ってる様に感じました。
「リンゴをもらって、さらに遊んでくれって……あなたずいぶん贅沢ね、人に宿題やらせて、オムライスを作らせて、それを食べ終わったら、〆にセックスさせろって言ってる男の子と同じ様なものよ」
と言いながらも、ひとりピクニックなのに、何故かフリスビーを持って来ていたアリスは、「ほら、拾いなさい」
とフリスビーを投げると犬は喜んで拾いに走り、咥えて持って来てくれました。
しばらくその犬とそんな感じで遊んであげました。
そのうち太陽は赤く、雲の隙間からアリスと犬を睨みつける様な目になりました。
アリスはその太陽を「ただの嫉妬よ、あーやだ」と気にせずにいると、やがてその太陽は諦めたかの様に沈み、少しすると、アリスと犬の周辺を取り囲む様に寒く暗い闇と霧が広がってゆきました。
アリスは懐から銀の懐中時計を取り出しその蓋の表面中央に装飾としてはめ込まれたアメジストを見て、ニヤッとしパッカッと開くと、もう時刻は夜の七時を回っていました。なのでアリスは犬に「さようなら」と言い、家に向かって歩いていると、犬が後を着いて来てる事に気づきました。
「護衛はいらないわ、あなたもお帰り、しっしっしっ」
アリスが手払いしながら、そう言うと、犬は、悲しい目をし「クゥーン」残念そうに感じる声をあげました。
アリスは困り。
「……じゃあコレあなたにあげるは」
とアリスはフリスビーを思いっきり遠くに飛ばし投げ、犬がフリスビーを取りに行ってる間に、アリスはダッシュし犬を引き離す事に成功しました。
と思ったら、家の前にその犬が先に待っていました。
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と、アリスは家族に相談してあげて、その犬を飼う事にし、次からのピクニックには連れて行くようになりました。それは不思議でも幻でも無く、とても現実な幸せな日々でした。でも相変わらずに不思議な世界はまだ続いている様でした。それは、不思議とそれからのピクニックの日の空は青々と澄み渡る様になった事です。
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24.6.30筆
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