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三章 消えた精霊王の加護
34話 援軍は絶望感的らしい
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ハロルドの実父イアソンがザンザス達と仮拠点に来たのはオーク討伐作戦に関しての話し合いをしに来たのだという。
外でそのまま話をしているわけにもいかず、4人は仮拠点へ入って行った。
「「おかえりなさーい!」」
仮拠点の食堂に行くとリコリスとルティリスがザンザスとアビリオに抱きついた。
「オークが出たって聞いて怖かっただろ?安全になるまでオレは町にいるからな!」
「ちゃんと良い子にしていたみたいだね。偉いよ2人とも」
2人はそれぞれ猫耳姉妹を褒めながら頭を撫でていた。
「あのねエイリがたくさんおはなししてくれたの!」
「あとねスオンさんがおいしいごはんつくってくれたの!」
と他にも色々猫耳姉妹は2人が不在の間にあったことを話していた。
猫耳姉妹とこの2人は血の繋がりはないがこの4人を見ていてエイリは『スティリア』に来て実父ルエンと再会し家族としての時間を取り戻すことが出来たことに喜びを感じる一方では日本にいる義理の両親とは世間帯だけの繋がりしかなかったので血縁がなくとも『家族』としての繋がりを得られた4人を少しばかり羨ましく思った。
「あの時の赤ん坊が大きくなったなぁ…」
イアソンは赤ん坊だった頃の猫耳姉妹を知っているようでこのやり取りを見ながらしみじみと言った。
「「このおじちゃんだれ?」」
それに対し初対面に等しい猫耳姉妹はイアソンに気付くとまだ20代後半のイアソンに残酷な言葉を放つのだった…。
ーリコ達くらいの年齢なら20歳過ぎた男は皆おじさんなんだろうなぁ…。
とエイリは内心思った。
「僕は少し休んでるね…」
徹夜で町の周辺を見回りをしオークと遭遇した時は先陣を切って氷を纏わせた刀技で討伐をしていた為疲労困憊のアビリオは仮拠点に戻るとすぐ睡眠を取る為に自室へ向かう。
一晩働きづめだったアビリオに後で甘いものを作ってあげようとエイリは考えた。
イアソンは数ヶ月振りに息子のハロルドに会いたがっていたが生憎カインと2人揃って夜に町を見回っていたので疲れて眠っているのでそのまま寝かせておき食堂でオーク討伐の話し合いをすることになった。
食堂に来てルエンは診療所で朝食を食べず仮拠点に戻ってきたということで今朝の朝食メさニューの竜鳥のつみれ汁と麦飯だけでは少し寂しいと思いエイリがさっと作った厚焼き玉子を用意して出すとイアソンがつみれ汁に興味を持ったので彼にもつみれ汁を出した。
「城の食堂で出されるスープより美味い!!」
竜鳥のつみれ汁を食べたイアソンは驚きの声をあげた。
リィンデルア城の騎士達が利用している食堂の料理長は元貴族の屋敷で料理人をしていた者で料理の腕は良いのだがこのつみれ汁の方が美味いと言った。
「うちのギルドで美味いのはこれだけじゃないんだぜ。エイリ、パンは残ってるか?」
ザンザスは自慢するかのようイアソンに言う。
「発酵させている『試作品』の生地を焼けばあります…」
『試作品』とはライ麦、全粒粉、オーツ麦、大麦などの雑穀パンでお馴染みの穀物を混ぜた天然酵母パンを麦屋にレシピを提供する目的で配合などを試作しているパンだ。
使用する天然酵母の材料も草食体質の者が食べる場合に備えてヨーグルトから干しぶどうで作った酵母液に切り替えている。
この試作の雑穀パンを最近は毎日のように焼いている。
朝にスオンと一緒に生地を作り、フライパンに敷き詰めあとは焼くだけの状態にまで発酵させていた雑穀入りのパン生地をエイリでは焼いている途中ひっくり返すことが出来ないのでスオンにお願いして焼いてもらう。
パンを焼いている時もイアソンはその様子を興味深く見学していた。
「雑穀が入っていてもこんなに柔らかくて美味いパンを食えるなんて羨ましい…。うちの隊の連中、逃げずにここまで来た奴らにも食わしてやりたいよ…」
パンが完成しイアソンに出すと雑穀入りでも城の食堂よりも美味いパンに感激した彼がふともらした。
ここでイアソンが引き連れて来た騎士の何人かが逃亡しているということをエイリは知った。
「え、逃げたひとがいるんですか…?」
「オークの討伐は新人には厳しいからなぁ」
イアソンが率いる新人騎士で編成された隊にいる貴族出身の騎士はオーク討伐に向かうことを告げると全員逃亡し、残った騎士は皆魔物によって故郷や家族を奪われた悲しみを知る者達でハラスの住民にも同じ苦しみを味わって欲しくないとオークに殺されるかもしれない恐怖を抱きながらオーク討伐に来たのだという。
「ほかの、ほかの騎士団からの援軍はないのですか…?」
イアソンもこの少人数でオークに挑むのは厳しいと分かっていた。
なるべく自隊から犠牲を出さない為に本国や領主が所有している騎士団や冒険者、近くいる隊にイアソンは援軍を求めてはいたのだが…。
「…奴隷を受け入れた国だからといって全ての者が元奴隷に平等という訳ではないということだ」
ルエンが静かに言った。
リィンデルアは隣国ハーセリアから逃げて来た奴隷を受け入れ発展してきた国だ。
だからといってこの国の全ての者が奴隷出身者に良い感情を持っているわけではないのだとルエンが説明した。
中には元奴隷だった者の方が商売が上手く長年この国でしていた家業を畳まざるえなくなり奴隷出身者を逆恨みする者がいれば税さえ納めてくれれば良いからもう勝手にしろ、その代わりこっちをアテにするなという領主もいるらしい。
ハラスの領主はそのような人間ではないが、領主が住んでいる街にも少々問題が発生しており街の自警団と冒険者を援軍に送ることが出来ない状態なのだという。
だがもっと最悪だったのがイアソンの隊同様にこの付近で リィンデルア国第二王子が団長を務めるリィンデルア国騎士団第二部隊だ。
この国の第二王子は本当に現国王の息たてな子なのかと疑いたくなるほど人種に偏見意識を持ち自分勝手な性格でハラスの市長が救援要請を送ったところ要請を無視し王都に帰ってしまったのだ。
ルエンもはじめは場合によってはエイリの安全のためにリィンデルア国王に保護してもらう予定でいたらしいが訳あって現在王位継承者第一位の第二王子が『愛し子』の有無に関係なくハーセリアの第一王子のような男が将来王位に就くようではエイリをリィンデルア国王引き渡す訳にはいかなくなったと言っていた。
ー王族や騎士だから命を張って当たり前だとは思っているわけでは無いけど…酷い…。
種族や身分関係なくその国で暮らしている以上もはや自国の民ではないのか?民が困っているというのに自分にできる範囲のこともせず逃げ出して罪悪感を感じたりしないのだろうか?そんな男が王になって良いはずがないと、エイリは静かに怒っていた。
エイリはハーセリアと違い純粋なヤヌワのルエンとヤヌワ寄りの自分を受け入れ仮拠点に引きこもっていた時も気にかけてくれた者達がいるハラスが大好きだ。
エイリは『愛し子』の娘だと事情を知る者達から言われているが所詮は幼児、出来ることが大幅に限られてしまう。
それでも今この町や来てくれた騎士達に自分が出来ることは何だろうとエイリは考える。
一つだけエイリが誇れる、ある意味では魔法とも呼べる特技を活用できないかとこの場にいる事情を知る大人達にエイリは提案した。
幼児のエイリが今使える唯一の魔法、それは料理である。
外でそのまま話をしているわけにもいかず、4人は仮拠点へ入って行った。
「「おかえりなさーい!」」
仮拠点の食堂に行くとリコリスとルティリスがザンザスとアビリオに抱きついた。
「オークが出たって聞いて怖かっただろ?安全になるまでオレは町にいるからな!」
「ちゃんと良い子にしていたみたいだね。偉いよ2人とも」
2人はそれぞれ猫耳姉妹を褒めながら頭を撫でていた。
「あのねエイリがたくさんおはなししてくれたの!」
「あとねスオンさんがおいしいごはんつくってくれたの!」
と他にも色々猫耳姉妹は2人が不在の間にあったことを話していた。
猫耳姉妹とこの2人は血の繋がりはないがこの4人を見ていてエイリは『スティリア』に来て実父ルエンと再会し家族としての時間を取り戻すことが出来たことに喜びを感じる一方では日本にいる義理の両親とは世間帯だけの繋がりしかなかったので血縁がなくとも『家族』としての繋がりを得られた4人を少しばかり羨ましく思った。
「あの時の赤ん坊が大きくなったなぁ…」
イアソンは赤ん坊だった頃の猫耳姉妹を知っているようでこのやり取りを見ながらしみじみと言った。
「「このおじちゃんだれ?」」
それに対し初対面に等しい猫耳姉妹はイアソンに気付くとまだ20代後半のイアソンに残酷な言葉を放つのだった…。
ーリコ達くらいの年齢なら20歳過ぎた男は皆おじさんなんだろうなぁ…。
とエイリは内心思った。
「僕は少し休んでるね…」
徹夜で町の周辺を見回りをしオークと遭遇した時は先陣を切って氷を纏わせた刀技で討伐をしていた為疲労困憊のアビリオは仮拠点に戻るとすぐ睡眠を取る為に自室へ向かう。
一晩働きづめだったアビリオに後で甘いものを作ってあげようとエイリは考えた。
イアソンは数ヶ月振りに息子のハロルドに会いたがっていたが生憎カインと2人揃って夜に町を見回っていたので疲れて眠っているのでそのまま寝かせておき食堂でオーク討伐の話し合いをすることになった。
食堂に来てルエンは診療所で朝食を食べず仮拠点に戻ってきたということで今朝の朝食メさニューの竜鳥のつみれ汁と麦飯だけでは少し寂しいと思いエイリがさっと作った厚焼き玉子を用意して出すとイアソンがつみれ汁に興味を持ったので彼にもつみれ汁を出した。
「城の食堂で出されるスープより美味い!!」
竜鳥のつみれ汁を食べたイアソンは驚きの声をあげた。
リィンデルア城の騎士達が利用している食堂の料理長は元貴族の屋敷で料理人をしていた者で料理の腕は良いのだがこのつみれ汁の方が美味いと言った。
「うちのギルドで美味いのはこれだけじゃないんだぜ。エイリ、パンは残ってるか?」
ザンザスは自慢するかのようイアソンに言う。
「発酵させている『試作品』の生地を焼けばあります…」
『試作品』とはライ麦、全粒粉、オーツ麦、大麦などの雑穀パンでお馴染みの穀物を混ぜた天然酵母パンを麦屋にレシピを提供する目的で配合などを試作しているパンだ。
使用する天然酵母の材料も草食体質の者が食べる場合に備えてヨーグルトから干しぶどうで作った酵母液に切り替えている。
この試作の雑穀パンを最近は毎日のように焼いている。
朝にスオンと一緒に生地を作り、フライパンに敷き詰めあとは焼くだけの状態にまで発酵させていた雑穀入りのパン生地をエイリでは焼いている途中ひっくり返すことが出来ないのでスオンにお願いして焼いてもらう。
パンを焼いている時もイアソンはその様子を興味深く見学していた。
「雑穀が入っていてもこんなに柔らかくて美味いパンを食えるなんて羨ましい…。うちの隊の連中、逃げずにここまで来た奴らにも食わしてやりたいよ…」
パンが完成しイアソンに出すと雑穀入りでも城の食堂よりも美味いパンに感激した彼がふともらした。
ここでイアソンが引き連れて来た騎士の何人かが逃亡しているということをエイリは知った。
「え、逃げたひとがいるんですか…?」
「オークの討伐は新人には厳しいからなぁ」
イアソンが率いる新人騎士で編成された隊にいる貴族出身の騎士はオーク討伐に向かうことを告げると全員逃亡し、残った騎士は皆魔物によって故郷や家族を奪われた悲しみを知る者達でハラスの住民にも同じ苦しみを味わって欲しくないとオークに殺されるかもしれない恐怖を抱きながらオーク討伐に来たのだという。
「ほかの、ほかの騎士団からの援軍はないのですか…?」
イアソンもこの少人数でオークに挑むのは厳しいと分かっていた。
なるべく自隊から犠牲を出さない為に本国や領主が所有している騎士団や冒険者、近くいる隊にイアソンは援軍を求めてはいたのだが…。
「…奴隷を受け入れた国だからといって全ての者が元奴隷に平等という訳ではないということだ」
ルエンが静かに言った。
リィンデルアは隣国ハーセリアから逃げて来た奴隷を受け入れ発展してきた国だ。
だからといってこの国の全ての者が奴隷出身者に良い感情を持っているわけではないのだとルエンが説明した。
中には元奴隷だった者の方が商売が上手く長年この国でしていた家業を畳まざるえなくなり奴隷出身者を逆恨みする者がいれば税さえ納めてくれれば良いからもう勝手にしろ、その代わりこっちをアテにするなという領主もいるらしい。
ハラスの領主はそのような人間ではないが、領主が住んでいる街にも少々問題が発生しており街の自警団と冒険者を援軍に送ることが出来ない状態なのだという。
だがもっと最悪だったのがイアソンの隊同様にこの付近で リィンデルア国第二王子が団長を務めるリィンデルア国騎士団第二部隊だ。
この国の第二王子は本当に現国王の息たてな子なのかと疑いたくなるほど人種に偏見意識を持ち自分勝手な性格でハラスの市長が救援要請を送ったところ要請を無視し王都に帰ってしまったのだ。
ルエンもはじめは場合によってはエイリの安全のためにリィンデルア国王に保護してもらう予定でいたらしいが訳あって現在王位継承者第一位の第二王子が『愛し子』の有無に関係なくハーセリアの第一王子のような男が将来王位に就くようではエイリをリィンデルア国王引き渡す訳にはいかなくなったと言っていた。
ー王族や騎士だから命を張って当たり前だとは思っているわけでは無いけど…酷い…。
種族や身分関係なくその国で暮らしている以上もはや自国の民ではないのか?民が困っているというのに自分にできる範囲のこともせず逃げ出して罪悪感を感じたりしないのだろうか?そんな男が王になって良いはずがないと、エイリは静かに怒っていた。
エイリはハーセリアと違い純粋なヤヌワのルエンとヤヌワ寄りの自分を受け入れ仮拠点に引きこもっていた時も気にかけてくれた者達がいるハラスが大好きだ。
エイリは『愛し子』の娘だと事情を知る者達から言われているが所詮は幼児、出来ることが大幅に限られてしまう。
それでも今この町や来てくれた騎士達に自分が出来ることは何だろうとエイリは考える。
一つだけエイリが誇れる、ある意味では魔法とも呼べる特技を活用できないかとこの場にいる事情を知る大人達にエイリは提案した。
幼児のエイリが今使える唯一の魔法、それは料理である。
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